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試験対策

医師国家試験にプール問題はあるか|第120回で直前6回と一字一句同じは0問、ほぼ同じは6問

iwor 編集部9分で読めます
目次

結論から書くと、医師国家試験にプール制——過去に出した問題をためておいて、そこから再び出題する仕組み——は導入されていません。厚生労働省の検討部会は長年その導入を提言してきましたが、平成19年の第101回から問題冊子の持ち帰りが認められたため事実上移行できず、試験委員会が毎年つくる新規問題が今も主体だと報告書に書かれています。実際に第120回の400問を、直前6回にあたる第114回から第119回までの2,400問と、問題文・選択肢の全文で突き合わせました。一字一句同じ問題は1問もありません。ただし最も近い1問は、問題文が1語違うだけで、選択肢は5つとも同じでした。[1],[3]

直前6回と同じ問題は、400問中0問だった

厚生労働省は各回の問題と正答をPDFで公開しています。第114回から第120回までの7回分、2,800問を取り出して、第120回の400問が、それ以前の6回のどれかと同じ文面かどうかを1問ずつ照らしました。同じかどうかは、問題文と選択肢をつなげ、記号と空白を落としたうえで、3文字ずつの並びがどれだけ共通するかで測りました。9割一致なら、文のほとんどが同じで語がいくつか違う状態です。[3],[4]

  • 文面が完全に一致した問題:0問
  • 9割以上が重なった問題:3問
  • 8割以上:5問/7割以上:6問。残る394問は、直前6回のどの問題とも7割に届かない

つまり「過去問がそのまま出る」ことは、直前6回分に関してはありませんでした。ただし0問という数字だけで終わらせると、実態を取り違えます。文面の重なりが大きかった上から3問は、いずれも問題文がほぼそのままでした。第120回F16は第115回F25と、問題文が「労働衛生管理の手法で」「労働衛生管理の手法として」の1語しか違わず、選択肢は5つとも同じ語句・同じ並びです。実質的には同じ問題といえます。第120回E4も第114回C23と問題文が1語違うだけで、選択肢は5つのうち1つ、第114回の「経鼻エアウェイ挿入」が第120回では「経口エアウェイ挿入」に変わっているだけでした。第120回A24は第117回D68と症例の記述がそのままで、選択肢が1つ差し替えられていました。[3],[4],[5],[7]

文面の7割以上が重なる問題は、400問のうち6問でした。割合でいえば1.5%。直前6回の文面をそのまま覚えていたとして、それがそのまま効くのはこの範囲です。[3],[4],[5],[6],[7],[8],[9]

問題文が同じでも、選択肢は作り直されている

逆のパターンもあります。第120回には、過去の回と問題文が句読点まで含めて同じ問題が2つありました。1つは連問で、一致したのは「まず投与すべきなのはどれか。」という設問文だけです。症例は、対になる第48問と共有する前の文に置かれているので、中身は別の問題になります。もう1つ、メタ分析について問う第120回C20は、第118回E2と問題文が完全に一致していますが、並んでいる選択肢は5つとも別のものでした。同じテーマを、別の切り口で問い直しているわけです。[3],[8]

ここから分かるのは、文面をたどっても過去問との関係はつかめない、ということです。文面が一致しても選択肢は別のものになりますし、逆に文面が違っても問われている知識は同じことがあります。戻ってくるのは文面ではなく、テーマのほうです。

「類似問題が20%前後」と「同じ問題がそのまま出る」は、同じことではない

検索すると、過去問の再出題について次のような説明に行き当たります。

医師国試では,前年度までに出題された問題の類似・プール(同一)問題が繰り返し出題されます.毎年,20%前後過去の国試の類似問題が出題され,近年10回に絞っても約12%の問題が類似問題です.[11]

この説明は、同じ記事のなかで実例を挙げています。第118回D24と、その翌年の第119回A41です。どちらも機能性ディスペプシアの治療について問う問題として紹介されています。この2問を、先ほどと同じ物差しで測ってみました。文面の重なりは2割でした。年齢も主訴も経過も違い、選択肢も5つのうち3つが入れ替わっています。共通しているのは問われている知識のほうです。[11],[8],[9]

つまり「類似問題が20%前後」と「同じ問題がそのまま出る」は、別のことを数えています。前者は問われている内容の重なり、後者は文面の重なりです。読者が「プール問題から出るのか」と検索するとき知りたいのは後者のほうで、その答えは、直前6回分についていえば0問ということになります。

プール制が無いのは、問題が公開されているから

なぜ日本の医師国家試験にプール制が無いのか。理由は制度の側にあります。厚生労働省の医師国家試験改善検討部会は、令和2年11月にまとめた報告書で次のように書いています。[1]

事実上プール制への移行は困難となり、試験委員会が毎年作成する新規問題が現在もなお医師国家試験の主体をなしている。[1]

きっかけは情報公開請求です。報告書によれば、平成13年の第95回から問題冊子の回収が行われていましたが、平成17年度の異議申し立てに対する内閣府の審査会の答申を受けて、平成19年の第101回以降は持ち帰りが認められました。問題が受験生の手元に残り、公開されるようになれば、同じ問題をとっておいて再び出すことはできません。報告書は、使って間もない問題をためて活用する体制をつくるには問題の非公開化が欠かせないとしたうえで、部会の結論として、医師国家試験は再度、原則非公開とすることが妥当だと述べています。[1]

ただしこの結論は、報告書から5年以上が経った2026年8月の時点でも実施されていません。第120回の問題と正答は、これまでどおり厚生労働省のサイトで公開されています。何が手に入って何が手に入らないかは医師国家試験の過去問を無料で手に入れるにまとめました。[3]

