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マッチング

研修医マッチングのアルゴリズム|組合せがどう決まるかと、順位を操作しても得しない理由

iwor 編集部11分で読めます
目次

結論から書くと、応募する側が順位の付け方で工夫できることはありません。運営する医師臨床研修マッチング協議会(運営は公益財団法人 医療研修推進財団。以下、協議会)自身が、中間公表の資料に「医師臨床研修マッチングで用いるアルゴリズムは「耐戦略性」を有しています。ご自身の希望どおりの順位で登録することが最良の結果となります。」と書いています。組合せは、学生が希望順に応募し、病院が定員の範囲で「保留」と「拒否」を繰り返す手順で決まるので、順位を偽っても得をしません。だから1位には本当に行きたい病院を書いてかまいません。協議会は同じ資料で、人気プログラムに登録していて不安なときは、順位を入れ替えるのではなく登録数を増やすほうを検討するよう案内しています。2025年度は全国の定員10,527席に対してマッチしたのは8,910人で、1,617席が空いたまま残りました。席の総数が足りないから決まらないのではありません。[7],[1],[6]

組合せは「応募・保留・拒否」の繰り返しで決まる

協議会の説明はこうです。「基本的に、Gale-Shapleyの安定マッチングのアルゴリズムを用い、応募者rが希望順位表に記載したプログラムhとマッチするかどうかを判定します。」。名前だけでは何も分からないので、手順を追います。[1]

経済学者の鎌田雄一郎・小島武仁が内閣府経済社会総合研究所の紀要『経済分析』に書いた論文によると、2003年の制度導入時に使われたのは「受入保留アルゴリズム」で、2009年に都道府県別の定員が設けられたのにともなって、別のアルゴリズムに変更されました。論文は現行方式のほうを「JRMPアルゴリズム」と呼び分けています。中身は、各病院の定員を県の上限に合わせて絞り込んだ「ターゲット定員」に置き換えたうえで、受入保留の手順を回すというものです。つまり病院が保留できる人数は、募集要項に載っている定員そのままとは限りません。[5]

その受入保留の手順を、論文は各ステップについてこう定義しています。「まだ拒否されていない病院の中で「マッチしないこと」よりもいい病院があれば、その中で最も順位の高い病院に応募する。」。以下は、受入保留アルゴリズムの手順全体を編集部が要約したものです。応募を受けた病院は、前のステップまでに仮に確保していた学生と新しく応募してきた学生をまとめて見比べ、定員の範囲で望ましい相手を選んで仮の確保とし、残りを拒否します。拒否された学生は次のステップで、まだ拒否されていない中でいちばん上の病院に応募し直します。誰も新しい応募をしなくなったら、その時点の仮の組合せがそのまま正式な結果になります。[5]

途中で選ばれても「仮」でしかないのが要点です。あとからもっと上位に置いている学生が応募してくれば、先に確保されていた学生が押し出されることがあります。だから病院側から見た採用者は最後まで確定せず、学生側から見ると、上から順に応募して断られ続けた結果がそのまま自分の行き先になります。[5]

協議会は「安定なマッチング」をこう定義しています。「学生と病院とのいずれの組み合わせも(相手がいないよりはいくらかでも良いといえるような)内定者が決まっており、かつ誰もが不満な状況にはないとき、安定なマッチングが成立していると呼ぶことができる。」。ただし、それが常に達成されるとは限りません。先の論文は、都道府県別の定員がある方式(論文が2021年時点の現行方式として扱っているもの)について「JRMPアルゴリズムの結果は弱安定性を満たすとは限らない。」と述べ、結論部でも「JRMPアルゴリズムで生成されるマッチングはもっとも弱い安定性の概念である弱安定性すら満たさない」と書いています。県の上限で定員が絞られるぶん、「行きたかったし、その病院も採りたかった」という組が残りうる、ということです。ただしこれは制度の側の性質で、応募する側が順位の付け方で避けられるものではありません。順位は希望どおりに書く、という結論はここでも変わりません。[1],[5]

