循環器の医学テーマ
循環器の医師国家試験 頻出テーマを58項目、中分類ごとに整理しました。気になるテーマから要点と出題実績を確認できます。
循環器総論
- 心血管の解剖概念
心臓は4つの心腔と4弁から成り、冠動脈が心筋を栄養する。心腔・弁・刺激伝導系の解剖が循環器疾患理解の土台となる。
- 心臓生理学概念
心拍出量は1回拍出量×心拍数で決まる。前負荷・後負荷・心収縮力・心拍数の4要素が循環動態を規定する。
- 血圧測定検査
循環器の基本バイタル評価。家庭血圧と診察室血圧を組み合わせて高血圧を診断し、白衣・仮面高血圧を見分ける。
- 心電図検査
心臓の電気活動を体表から記録する非侵襲的検査。不整脈・虚血・電解質異常など多彩な病態を評価する循環器の基本ツール。
- 異常心音・心雑音症候
心音・心雑音から弁膜症や心機能異常を非侵襲的に評価する身体所見。聴取部位・体位・心周期の時相で機能性か病的かを鑑別する。
- 浮腫症候
組織間隙に過剰な水分が貯留した状態。Starling平衡の破綻が機序で、心・腎・肝・低栄養を鑑別する。
- 胸痛症候
致死的疾患の鑑別が要となる症候。急性冠症候群・大動脈解離・肺塞栓・緊張性気胸を発症様式と随伴所見で見分ける。
- 心不全疾患
心臓のポンプ機能が低下し全身への血液供給が不十分となる症候群。左心(肺うっ血)・右心(体うっ血)、HFrEF/HFpEFで捉える。
- 心臓植込み型デバイス(ペースメーカ・ICD・CRT)手技
徐脈にペースメーカ、致死性不整脈にICD、心不全にCRTを用いる植込み型デバイスの総称。適応の見極めが要となる。
- 大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉手技
AMI に伴う心原性ショックなど不安定な循環に対し、拡張期にバルーンを膨張させて冠血流を増やし収縮期に縮めて後負荷を下げる機械的補助循環。大腿動脈から留置し下肢虚血に注意する。
虚血性心疾患
不整脈
- 洞不全症候群(SSS)疾患
洞結節の機能低下で徐脈・洞停止・洞房ブロックを呈する症候群。失神やAdams-Stokes発作を来し、ペースメーカの適応となる。
- 房室ブロック疾患
心房から心室への伝導が房室結節〜His束で障害される不整脈。完全房室ブロックは房室解離を来し、ペースメーカの適応となる。
- 心房細動 / 心房粗動 (AF/AFL)疾患
最も頻度の高い持続性不整脈。心房内血栓から心原性脳塞栓を来すため、CHADS₂等で評価し抗凝固を行う。
- 発作性上室性頻拍(PSVT)疾患
突然発症する幅の狭いQRSの頻拍。副伝導路や房室結節のリエントリーが機序で、迷走神経刺激やアデノシンで停止する。
- WPW症候群疾患
心房と心室を結ぶ副伝導路(Kent束)による先天的伝導異常。デルタ波を呈し、発作性頻拍や偽性心室頻拍の温床となる。
- QT延長症候群疾患
QT間隔が延長し多形性心室頻拍(TdP)を生じうる不整脈。先天性と薬剤性があり、失神・突然死のリスクとなる。
- Brugada症候群疾患
心臓Naチャネル遺伝子異常による遺伝性不整脈。右側胸部誘導のcoved型ST上昇を呈し、心室細動で若年突然死を来す。
- 心室性不整脈疾患
心室期外収縮から心室頻拍・心室細動へ至る一連の不整脈。心室細動は突然死の主因で、迅速な電気的除細動を要する。
心弁膜症
- 大動脈弁狭窄症 (AS)疾患
大動脈弁の開放制限で左室流出路が狭くなる弁膜症。失神・狭心痛・心不全の三主徴で症候性となる。
- 大動脈弁閉鎖不全症疾患
拡張期に大動脈から左室へ血液が逆流する弁膜症。左室容量負荷で進行性に左室が拡大し、脈圧開大を呈する。
- 僧帽弁狭窄症疾患
僧帽弁口が狭小化する弁膜症。小児期のリウマチ熱が主因で、左房負荷から心房細動・心原性脳塞栓を来す。
- 僧帽弁閉鎖不全症 / 僧帽弁逸脱症 (MR/MVP)疾患
