内分泌・代謝の医学テーマ
内分泌・代謝の医師国家試験 頻出テーマを57項目、中分類ごとに整理しました。気になるテーマから要点と出題実績を確認できます。
内分泌総論・MEN
- ホルモンの生理(合成・分泌・各種ホルモン)概念
ホルモンは内分泌器官で特定の酵素により合成される。副腎皮質と性腺は共通のステロイド合成酵素群を持ち、コレステロールから糖質・鉱質コルチコイドや性ホルモンが生合成される。
- 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)疾患
MEN1 型 (Wermer 症候群) は、下垂体腺腫・原発性副甲状腺機能亢進症・膵消化管内分泌腫瘍の 3 臓器病変が合併し、副腎皮質腫瘍を伴うこともある常染色体優性 (AD) 遺伝疾患である。
- アミロイドーシス疾患
全身の臓器にアミロイド線維が沈着する疾患群。心臓に沈着すると左室壁の肥厚による拡張障害で心不全をきたし、心筋肥大に反して心電図は低電位を示す乖離が特徴的である。
視床下部・下垂体疾患
- 下垂体腫瘍疾患
下垂体前葉の細胞から発生する良性腫瘍で、ホルモンを分泌する機能性と非機能性に大別される。MRIでトルコ鞍内の腫瘤として描出され、前葉の圧迫で中枢性の内分泌低下をきたす。
- 先端巨大症疾患
GHの過剰分泌により四肢末端・顔貌の肥大と代謝異常をきたす疾患で、多くはGH産生下垂体腺腫が原因。75g OGTTでGHが抑制されず、経蝶形骨洞手術が第一選択となる。
- プロラクチノーマ疾患
下垂体前葉のプロラクチン産生腫瘍で、高プロラクチン血症の主要な原因。乳汁漏出・無月経・不妊を呈し、ドパミン作動薬でプロラクチンを抑え腫瘍の縮小も期待できる。
- 下垂体前葉機能低下症疾患
下垂体前葉ホルモンの分泌低下により多彩な内分泌症状を呈する疾患。低血糖・低Na血症・月経不順などをきたし、末梢ホルモンを補充するが副腎不全回避のため糖質コルチコイドを先行させる。
- 低身長概念
低身長は身長が同年齢・同性別の標準より著しく低い状態を指し、成長ホルモン分泌不全などの内分泌疾患や染色体疾患を含む多様な原因で生じうる。
- 尿崩症疾患
尿崩症はADHの作用の欠如 (= 中枢性) または腎のADH抵抗性 (= 腎性) により水の再吸収が障害され、多尿・多飲を呈する疾患である。
- ADH不適合分泌症候群(SIADH)疾患
SIADHはバソプレシン(ADH)の不適切な分泌により腎集合管での水再吸収が促進され、血液が希釈されて希釈性の低Na血症をきたす病態である。
甲状腺疾患
- 甲状腺の診察検査
甲状腺の診察は、嚥下で頭側へ移動する甲状腺を視診・触診で評価する手技。甲状腺は甲状軟骨の下方、甲状軟骨から輪状軟骨の高さで触知され、腫大や結節の有無を確認する。
- Basedow 病疾患
Basedow 病は TSH 受容体に対する自己抗体 (TRAb) により甲状腺ホルモンの産生が亢進し、甲状腺機能亢進を呈する自己免疫性疾患である。
- 慢性甲状腺炎(橋本病)疾患
慢性甲状腺炎 (= 橋本病) は自己免疫の機序によるびまん性の甲状腺の炎症であり、しばしば甲状腺機能低下症をきたす。
- 甲状腺機能低下症疾患
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの産生・分泌が不足して全身の代謝が低下する病態で、その大半を占める原発性では血中 TSH が高値、FT4 が低値となる。
- 亜急性甲状腺炎疾患
亜急性甲状腺炎はウイルス感染に続発する甲状腺の炎症性疾患で、有痛性の甲状腺腫大を特徴とする。
- 無痛性甲状腺炎疾患
無痛性甲状腺炎はTSH 低値・FT4 高値だがTRAb 陰性の甲状腺中毒症で、一過性の甲状腺機能亢進を呈し自然軽快する。
- 甲状腺腫瘍(乳頭癌・髄様癌・悪性リンパ腫)疾患
甲状腺乳頭癌は甲状腺癌で最も頻度の高い分化型癌。嚥下で上下動する前頸部腫瘤として触れ、頸部超音波が第一選択の検査で、遠隔転移がなければ甲状腺切除術が第一選択となる。
副甲状腺・骨/Ca代謝
- 副甲状腺機能亢進症(原発性・続発性)疾患
原発性副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺の腺腫や過形成により PTH が自律的に過剰分泌され、高 Ca 血症・低 P 血症・骨吸収亢進をきたす疾患である。
