呼吸器・乳腺の医学テーマ
呼吸器・乳腺の医師国家試験 頻出テーマを63項目、中分類ごとに整理しました。気になるテーマから要点と出題実績を確認できます。
呼吸器総論
- 胸部・気道の解剖概念
胸腔は左右の肺に挟まれた縦隔(前・中・後に区分)を含み、気管は正中をやや右側へ下行して左右の主気管支に分岐する。胸部画像読影や気管支鏡の基礎となる解剖。
- 呼吸の生理概念
呼吸の生理を司る基礎で、横隔膜が最大の吸気筋として収縮し胸腔を広げ、II型肺胞上皮が産生する肺サーファクタントが表面張力を下げて肺胞の虚脱を防ぐ。
- 呼吸器の症候症候
呼吸器の症候とは、咳嗽・喀痰・呼吸困難・胸痛など呼吸器疾患に伴って現れる臨床徴候の総称であり、喀血・咳嗽・喘鳴・チアノーゼなどが代表的である。
- 呼吸機能検査検査
肺気量分画やフローボリューム曲線を用いて肺の換気機能を評価する検査。TLC・RV・VCなどの指標から拘束性・閉塞性障害を判定し、進行COPDでは残気量(RV)が増加する。
- 胸部 X 線検査
呼吸器・循環器疾患のスクリーニングに用いる基本的画像検査。正面像では気管が左右の主気管支に分かれる気管分岐部などを陰影として同定でき、簡便で低侵襲な点が利点。
- 気管支鏡・肺生検検査
気道の直接観察・生検・吸引に用いる内視鏡検査で、診断と治療の双方に使われる。検査時はリドカイン局所麻酔やSpO2モニタを準備し、生検後出血時は留置のまま止血を図る。
- 呼吸不全(I/II型・急性・慢性・HOT)概念
呼吸不全はPaO2が60Torr未満の状態で、PaCO2上昇の有無によりI型(45以下)とII型(45超)に分類される。II型の増悪やCO2ナルコーシスではNPPVを考慮する。
- 禁煙指導制度・法規
ニコチン依存症に対する治療。TDS5点以上・Brinkman指数200以上等で保険適用となる。
感染性疾患
- かぜ症候群・上気道炎疾患
鼻・咽頭・喉頭のウイルス感染による急性炎症で、ライノウイルスが最多の原因。透明鼻汁・咽頭痛・微熱を呈して家族内感染が多く、治療は対症療法が中心となる。
- 肺炎(市中・院内・起因菌別)概念
肺炎は肺実質に病原体が感染して生じる炎症性疾患であり、原因により細菌性・ウイルス性・非定型に分類され、発症した環境によっても病型が分かれる。
- 肺炎球菌肺炎疾患
市中肺炎の最多原因菌である肺炎球菌による細菌性肺炎。発熱・咳嗽を呈し、喀痰Gram染色でランセット型のGram陽性双球菌を認め、ペニシリン系が第一選択となる。
- マイコプラズマ肺炎疾患
Mycoplasma pneumoniaeによる非定型肺炎。菌は細胞壁を持たずGram染色で染まらないため、βラクタム系は無効でマクロライドやテトラサイクリンを用いる。
- レジオネラ肺炎疾患
Legionella属による細胞内寄生菌感染症で、汚染水系からの吸入で発症する非定型肺炎。高熱に意識障害などの中枢神経症状を伴い、マクロライドやキノロンが有効。
- 誤嚥性肺炎・嚥下障害(嚥下機能評価)疾患
誤嚥性肺炎は食物や口腔内分泌物が気道に流入して生じる肺炎で、脳血管障害の既往や嚥下機能の低下した認知症患者に多く、医療介護関連肺炎 (NHCAP) の代表的病型である。
- インフルエンザ疾患
インフルエンザウイルスによる急性呼吸器感染症で、主に飛沫感染で伝播する。高齢者で重症化しやすく、発症48時間以内のオセルタミビルなど抗ウイルス薬が有効。
- サイトメガロウイルス肺炎疾患
免疫抑制状態で発症する日和見性の間質性肺炎。核内封入体(フクロウの目)、治療はガンシクロビル。
- オウム病疾患
感染鳥類から伝播するクラミジアによる非定型肺炎。発熱と乾性咳嗽を呈し感冒薬で改善せず、βラクタムは無効でテトラサイクリン系やマクロライドが奏効する。
- Q熱疾患
Coxiella属の細菌による人獣共通感染症(細菌性)で、感染動物との接触で感染する。ネコやウサギの胎盤で菌が増殖し、産褥期のこれらの動物との接触が感染リスクとなる。
- 肺クリプトコッカス症疾患
肺クリプトコッカス症は、鳩の糞などに含まれる真菌 Cryptococcus(クリプトコッカス属)の吸入で生じる肺真菌症で、宿主内因性ではなく環境からの外因性感染である。
- 肺アスペルギルス症(侵襲性・ABPA)疾患
肺アスペルギルス症は Aspergillus 属真菌による肺感染症の総称であり、侵襲性・慢性・アレルギー性などの病型に分かれる。
- 肺結核疾患
肺結核は結核菌 (Mycobacterium tuberculosis) の吸入による空気感染で生じる慢性の肺感染症で、感染症法上は 2 類感染症に分類され国の結核対策の中核に位置づけられる。
- 非結核性抗酸菌症疾患
非結核性抗酸菌症(NTM)は結核菌以外の抗酸菌(MACなど)による感染症で、土壌や水系などの自然環境に存在する菌によって生じる。