左室収縮期に血液が左房へ逆流する弁膜症。最多原因は僧帽弁逸脱症(MVP)で、急性は乳頭筋断裂で肺水腫、慢性は弁形成術が中心。
- 肺動脈弁狭窄症(PS)疾患
肺動脈弁の狭窄で右室流出路が狭くなる先天性心疾患。右室圧負荷を来すが、右左短絡がなくチアノーゼは呈さない。
- 人工弁置換術(機械弁・生体弁)手技
弁膜症に対する外科治療で、耐久性に優れ抗凝固を要する機械弁と、抗凝固が原則不要だが耐用年数が短い生体弁を、年齢・挙児希望・抗凝固リスクで使い分ける。
心内膜,心筋,心膜疾患
- 感染性心内膜炎疾患
心内膜・心臓弁に疣贅を形成する細菌感染症。弁破壊と全身性塞栓を来し、Duke基準で診断、長期抗菌薬を要する。
- 拡張型心筋症(DCM)疾患
左室の拡大と収縮機能低下を特徴とする心筋疾患。心不全・致死性不整脈・血栓塞栓を来し、特発性・二次性に分類する。
- 肥大型心筋症(HCM)疾患
サルコメア遺伝子異常などで心筋が異常肥大する疾患。左室流出路狭窄を伴い、若年者の突然死の原因となる。
- たこつぼ心筋症疾患
左室心尖部の一過性壁運動異常を特徴とする心筋症。高齢女性が強いストレスを契機に発症し、心筋梗塞に類似するが予後は良好。
- 薬剤性心筋症疾患
抗癌剤(アントラサイクリン等)などの薬剤による心筋障害。投与歴の聴取が診断の出発点で、心機能の経時モニタリングが要となる。
- 急性心筋炎疾患
ウイルス感染などを契機に心筋へ炎症が起こる疾患。心不全や致死性不整脈・房室ブロックを来し、劇症型は補助循環を要する。
- 収縮性心膜炎疾患
心膜の肥厚・硬化で心室の拡張が制限される慢性疾患。右心不全様の体うっ血を呈し、心膜切除術が根治となる。
- 急性心膜炎疾患
心膜の急性炎症。胸痛・心膜摩擦音・広範なST上昇を呈し、多くは自然軽快するが心タンポナーデに注意する。
- 心タンポナーデ疾患
心膜腔への液体貯留で心臓の拡張が妨げられる閉塞性ショック。Beck三徴を呈し、心嚢穿刺で減圧して救命する。
- 心膜嚢腫疾患
心膜近傍に発生する良性の嚢胞性腫瘤で前下縦隔(心横隔膜角)に好発する。前下縦隔腫瘤の鑑別で、嚢胞性かつ造影効果をもたない性状が特徴。無症状で経過することが多い。
- 心臓腫瘍疾患
心臓に生じる腫瘍。原発性では良性の粘液腫が最多だが、頻度は転移性が上回る。塞栓や血流障害を来す。
血圧異常
動脈疾患
- 急性大動脈解離疾患
大動脈中膜に偽腔ができ、血流が壁の中を裂き進む致命的疾患。Stanford A型は緊急手術、B型は降圧療法。
- 大動脈瘤疾患
大動脈が局所的に拡張する病態。腹部(AAA)と胸部(TAA)に分かれ、径が大きいほど破裂リスクが高く致命的となる。
- 閉塞性動脈硬化症(ASO)疾患
動脈硬化を基盤とする下肢動脈の閉塞性疾患。間欠性跛行から重症虚血肢へ進行し、ABI低下で診断する。
- 急性動脈閉塞症(AAO)疾患
四肢の主幹動脈が突然閉塞して急速に虚血が進む病態。最多原因は心房細動による心原性塞栓で、5P(疼痛・蒼白・脈拍消失・知覚異常・運動麻痺)を呈し、血栓回収術・血栓溶解で再開通を急ぐ。
- Buerger病(TAO)疾患
若年男性の四肢末梢動脈に分節性閉塞を生じる血管炎。喫煙が主要因で、禁煙が治療と再燃予防の出発点となる。
- 肺血栓塞栓症(急性・慢性)疾患
下肢深部静脈の血栓が肺動脈を閉塞する疾患。長期臥床後の初回離床で突然発症し、重症例は閉塞性ショックに至る。
- 肺高血圧症疾患
肺動脈圧の持続的上昇で右心負荷・右心不全を来す疾患群。労作時呼吸困難を呈し、原因により5群に分類する。
- 頸動脈狭窄症疾患
頸動脈の動脈硬化性プラークによる狭窄。塞栓源や血流低下から脳虚血を起こし、一過性黒内障やTIAを呈する。
- 大動脈炎症候群疾患
大動脈とその主要分枝に炎症を生じる大型血管炎。若年女性に多く、脈拍消失や血圧の左右差を呈する。