なお、プール問題という言葉自体は架空のものではありません。医学生が実際にこの言葉に出会うのは、多くの場合は共用試験CBTのほうです。CBTには難易度と識別力が分かっている問題をためておくプールがあり、機構はそれを非公開とせざるを得ないと説明しています。何問あるのかはCBTのプール問題は何問かで整理しました。同じ言葉でも、CBTと医師国家試験では指しているものが違います。[10]

2026年2月から、議論はもう一度動き出している

この話には続きがあります。2026年2月4日、医道審議会医師分科会に医師国家試験等改善検討部会が開かれました。議事録によれば、医師国家試験へのコンピュータ制(CBT)の導入について、問題の作成過程や試験実施の方法、合格基準とあわせて、問題の非公開化やプール化、段階的な導入方法が今後の論点として挙げられています。[2]

進め方として事務局が示したのは、令和8年のうちにワーキンググループを開いて個々の論点を審議し、成案が得られれば次の検討部会で報告書を取りまとめ、令和9年度に医師国家試験出題基準改定部会を開いて出題基準の改定を行う、という流れです。部会長は、今後の方向性について委員の同意が得られたとまとめています。ただしワーキンググループは、非公開としている試験の詳細を扱うため、資料と議事録を含めて非公開の扱いとされました。議論の中身は、まとまるまで外からは追えません。[2]

公表されている進め方では、出題基準の改定は令和9年度に予定されている段階です。それまでに手元の過去問の使い方が変わる予定は示されていません。[2]

過去問は、テーマの一覧として使う

ここまでの数字からは、1問ごとに「この問題は何を問うているか」で整理する読み方ができます。第120回C20と第118回E2のように、同じテーマは選択肢を変えて戻ってくるからです。何年分やるかの目安は医師国家試験の過去問は何年分やるべきかにまとめました。[3],[8]

戻ってくるのは問題ではなく、テーマ。

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よくある質問

過去問がそのまま出ることはありますか

第120回についていえば、直前6回のどれとも文面が完全に一致した問題はありませんでした。ただし第120回F16のように、問題文が1語違うだけで選択肢が5つとも同じという問題はあります。「そのまま出ることを期待して過去問を覚える」のは割に合いませんが、「解いたことがある形に近い問題が数問はある」とは言えます。[3],[5]

本や記事に出てくる「プール問題」は何を指していますか

2つの意味で使われています。共用試験CBTのプール問題を指しているなら、その仕組みは実在します。医師国家試験について書かれている場合は、過去問と似た問題という意味で使われていることが多く、その場合の「似ている」は文面ではなく問われている内容を指しています。どちらの意味で使われているかは、その本や記事が何を数えているかで見分けてください。

医師国家試験の問題は、これからも公開されますか

分かりません。令和2年11月の報告書は原則非公開が妥当だと結論していて、2026年2月の検討部会でも非公開化が論点に挙がっています。一方で、2026年8月の時点では第120回まで公開が続いています。第121回以降の公開について、時期は示されていません。[1],[2],[3]

プール制になると、受験生にとって何が変わりますか

報告書が挙げているのは試験の側の利点で、良質な問題を再利用できること、受験者ごとに違う問題を出すコンピュータ制の前提が整うこと、試行問題を入れられること、回ごとの難易度に左右されない絶対評価ができることの4つです。受験生の側から見ると、問題が非公開になれば、過去問を収録している教材は市販のものも iwor のようなアプリも、これまでのようには作れなくなる可能性があります。ただし現時点では、どの範囲を非公開にするかも含めて検討中です。[1],[2]

何年分の過去問をやればいいですか

この記事で扱った文面の一致は、何年分やるかを決める材料にはなりません。測ったのは直前6回までで、それ以前の回とどれだけ重なるかは数えていないからです。年数の目安と決め方は医師国家試験の過去問は何年分やるべきかにまとめています。

まとめ

医師国家試験にプール制はありません。問題が公開されている以上ためて使い回せないからで、報告書もそう説明しています。第120回の400問を直前6回と照らすと、文面が完全に一致した問題は0問、ほぼ同じといえるのが6問でした。過去問は、覚えた形がそのまま出るものとしてではなく、どのテーマがどう問われるかを知るために使ってください。制度そのものは2026年2月に再び検討が始まっていますが、いま手元にある過去問の使い方が変わる予定は示されていません。[1],[3],[2]

出典

  1. 1.一次資料厚生労働省 医道審議会医師分科会医師国家試験改善検討部会医師国家試験改善検討部会 報告書(令和2年11月・2020年11月12日公表) mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  2. 2.一次資料厚生労働省 医道審議会医師分科会医師国家試験等改善検討部会令和7年度第1回 医道審議会医師分科会医師国家試験等改善検討部会 議事録(2026年2月4日開催) mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  3. 3.一次資料厚生労働省第120回医師国家試験問題および正答について mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  4. 4.一次資料厚生労働省第114回医師国家試験問題および正答について mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  5. 5.一次資料厚生労働省第115回医師国家試験問題および正答について mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  6. 6.一次資料厚生労働省第116回医師国家試験問題および正答について mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  7. 7.一次資料厚生労働省第117回医師国家試験問題および正答について mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  8. 8.一次資料厚生労働省第118回医師国家試験問題および正答について mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  9. 9.一次資料厚生労働省第119回医師国家試験問題および正答について mhlw.go.jp2026-08-09 取得)
  10. 10.一次資料公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)令和5年度からの臨床実習前共用試験の合格判定について(令和5年6月20日) cato.or.jp2026-08-09 取得)
  11. 11.INFORMA by メディックメディア医師国家試験対策:最新国試まで網羅する『回数別』(2025年9月24日) informa.medilink-study.com2026-08-09 取得)

本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制

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