学生側は、順位を操作しても得しない

ここが読者にとっていちばん大事なところです。協議会は上記のとおり、希望どおりの順位で登録することを最良としています。耐戦略性というのは、嘘の順位を出しても得にならないという意味です。先の論文も、現行方式について「JRMPアルゴリズムは耐戦略性を満たす。」と書いています。前の節で触れた安定性と、この耐戦略性は別の性質で、保証されないのは前者のほうです。順位の付け方については、協議会と論文の結論が一致しています。[7],[5]

保証されるのは応募する側、つまり参加者(6年生と卒業生)についてです。論文は病院側について、「受入保留アルゴリズム(および JRMP アルゴリズム)のもとでは病院は虚偽のランク付けや定員をメカニズムに報告する動機がありうることが知られている(Roth, 1982)」と書いています。学生側と同じことが病院側にも言えるわけではありません。なお執筆者2人は、大学等に所属する研究者です。[5]

そうすると、よく聞く次の3つはどれも成り立ちません。人気病院を1位に置くと落ちたときに損だから2位に下げる、という考えについては、協議会が名指しで否定しています。「人気のある研修プログラムだからといって、もともと第一希望にしていたプログラムの希望順位を変更して別のプログラムを第一希望にしても、マッチする確率を上げることにはなりません。」。むしろ「第一希望にご自身が本当に希望するプログラム以外を入力した場合は、もともとご自身が第一希望にしていた研修プログラムとマッチできる可能性が下がってしまいます。」とも書かれています。確実に決めたいから行きたくない病院を上位に置く、という考えは、その病院に決まる可能性を自分で上げるだけで、上に置いた病院で決まる可能性は増えません。病院に第1志望だと伝えたからそのとおりに書かなければいけない、ということもありません。協議会が希望どおりの順位で登録することを最良としている以上、口頭で伝えた志望度に合わせて順位を動かす理由はありません。登録の手順や締切はマッチングの希望順位登録にまとめています。[3],[7]

書いていない病院には、絶対にマッチしない

もうひとつ、仕組みの側から確実に言えることがあります。協議会は特徴のひとつとして「4.参加者(研修希望者)と参加病院(研修病院)の希望順位表にない組み合わせは生じない」と書いています。書いていない病院に勝手に配属されることはありませんが、裏を返すと、書かなかった病院は候補から完全に消えます。[2]

順位の順番は結果を変えませんが、順位表に何を載せるかは結果を変えます。ここが実際に動かせるところで、協議会自身がそう案内しています。「マッチする確率を上げるためには、できるだけ多くの病院とコンタクトを取り、ご自身が研修してもよいと思う研修プログラム全てを希望順位表に載せるようにしてください。」。ただし書けば決まるわけではありません。協議会は「選考手続きを受けなければ研修プログラム側の希望順位表には載りませんので、マッチすることが出来ません」と書いています。だから増やせるのは、選考を受けた病院の分だけです。そして数合わせで埋めるのは危険で、書いた以上はそこに決まりえます。増やすなら「第1志望ではないが行ってもよい病院」であって、「行きたくない病院」ではありません。[3],[2]

ここで扱っているのは、マッチングで成立する組合せの話です。マッチングで決まらなかった場合に何も無いわけではなく、協議会は「マッチで研修プログラムが決定しなかった参加者に対して、定員に空きのあるプログラム情報を表示します。」と案内しています。ただし残っている席から選ぶことになるので、順位表に書ける病院を増やしておくほうが先です。[4]

2025年度は1,617席が余った。それでも決まらない人は出る

2025年度の公表データを iwor が集計すると、全国1,026病院・1,470プログラムの募集定員は合計10,527席で、マッチしたのは8,910人、1,617席が空いたまま残りました。席の総数だけを見れば足りています。それでも決まらない人が出るのは、希望が都市部と一部の病院に集まり、空席のほうも地域や病院に偏って出るからです。別に公表されている同年度の中間公表の時点では、第1希望の登録が0だったプログラムが311ありました(これは締切前の途中経過で、最終結果ではありません)。[6],[7]