- 肺膿瘍疾患
肺実質の壊死で空洞(ニボー)を形成する化膿性疾患。発熱+腫瘤影で肺癌との鑑別を要する。
閉塞性肺疾患
免疫・アレルギー性疾患
- 気管支喘息疾患
気管支喘息は気道の慢性炎症と可逆性の気流制限を特徴とする I 型アレルギー機序の閉塞性肺疾患で、夜間から明け方の咳嗽・呼吸困難・wheezes と末梢血好酸球増加・IgE 上昇を典型像とする。
- 過敏性肺(臓)炎(HP)疾患
過敏性肺 (臓) 炎 (HP)は環境抗原の反復吸入で生じるIII 型および IV 型アレルギー反応による間質性肺炎で、抗原回避で改善する。
- サルコイドーシス疾患
サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を全身臓器に形成する原因不明の肉芽腫性疾患で、肺・眼・心・皮膚・神経などを侵し、細胞性免疫の低下によりツベルクリン反応の陰転化を伴う。
- 急性好酸球性肺炎疾患
喫煙開始を契機に若年者へ急性発症する好酸球性肺疾患。両側びまん性すりガラス陰影と BAL 好酸球増加を呈し、副腎皮質ステロイドが著効する。
- 慢性好酸球性肺炎疾患
末梢血の好酸球増多を伴い肺に好酸球が浸潤して陰影をきたす原因不明の疾患。気管支喘息の合併が多く、ステロイドが著効するが再発しやすい。
- 肺胞蛋白症疾患
肺胞内にサーファクタント由来の蛋白様物質が蓄積しガス交換が障害される疾患。抗GM-CSF自己抗体が原因で、BALが米のとぎ汁様を呈し、全肺洗浄で治療する。
- Goodpasture 症候群疾患
抗GBM抗体が肺と腎の基底膜を傷害するII型アレルギー疾患。肺胞出血と急速進行性糸球体腎炎を呈する。
間質性肺疾患
物理・化学的原因による肺障害
肺循環障害
機能的呼吸障害
肺・気管支の形態異常
肺腫瘍
縦隔・胸膜・胸壁疾患
- 気胸疾患
気胸は胸腔の中に空気が漏出して肺が虚脱する病態で、自然気胸 (原発性または続発性)・外傷性・医原性に大別され、緊張性気胸では循環の虚脱をきたしうる。
- 胸膜炎疾患
胸膜の炎症で、吸気時に増悪する胸膜性疼痛と胸水貯留を呈する。胸水は蛋白濃度により滲出性と漏出性に大別され、聴診で呼吸音減弱・打診で濁音を認める。
- 急性膿胸疾患
胸腔内に膿性の液体が貯留する病態で、肺炎などの細菌感染に続発して生じる。高熱を呈し、胸腔ドレーンを留置して排膿し呼吸を楽にする。
- 血胸疾患
胸腔内に血液が貯留する病態で、外傷による肋間動脈や肺・大血管の損傷が主因。患側の呼吸音減弱・打診濁音を呈し、止血と循環血液量の補充が治療の本質となる。
- 乳び胸疾患
乳び胸は胸管が損傷され、腸管から吸収された脂肪成分を多く含むリンパ液 (乳び) が胸腔内に貯留した病態で、脂肪のため乳白色を呈する。
- 胸膜中皮腫疾患
胸膜中皮腫は胸膜の中皮細胞から発生する悪性腫瘍で、石綿 (アスベスト) の長期曝露を背景に発症する。
- 縦隔腫瘍疾患
縦隔内に発生する腫瘤性病変の総称で、発生部位により好発組織型が異なる。前縦隔では胸腺腫・胚細胞腫瘍・悪性リンパ腫が代表的で、気道圧排で呼吸困難をきたす。
- 縦隔炎疾患
急性縦隔炎は歯性感染や深頸部膿瘍の下行、食道穿孔などから縦隔に細菌感染が及ぶ重篤な病態。高熱・胸痛とCT上のガス像を呈し、ドレナージによる感染源制御を要する。
- 縦隔気腫疾患
気道や肺胞の破綻で縦隔内に空気が漏れ貯留した状態。咳嗽・外傷・内視鏡後などが契機で、頸部の握雪感(皮下気腫)が特徴。軽症は安静で自然吸収し、縦隔炎(感染・緊急ドレナージ)とは病態・治療が対照的。
- 横隔神経麻痺・胸部手術の合併症疾患
横隔神経の障害により横隔膜の運動障害をきたす病態で、縦隔手術による医原性損傷が代表的。深吸気困難と労作時呼吸困難を呈し、胸部X線で患側横隔膜の挙上を認める。
- 胸郭変形疾患
漏斗胸は胸骨が前方から陥凹する先天性の胸郭変形で、胸壁の中央部が漏斗状にくぼむ。高度例は心肺機能への影響を考慮しNuss法などの手術適応となる。
乳腺疾患
- 乳癌疾患
乳癌は乳腺の上皮組織から発生する悪性腫瘍で、女性の悪性腫瘍として頻度が高く、えくぼ徴候・血性乳頭分泌・腫瘤などを契機に疑われる。
- 乳腺良性腫瘍(線維腺腫・乳管内乳頭腫・乳腺症)疾患
20〜30歳代の若年女性に好発する良性の乳腺腫瘍。表面平滑・弾性硬で可動性良好な無痛性腫瘤を触知し、超音波で境界明瞭・内部均一の腫瘤として描出される。
- 乳腺葉状腫瘍疾患
乳腺葉状腫瘍は急速に増大する巨大な腫瘤を形成しうる腫瘍で、多くは良性だが悪性のこともあり、急速な増大例は手術の適応となる。
- 女性化乳房疾患
男性の乳腺組織が増殖して乳房が腫大する良性の病態。思春期の生理的なものや、肝硬変でエストロゲンが相対的に優位となって生じるものがある。