CBTのプール問題は何問?公式には3つの数字があります
目次
医学部CBTのプール問題は、公式資料では3つの別々の数字で語られています。プール全体として蓄積されているのが約28,000題、1回の試験で採点対象になるのが320設問中252設問(医学系)、これを割合で言い換えたのが約80%です。解説記事で見かける「30,000問以上といわれる」や「240問」は、この3つのどれとも一致しません。どの数字が何を指すのかを、共用試験を実施する機構の一次資料から整理します。[1],[2],[3]
プール問題とは何か
共用試験は、全国82の医学部と29の歯学部が参加してつくった機構が実施しています。各大学が作成した試験問題のうち、よい問題を集めてプールしておき、そこから問題のセットを作って各大学に提供する——この「よい試験問題を共に利用する」仕組みが共用試験という名前の由来です。機構はプール問題を「これまでの試験によって問題の特性(困難度と識別力)の判明している」問題と説明しています。[5],[2]
CBTが大学ごとに別々の日程で実施されるのは、カリキュラムの進み方が大学によって違うためです。全国一斉ではない以上、全員が同じ問題を解くわけにはいきません。そこで機構は項目反応理論(Item Response Theory;IRT)というテスト理論を導入しました。問題ごとの難易度と識別力があらかじめ分かっている問題をプールしておけば、受験者が別々の問題セットを解いても能力を同じ物差しで測れる、という考え方です。[3]
この仕組みには副作用があります。難易度と識別力が既知であることが前提なので、プール問題は非公開にせざるを得ません。機構自身が「プール問題は、非公開とせざるを得ませんが、医学の進歩に対応して、専門家により問題の新陳代謝が行われています」と説明しています。つまりプール問題は、原理的に公開されず、しかも中身が入れ替わり続けます。[3]
数字①:プール全体は約28,000題
機構が公表している出題基準には、プール全体の蓄積量が次のように記されています。
CATO では良質な問題約 28,000 題をプール問題としてプールしている。これら問題は採点問題として出題され、IRT 標準スコアの算出に利用されている。[1]
一方で、解説記事では「30,000問以上」という表現をよく見かけます。機構の出題基準に当たると約28,000題なので、公表値と一致しない数字が定着していることになります。[1]
なお、この蓄積は固定ではありません。機構は、正式実施の開始にあたって必要な最少設問数である8,000題を超える設問が採点対象プール問題として蓄積され、その後も新たなプール問題を確保しつつ、これまでのプール問題の総見直し作業を毎年継続的に行っていると説明しています。約28,000題という数字も、その時点での規模を示すものと理解してください。[4]
数字②:1回の試験で採点されるのは252設問
共用試験ガイドブック第24版(令和8年)は、この数を次のように示しています。
320設問中、医学系は252設問、歯学系は約240設問が、これまでの試験によって問題の特性(困難度と識別力)の判明しているプール問題から出題されている採点対象問題です。[2]
続けて、残りの設問は新規に作成された問題であり、全大学の試験終了後に問題の特性を評価して、良質かつ適正な問題のみを次回以降に出題するためのプール問題として蓄積する、と説明されています。[2]
つまり医学系では320設問のうち252設問が採点され、残る68設問は採点されません。採点されない設問は、次年度以降にプールへ入れるかどうかを判定するための問題です。
ここで注意したいのが、解説記事に出てくる「採点対象は240問」という説明です。これは誤植ではなく、以前の資料に載っていた数字です。文部科学省が2021年に公表した「CBTWG最終まとめ参考資料」には、医学系の問題セットとして、合計320問のうち240問が難易度と識別力の明らかな問題、+80問が新規・試行問題(採点対象外)と記載されています。[6]
ただしこの資料は、全国的な学力調査をCBT化するための検討会議が、先行事例として共用試験を紹介したものです。同じページの他の項目には「2018年実績」「問題バンクは27,000題※2018年時点」と注記があり、資料のもとになった機構の図表には2020年6月の日付が入っています。つまり240という数字がいつ時点のものかは、この資料からは確定できません。分かるのは、以前はそう記載されていて、現在のガイドブックは252設問だということです。[6],[2]
なおプール全体の規模も、同じ資料では27,000題(2018年時点)とされており、現行の出題基準の約28,000題と比べると増えています。プールは蓄積され続けている、ということです。[6],[1]
ここで一つ注意が必要です。「240」という数字は、古い情報としてだけでなく、現在も正しい文脈で登場します。第1〜第4ブロックの合計はいまも240問ですし、歯学系の採点対象はガイドブックで約240設問とされています。だから240を見かけたら誤りと決めつけるのではなく、それが「医学系の採点対象数」を指しているかどうかを見てください。医学系の採点対象は252設問です。[2],[3]
数字③:割合でいえば約80%
同じことを割合で述べた資料もあります。機構の合格判定に関する文書には、次のようにあります。
出題される 320 問のうちの約 80%が採点対象問題で、残りの約 20%は、その問題の正答率や問題としての識別力を測定し、良問をプール化しておくための非採点対象試行問題です。[3]
