消化管の医学テーマ
消化管の医師国家試験 頻出テーマを38項目、中分類ごとに整理しました。気になるテーマから要点と出題実績を確認できます。
消化管総論
- 消化管の解剖概念
消化管の解剖では胃が腹腔内臓器、十二指腸の大部分が後腹膜臓器に分類される。造影CT横断像では大動脈・上腸間膜の血管・腎静脈・下大静脈が同定の指標となる。
- 消化管の生理概念
消化吸収は口腔から大腸にかけて消化酵素が栄養素を分解し、消化管粘膜から吸収する一連の過程。回腸末端の切除では胆汁酸を再吸収できず水様性下痢をきたす。
- 消化管内視鏡検査手技
消化管内視鏡は上部(食道・胃・十二指腸)と下部(大腸)で内腔を直接観察し、生検や治療も行う検査。止血のクリップやESDの高周波ナイフなど処置別に器具を使い分ける。
- 消化管出血疾患
消化管出血はTreitz靱帯を境に上部・下部に大別される。吐血・黒色便(タール便)は上部出血を示唆し、血液の腸内消化により尿素窒素(BUN)が上昇するのが特徴。
- 胃瘻・腸瘻疾患
6か月以上の経口摂取困難が予想される例に造設する経管栄養路(PEG)。バンパー型とバルーン型があり、バルーン型は数か月ごとの定期交換を要する。
食道疾患
- 胃食道逆流症(GERD)疾患
GERD(胃食道逆流症)は胃酸の食道逆流で胸やけや食道粘膜障害をきたす疾患。慢性咳嗽・嗄声などの食道外症状も生じ、PPIなど酸分泌抑制薬が有効である。
- 食道裂孔ヘルニア疾患
横隔膜の食道裂孔から胃の一部が胸腔へ脱出する疾患。LESの逆流防止機構が損なわれGERDを合併しやすく、乳児では嘔吐、成人では胸やけ・前胸部痛を呈する。滑脱型と傍食道型がある。
- 好酸球性食道炎(EoE)疾患
食道粘膜への好酸球浸潤を特徴とする慢性食道炎。アトピー素因と関連し、食事中のつかえ感・胸やけを呈するがPPIが無効。内視鏡で縦走溝・輪状収縮輪・白斑を認める。
- 食道癌疾患
食道癌は食道粘膜から発生する悪性腫瘍で、本邦では扁平上皮癌が大半を占め胸部中部食道に好発。嚥下困難を主症状とし、早期は内視鏡的切除(EMR/ESD)が標準。
- 食道アカラシア疾患
食道アカラシアは下部食道括約筋が嚥下時に弛緩せず食道の通過障害をきたす疾患。嚥下困難・逆流を呈し、上部消化管造影で下部食道が鳥のくちばし様に先細る。
- 食道静脈瘤疾患
食道静脈瘤は門脈圧亢進症に伴い食道粘膜下静脈が拡張・怒張した状態で、破裂すると大量吐血で致死的となる。肝硬変患者の吐血で疑い、緊急内視鏡で止血する。
- Mallory-Weiss症候群疾患
Mallory-Weiss症候群は嘔吐など腹圧上昇に伴い食道胃接合部に縦走裂創が生じ吐血をきたす疾患。多くは自然止血するが、出血持続例は内視鏡的クリッピングで止血する。
- 特発性食道破裂疾患
特発性食道破裂(Boerhaave症候群)は嘔吐に伴い食道が全層性に破裂する疾患。突然の胸痛・呼吸困難で発症し、修復とドレナージを行う緊急手術を要する。
胃・十二指腸疾患
- 消化性潰瘍(穿孔含む)疾患
消化性潰瘍は胃酸とペプシンで胃・十二指腸粘膜が傷害される疾患で、H. pylori感染が主因。十二指腸潰瘍は空腹時痛、胃潰瘍は食後痛が特徴で、穿孔・出血を合併する。
- 胃癌(早期・進行)疾患
胃癌は早期癌(粘膜・粘膜下層まで)と進行癌(固有筋層以深、Borrmann分類)に大別される。リンパ行性・血行性・腹膜播種で進展し、Virchow・Krukenberg・Schnitzler転移が特徴。治療は内視鏡切除・手術・化学療法。
- 慢性胃炎・胃良性病変(胃底腺ポリープ・Ménétrier病)疾患
慢性胃炎(萎縮性・A型自己免疫性)と胃の良性病変をまとめる。A型胃炎は悪性貧血を伴い、胃底腺ポリープはPPI長期や非萎縮粘膜に、Ménétrier病は巨大皺襞と蛋白漏出を呈する。
- 胃粘膜下腫瘍(GIST)・カルチノイド疾患
GISTは消化管壁の粘膜下に発生する間葉系腫瘍で、c-kit遺伝子変異を背景に生じる。内視鏡で表面平滑な粘膜下腫瘤として認め、増大例は悪性度を考え手術適応となる。
- 胃切除後症候群(ダンピング症候群ほか)疾患
