肝胆膵の医学テーマ
肝胆膵の医師国家試験 頻出テーマを30項目、中分類ごとに整理しました。気になるテーマから要点と出題実績を確認できます。
肝・胆・膵総論
肝疾患
- 急性ウイルス性肝炎(A型・E型)疾患
E型肝炎ウイルス(HEV)による急性肝炎で、猪・鹿・豚の獣肉生食による経口感染が主体の人獣共通感染症。対症療法が中心で、通常は慢性化しない。
- B型肝炎疾患
B型肝炎ウイルス(HBV)感染による肝炎で、急性・慢性・無症候性キャリアと多様な病態を示す。分娩時の母子感染が主で、児への予防処置により経腟分娩が可能。
- C型肝炎疾患
HCV感染による肝炎で、血液感染が主体で慢性化しやすく肝硬変・肝細胞癌へ進展する。HCV-RNA陽性で現感染が確定し、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が第一選択。
- アルコール性肝障害疾患
長期多量飲酒による肝障害で、γ-GT高値・AST優位(AST/ALT>1)・脂肪肝を呈する。禁酒で可逆だが飲酒継続で肝硬変へ進展する。
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)疾患
飲酒歴がないか軽度で肝への脂肪沈着を主体とする疾患群で、インスリン抵抗性を背景とする。超音波で高輝度肝を認め、生活習慣改善が治療の基本で、NASHは肝硬変へ進展する。
- 自己免疫性肝炎疾患
自己免疫機序により肝細胞障害を呈する慢性肝疾患で中年女性に多い。血清IgG高値・抗核抗体陽性を示し、副腎皮質ステロイドが著効する。
- 原発性胆汁性胆管炎(PBC)疾患
肝内小胆管の慢性非化膿性破壊性胆管炎により胆汁うっ滞を生じる自己免疫性肝疾患。皮膚掻痒が初発症状で、ALP・γ-GT高値の胆汁うっ滞パターンを示すが肝内胆管拡張は認めない。
- 薬剤性肝障害疾患
医薬品の摂取を契機に肝細胞障害や胆汁うっ滞をきたす肝障害の総称。サプリメントや健康食品も原因となり問診が重要で、好酸球増多はアレルギー機序を示唆する。
- Gilbert症候群疾患
血清の間接型ビリルビンが優位に上昇する体質性の黄疸。若年男性に多く健診で偶然指摘され、肝逸脱酵素は正常で予後良好なため治療を要さない。
- 肝硬変疾患
肝硬変は慢性肝疾患の終末像で、肝の線維化と再生結節の形成により合成能・解毒能・代謝能が低下し、門脈圧亢進と肝予備能低下に基づく腹水・食道胃静脈瘤・肝性脳症・肝細胞癌を呈する。
- 肝の良性腫瘍(血管腫・囊胞)疾患
肝内に生じる良性の血管性腫瘍で肝良性腫瘍の最多。多くは無症状で、ダイナミックCTで辺縁から結節状に濃染し遅延相で全体が均一に造影され、典型例は経過観察。
- 肝細胞癌疾患
肝細胞から発生する原発性肝癌で、C型肝炎や肝硬変を背景に多く発症する。腫瘍マーカーAFPが上昇し、自然破裂すると腹腔内出血による出血性ショックをきたす。
- 転移性肝癌疾患
他臓器の悪性腫瘍が肝に転移した二次性腫瘍。原発巣の組織型を反映する。造影CTでring enhancementを伴う多発腫瘤。大腸癌肝転移は切除で予後良好だが、膵癌肝転移は切除適応に乏しい。
- 肝膿瘍疾患
肝実質内に膿が貯留する感染性病変で、細菌性(化膿性)とアメーバ性に大別される。弛張熱と右季肋部叩打痛を呈し、造影CTの二重リング濃染が典型で、抗菌薬と穿刺ドレナージで治療する。
- 急性肝不全(劇症肝炎)疾患
8週以内に PT 40% 以下となる急性肝不全。昏睡型と急性型/亜急性型、トランスアミナーゼの低下を改善と読まない、人工肝補助と肝移植。
胆道系疾患
- 胆石症(胆嚢・総胆管結石)疾患
胆嚢や総胆管にコレステロール石・色素石を生じる疾患。食後の右上腹部痛が典型で、無症状例は経過観察、有症状例は腹腔鏡下胆嚢摘出術を行う。
- 急性胆囊炎疾患
胆石の嵌頓や細菌感染により胆嚢に急性炎症を生じる疾患。右季肋部痛とMurphy徴候を呈し、CTで胆嚢壁の腫大と結石を認め、胆嚢摘出術を行う。
- 急性胆管炎疾患
胆管の閉塞(多くは総胆管結石)に細菌感染が加わって生じる緊急疾患。発熱・黄疸・右季肋部痛のCharcot三徴を呈し、進行すると敗血症性ショックに至る。
- 原発性硬化性胆管炎(PSC)疾患
胆管の慢性炎症と線維化により胆汁うっ滞を生じる疾患。経過中に閉塞性黄疸が出現した際は内視鏡的胆道ドレナージの適応となる。
- 胆嚢腫瘍(癌・ポリープ・腺筋腫症)疾患
胆嚢に発生する悪性腫瘍で、進行すると肝床部へ浸潤する。膵胆管合流異常が確立した危険因子で、CEA・CA19-9高値を示し、切除可能例は手術が初回治療となる。
- 胆管癌(肝内・肝門部)疾患
総肝管と左右肝管の合流部に発生する胆管癌(Klatskin腫瘍)。閉塞性黄疸・掻痒・褐色尿を呈し、胆道造影で肝門部の造影が途絶する泣き別れ像が特徴的。
- 十二指腸乳頭部癌疾患
Vater乳頭部に発生する悪性腫瘍で、胆管・膵管の出口を閉塞する。腫瘍の脱落・再閉塞による動揺性黄疸が特徴で、早期に黄疸を呈するため膵癌より予後は良好。
膵疾患
- 急性膵炎疾患
膵酵素の活性化による膵臓の自己消化で生じる急性炎症。心窩部から背部の痛みを呈し血中アミラーゼ・リパーゼが上昇、大量輸液が治療の軸で重症例は致死的となる。
- 慢性膵炎疾患
膵の持続的炎症と線維化で外分泌・内分泌機能が不可逆的に低下する疾患。最多成因はアルコールで、非代償期に脂肪便や糖尿病を呈し、禁酒と膵酵素補充が治療の基本。
- 自己免疫性膵炎疾患
IgG4関連疾患の膵病変で、膵腫大による閉塞性黄疸を呈する慢性膵疾患。病理でIgG4陽性形質細胞浸潤と花筵状線維化を認め、ステロイドが著効する。
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)疾患
膵管内に乳頭状に増殖して粘液を産生する腫瘍で中高年男性に好発。MRCPで主膵管の拡張やブドウの房状の分枝拡張を認め、悪性所見があれば膵切除の適応となる。
- 膵癌疾患
膵管上皮由来の腺癌が大半を占める膵臓の悪性腫瘍。膵頭部に好発し、症状の発現が遅く発見時に進行例が多い。CA19-9高値を示し、5年生存率約20%と最も予後の悪い癌の代表。