252を320で割ると78.75%なので、この約80%と整合します。(引用中の全角%と半角%の混在は原文のままです。)[3]
数字が3つあるように見えるのは、プール全体の蓄積量(約28,000題)、1回の試験での採点対象数(252設問)、その割合(約80%)という異なる対象を指しているからです。混同されがちですが、互いに矛盾しているわけではありません。
到達基準はIRT標準スコア396
機構は受験者の能力を「IRT標準スコア」で表します。基準集団の成績が平均500、標準偏差100の正規分布になるように計算した値です。そして各大学から委員を集め、Bookmark法という基準設定法で検討した結果、IRT標準スコアで396を到達基準として定めた、と説明されています。受験者にはIRT標準スコア396以上を取ることが求められます。[3]
平均500・標準偏差100という尺度で396というのは、平均からおよそ1標準偏差ぶん下の位置にあたります。上位何%を取る試験ではなく、一定の水準に届いているかを見る試験だということが、この数字から読み取れます。
得点率に換算した合格ラインは、機構の公表資料には見当たりません。IRTは解いた問題の難易度を加味してスコアを出すため、同じ正答数でも解いた問題の質でスコアが変わります。したがって「何%取れば受かる」という換算は、そもそも一意に決まりません。
解説記事に残っている「正答率でおおむね65%」という説明は、機構の公表資料には見当たらず、予備校の解説などに見られるものです。たとえばある予備校の記事では、2022年度までは大学ごとに基準が異なり最低合格基準はIRTスコア359以上(おおよそ正答率65%)だった、と時期を限定して書かれています。全国統一された現在の基準は396なので、65%という数字を今の合格ラインとして受け取らないでください。[8]
なお、機構の到達基準は396ですが、これとは別に大学が独自の要件を課している場合があります。実習参加や進級の可否は在籍大学の規程によるので、そちらも確認してください。
不合格だった場合はどうなりますか
令和5年6月20日付の機構文書によれば、IRT標準スコア396に到達できなかった場合、1回だけ再試験を受ける機会が与えられます。再試験の到達基準も本試験と同じ396です。なお、やむを得ない事情(文書では新型コロナ感染症等が例示されています)で1回目を受験できず追試験を受けた場合は、その成績が不十分でも再試験の機会は与えられないと説明されています。また同じ文書の時点では、CBTとOSCEのどちらかが到達基準に達しなかった場合、受験料は再度、全額を納入する必要があるとされています。受験可否を自己判断せず、体調不良のときはまず在籍大学の担当窓口に連絡してください。実際の手続きと費用も、大学の案内と最新の実施要項で必ず確認してください。[3]
不合格になったときの立て直し方はCBTに落ちたらにまとめています。
320設問の中身:6ブロックの構成
CBTは「医学教育モデル・コア・カリキュラム」にほぼ準拠した320問を、6つのブロックに分けて出題します。令和5年6月20日付の機構文書の記述をもとに構成を整理すると、次のとおりです。[3]
- 第1〜第4ブロック:五選択肢択一形式が各ブロック60問(合計240問)
- 第5ブロック:多選択肢択一形式が40問(基盤・病態で10問、診断で30問)
- 第6ブロック:五選択肢択一形式の4連問が10セット(合計40問)
なおガイドブックでは「7つのブロックで構成されています」と書かれていますが、これは第7ブロックが受験した学生へのアンケートだからです。出題されるのはブロック1〜6の320設問で、矛盾はありません。[2]
領域別の出題割合も公表されています。「医師として求められる基本的な資質・能力」と「社会と医学・医療」を合わせて約10%、「医学一般」が約15%、「人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療」が約35%、「全身に及ぶ生理的変化、病態、診断、治療」が約20%、「診療の基本」が約20%です。合計して100%になります。[3]
この表を読むときの注意点が一つあります。最初の2領域は、公式の表では合算して約10%と示されています。公式の表に誤りがあるわけではありません。ただ、この結合されたセルを分けて、行の名前を「ブロック1」「ブロック2」に置き換えたうえで、それぞれに約10%を割り当てている解説記事があります。そうすると合計は110%になります。領域の区分とブロックの区分は別のものだと理解しておくのが安全です。[8],[3]
疾患の知識にあたる2領域だけで合計55%を占めます。出題割合から見て、ここが得点源になります。第6ブロックの4連問の解き方はCBTの4連問対策で詳しく扱っています。
「採点対象は約8割」から導ける、本番での構え
320設問のうち68設問が採点されないということは、解いている問題の5問に1問は成績に関係しないということです。ただしどの設問が採点対象かは試験中に判別できないので、実際の解き方は「すべて同じように解く」以外にありません。この知識が効くのは解答の取捨選択ではなく、手応えが悪いときの気持ちの持ち方のほうです。見たことのない問題に当たっても、それが採点されない68設問に含まれている可能性は構造上つねに残っています。[2]
手応えの悪い問題を引きずって後続のブロックを崩すのが、最ももったいない失点です。1問ごとの手応えと最終的なスコアは一致しない、と最初から知っておくほうが崩れにくくなります。