この2つを並べると、アルゴリズムを理解したあとにやることが決まります。順番を練るのではなく、自分が行ってもよいと思える病院を、どれだけ見つけて選考を受けておけるか。空席がどこに出やすいかを知っているかどうかで、順位表に書ける行数が変わります。空きが出やすい病院の探し方はマッチングの穴場病院の見つけ方に、締切前に候補を見直す判断材料はマッチングの中間公表の見方にまとめました。

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順位表に書ける病院は、夏のうちに決まっている。

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よくある質問

1位に人気病院を書くと、落ちたときに不利になりますか

なりません。アルゴリズムの定義から言うと、上の順位で断られたことは下の順位での扱いに影響しません。拒否されたら、まだ拒否されていない中でいちばん上の病院に応募し直すだけです。協議会も、希望どおりの順位で登録することが最良の結果になると書いています。協議会の案内に従うなら、1位は本当に行きたい病院でかまいません。[5],[7]

中間公表で、私が何位に書いたかは病院に分かりますか

途中で公表されるのは、各プログラムを第1希望に登録した人数までです。誰がどの病院を何位に書いたかは、この中間公表には含まれません。そのうえで、仮に志望度が伝わっていたとしても順位を書き換える理由にはなりません。協議会が、希望どおりの順位で登録することを最良としているからです。面接での発言が、順位表の登録内容を拘束するものではありません。公表の中身はマッチングの中間公表の見方にまとめています。[7]

何プログラム書けばいいですか

数の正解は公表されていません。言えるのは、書いていない病院にはマッチしないこと、協議会が不安なときは登録順位数を増やすほうを勧めていること、2025年度は全国で1,617席が空いたまま残ったことの3つです。だから「行ってもよい」と思える病院を選考の段階で増やしておくほど、順位表に書ける行数が増えます。選考手続きを受けていない病院とはマッチしないので、増やす作業は夏のうちにしかできません。逆に、行く気のない病院を数合わせで足すと、そこに決まる可能性を自分で作ることになります。[2],[7],[6]

アルゴリズムを知れば有利になりますか

順位の付け方については有利になりません。仕組みを知って得られるのは、順番を考える時間を候補集めに回してよい、という判断です。協議会は特徴のひとつに「3.コンピュータアルゴリズム(演算方法)は既に理論的に確立されたもので、公開される」を挙げていて、誰が読んでも同じ結論になります。差がつくのは、順位表に何行書けるかのほうです。[2]

まとめ

マッチングは、学生が希望順に応募して病院が保留と拒否を繰り返す方式で決まり、協議会は希望どおりの順位で登録することが最良だと明記しています。希望順位表に書いていない病院にマッチすることもありません。だから順位は行きたい順でよく、考える価値があるのは順番ではなく、そこに何行書けるかです。選考手続きを受けていない病院とはマッチしないので、行数は夏までの動き方で決まります。2025年度は全国の定員10,527席に対して1,617席が空いたまま残りました。席の総数が無いから決まらないわけではありません。

出典

  1. 1.一次資料公益財団法人 医療研修推進財団日本医師臨床研修マッチングプログラムについて jrmp.jp2026-08-05 取得)
  2. 2.一次資料公益財団法人 医療研修推進財団医師臨床研修マッチングの特徴 jrmp2.jp2026-08-05 取得)
  3. 3.一次資料公益財団法人 医療研修推進財団医師臨床研修マッチングに参加する際の注意事項 jrmp2.jp2026-08-05 取得)
  4. 4.一次資料公益財団法人 医療研修推進財団HELP-日本医師臨床研修マッチングプログラム jrmp.jp2026-08-05 取得)
  5. 5.一次資料内閣府経済社会総合研究所鎌田雄一郎・小島武仁「制約付きマッチングの理論の総説と日本における研修医マッチングへの応用」『経済分析』第203号(2021年) esri.cao.go.jp2026-08-05 取得)
  6. 6.一次資料公益財団法人 医療研修推進財団令和7年度 研修プログラム別マッチ結果 jrmp2.jp2026-08-05 取得)
  7. 7.一次資料公益財団法人 医療研修推進財団2025年度 医師臨床研修マッチング 中間公表 jrmp2.jp2026-08-05 取得)

本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制

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