胃切除後に生じる一連の病態。食後早期の腹部症状・循環器症状をきたす早期ダンピングと、食後2-3時間の低血糖をきたす後期ダンピング、貧血・骨代謝異常・残胃癌などを含む。
- 機能性ディスペプシア疾患
機能性ディスペプシア(FD)は器質的疾患がないのに心窩部痛・早期満腹感・食後膨満感を呈する病態。上部内視鏡で異常を認めず、ストレスを契機に症状が出現する。
小腸疾患・腸閉塞
- イレウス(腸閉塞)疾患
イレウス(腸閉塞)は腸管内容の通過が障害された状態で、機械性と機能性に大別される。排便・排ガス停止・腹部膨満・嘔吐を呈し、腹壁板状硬は腹膜炎を示唆する。
- 上腸間膜動脈閉塞症疾患
上腸間膜動脈閉塞症は心房細動などで生じた血栓がSMAを閉塞し腸管虚血をきたす疾患。突然の激しい腹痛で発症し、造影CTでのSMA造影途絶が診断の決め手となる。
- 上腸間膜動脈症候群疾患
上腸間膜動脈症候群は大動脈とSMAの間で十二指腸水平部が圧迫され通過障害をきたす疾患。食後の悪心・嘔吐を反復し、前屈位で症状が軽減するのが特徴である。
- 消化管軸捻転(胃・S状結腸)疾患
S状結腸軸捻転症はS状結腸が腸間膜を軸に回転し腸閉塞をきたす疾患。腹部X線でコーヒー豆徴候を認め、初期治療は内視鏡的整復術が第一の選択肢となる。
- 短腸症候群疾患
大量の小腸切除後に吸収面積が著減し、下痢・脱水・栄養障害を生じる病態。術後は長期の絶飲食を避け、できるだけ早期に経腸栄養を開始する。
大腸・肛門疾患
- 潰瘍性大腸炎疾患
直腸から連続するびまん性の大腸粘膜炎症。若年者の粘血便で疑いCrohn病と鑑別し、注腸造影で鉛管状像を呈し、原発性硬化性胆管炎(PSC)を高率に合併する。
- Crohn病疾患
Crohn病は消化管の全層性・非連続性(とびとび)の慢性炎症性疾患。口腔から肛門まで病変が及び、内視鏡で敷石像・縦走潰瘍を認め、腸狭窄や瘻孔を合併する。
- 虚血性大腸炎疾患
虚血性大腸炎は大腸の一過性循環不全により急性発症する腸炎。急激な左下腹部痛と鮮紅色血便で発症し、注腸造影で母指圧痕像を認めるが多くは保存的に軽快する。
- 偽膜性腸炎疾患
偽膜性腸炎は抗菌薬投与後にClostridioides difficileが腸内で異常増殖し毒素を産生して生じる腸炎。水様性下痢を呈し、内視鏡で黄白色の偽膜が多発する。
- 感染性腸炎・食中毒疾患
感染性腸炎は細菌・ウイルス・寄生虫の感染や毒素食品の摂取(食中毒)で発熱・下痢・腹痛・嘔吐をきたす総称。治療は輸液などの対症療法が中心となる。
- 大腸憩室炎・Meckel憩室疾患
大腸憩室炎は憩室内の糞便うっ滞を契機に細菌感染し、憩室壁とその周囲に炎症が生じる疾患。左下腹部痛・発熱を呈し、軽症は抗菌薬で保存的に治療する。
- 急性虫垂炎疾患
虫垂の急性炎症で、心窩部・臍周囲痛から右下腹部痛へ移動する代表的な急性腹症。McBurney点に限局性圧痛を認め、治療は虫垂切除術が基本となる。
- 過敏性腸症候群疾患
過敏性腸症候群(IBS)は器質的疾患がないのに腹痛・便通異常を繰り返す機能性消化管疾患。便秘型は兎糞状便、下痢型は水様便を呈し、器質疾患の除外を要する。
- 便秘症症候
便秘症は排便回数の減少や排便困難を主訴とする状態で、兎糞状便や残便感を伴う。機能性便秘では浸透圧性下剤(酸化マグネシウム)が第一選択となる。
- 大腸ポリポーシス・腺腫 (FAP/Peutz-Jeghers/腺腫/ポリープ)疾患
大腸ポリポーシス・腺腫の総称で、腺腫は径が大きいものほど癌化リスクが高い。FAPやPeutz-Jeghers症候群などの遺伝性疾患を含み、ポリープは内視鏡的切除が基本。
- 大腸癌疾患
大腸癌は大腸粘膜から発生する腺癌が大部分を占める悪性腫瘍。便潜血や排便異常を契機に発見され、進行例はリンパ節・肝に転移するが5年生存率は約80%と比較的良好。
- 肛門・直腸良性疾患 (痔核/裂肛/痔瘻/膿瘍)疾患
内痔核は歯状線の口側(直腸側)に生じる痔核で、肛門側の外痔核と区別される。3・7・11時方向に好発し、結紮切除術(Milligan-Morgan法)が基本術式。