もう一つ、プール問題が非公開で新陳代謝もされているという事実からは、対策の方向が決まります。問題そのものを覚えにいく戦略には原理的な上限があります。同じ問題が同じ形で出る保証がない以上、残すべきは問題の記憶ではなく、問題を解くのに使った知識のほうです。[3]
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よくある質問
プール問題は全部で何問ありますか
機構の出題基準には約28,000題と記載されています。ただし新しいプール問題の確保と既存問題の見直しが毎年続いているため、固定の数ではありません。1回の試験で出題される320設問のうち採点対象は252設問(医学系)です。[1],[2]
どの問題がプール問題か試験中に分かりますか
分かりません。採点対象と非採点対象は区別して表示されないため、すべての問題に同じように取り組む以外にありません。68設問が採点されないという知識は、試験中の判断材料ではなく、手応えが悪くても最後まで崩れないための備えとして持っておくものです。
過去問を集めればプール問題を復元できますか
できません。プール問題は非公開とされており、機構も問題の新陳代謝を行っていると説明しています。市販の問題集は共用試験の出題基準と過去の傾向に沿ってつくられた演習教材であり、本番の問題そのものではありません。[3],[1]
医師国家試験にもプール問題はありますか
ありません。医師国家試験は問題と正答が公開されているため、同じ問題をためて再び出す仕組みが成り立たず、毎年つくられる新規問題が主体だと厚生労働省の報告書に書かれています。実際に第120回の400問を直前6回と照らした結果は医師国家試験にプール問題はあるかにまとめました。同じ「プール問題」という言葉でも、CBTと医師国家試験では指しているものが違います。
歯学部のCBTも同じ構成ですか
採点対象数も到達基準も違います。ガイドブックには医学系が252設問、歯学系が約240設問と記載されています。到達基準も別建てで、2026年度の歯学生共用試験CBTはIRT標準スコア481(基準集団は2013年度)とされています。医学系の396とは基準集団が異なるので、数字をそのまま比べることはできません。検索結果に歯学部向けの情報が混ざっていないかを確認してから読んでください。[2],[7]
まとめ
医学部CBTのプール問題をめぐる数字は、プール全体の蓄積量が約28,000題、1回の試験で採点対象となるのが320設問中252設問(医学系)、割合にすると約80%、という3層で公表されています。よく見る「30,000問以上」は公表値と一致せず、「240問」は以前の資料に載っていた医学系の採点対象数です(ただし第1〜第4ブロックの合計240問、歯学系の約240設問という正しい用例もあります)。到達基準は、令和5年6月20日付の機構文書で令和5年度からIRT標準スコア396と定められています。プール問題が非公開かつ新陳代謝される以上、対策として残すべきは問題の記憶ではなく知識そのものになります。制度が動く分野なので、解説記事を読むときは公開年と一次資料を必ず確かめてください。[1],[2],[3]
出典
- 1.一次資料公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「医学生共用試験CBT出題基準-問題作成のための指針-(令和7年度版)」 cato.or.jp(2026-08-02 取得)
- 2.一次資料公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「共用試験ガイドブック 第24版(令和8年)」 cato.or.jp(2026-08-02 取得)
- 3.一次資料公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「令和5年度からの臨床実習前共用試験の合格判定について(令和5年6月20日)」 cato.or.jp(2026-08-02 取得)
- 4.一次資料公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「共用試験ガイドブック 第24版(令和8年)24ページ「プール問題数」」 cato.or.jp(2026-08-02 取得)
- 5.一次資料公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「共用試験の概要」 cato.or.jp(2026-08-02 取得)
- 6.一次資料文部科学省(全国的な学力調査のCBT化検討ワーキンググループ)「CBTWG最終まとめ参考資料(2/3)=「医療系大学間共用試験(CATO)-CBTを中心に-」のページ」 mext.go.jp(2026-08-02 取得)
- 7.一次資料公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「共用試験ガイドブック 第24版(令和8年)「歯学生共用試験CBT 到達基準」」 cato.or.jp(2026-08-02 取得)
- 8.医師国家試験対策予備校メック(MEC)「第38回:CBT試験の出題範囲から対策まで徹底解説」 gomec.co.jp(2026-08-02 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制