- 高カルシウム血症疾患
高カルシウム血症は補正 Ca 値 (= 実測 Ca + (4.0 − アルブミン)) が基準上限を超える病態で、悪性腫瘍による随伴・薬剤性・副甲状腺機能亢進症などが代表的な原因となる。
- 副甲状腺機能低下症(真性・偽性)疾患
PTHの分泌低下により低Ca血症・高P血症をきたす疾患で、甲状腺全摘時の副甲状腺切除が代表的原因。低Caによるテタニーやけいれんを呈し、Caと活性型ビタミンDを補充する。
- 骨粗鬆症疾患
骨量が減少し骨折しやすくなる病態。閉経やステロイドが代表的原因で、椎体圧迫骨折を生じる。
- 骨軟化症・くる病疾患
骨軟化症は骨基質の石灰化障害によりリン・カルシウム代謝異常と骨の脆弱性をきたす疾患で、骨端線閉鎖前の小児に生じたものをくる病とよぶ。
副腎疾患
- Cushing症候群疾患
Cushing 症候群はコルチゾール慢性過剰により高血圧・耐糖能異常・中心性肥満・骨粗鬆症などをきたす疾患群で、ACTH 依存性 (Cushing 病・異所性 ACTH) と非依存性 (副腎腺腫・副腎癌) に分類される。
- 原発性アルドステロン症疾患
原発性アルドステロン症は、副腎からのアルドステロン過剰分泌により高血圧と低 K 血症をきたす疾患である。
- 褐色細胞腫疾患
褐色細胞腫は副腎髄質のクロム親和性細胞からカテコールアミンを過剰に分泌する腫瘍で、一部は副腎外や両側性に発生し悪性のこともある。
- 副腎皮質機能低下症(Addison病・副腎クリーゼ)疾患
副腎皮質の破壊によりコルチゾールとアルドステロンの分泌が低下する原発性の副腎皮質機能低下症。全身倦怠感・低血圧・色素沈着を呈し、副腎皮質ステロイドの補充療法が基本。
- 先天性副腎皮質過形成症疾患
先天性副腎皮質過形成症 (CAH) は副腎皮質ホルモン合成酵素の欠損により糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドの産生が不足し、副腎不全をきたす疾患である。
糖代謝・膵内分泌
- 糖尿病(DM)概念
糖尿病(DM)はインスリン作用の不足により慢性高血糖を呈する代謝性疾患の総称で、1 型・2 型・その他特定の機序による糖尿病・妊娠糖尿病に分類される。
- 糖尿病性急性代謝失調(DKA・HHS)疾患
DKA (糖尿病ケトアシドーシス) は、インスリン作用の不足により高血糖・ケトン体産生亢進・代謝性アシドーシス (アニオンギャップ上昇) を呈する糖尿病の急性合併症である。
- 低血糖疾患
血糖の低下により交感神経症状(振戦・発汗・動悸)や中枢神経症状をきたす病態で、SU薬内服中の欠食が医原性の典型。意識があればブドウ糖の経口、なければ静注で対応する。
- 膵神経内分泌腫瘍(インスリノーマ・ガストリノーマ等)疾患
膵神経内分泌腫瘍 (pNET) は膵島の細胞から発生する神経内分泌系の腫瘍で、インスリン・グルカゴン・ガストリンなどを過剰に産生する機能性型と、ホルモン症状を欠く非機能性型に大別される。
- 糖尿病性足病変疾患
神経障害・末梢動脈疾患・感染が重なって生じる足潰瘍と壊疽。ABI が偽性高値になる罠、probe-to-bone、予防のための患者指導。
脂質・尿酸・肥満・栄養
- 肥満概念
体内に脂肪組織が過剰に蓄積した状態で、肥満度はBMI(体重÷身長の2乗)で評価し、日本ではBMI25以上を肥満と定義する。単純性肥満の治療は生活習慣の改善が基本となる。
- メタボリックシンドローム疾患
内臓脂肪の蓄積を基盤として高血圧・高血糖・脂質異常などの代謝異常が集積した状態。善玉ホルモンのアディポネクチンが低下し、動脈硬化性疾患のリスクが高まる。
- 脂質異常症(高脂血症)疾患
脂質異常症は LDL コレステロール高値・HDL コレステロール低値・トリグリセリド高値のいずれかを呈する脂質代謝の異常である。
- 高尿酸血症・痛風疾患
痛風は高尿酸血症を基盤として関節内に析出した尿酸ナトリウム結晶が引き起こす炎症性の関節炎であり、急性発作を反復するのが特徴である。
- ビタミン(分類・機能・欠乏症)概念
ビタミン欠乏症はビタミンや微量元素の摂取不足・吸収障害で生じる多彩な症候群の総称で、各ビタミン・元素ごとに特徴的な欠乏症候を呈する。
水・電解質・酸塩基
- 低ナトリウム血症疾患
血清Na濃度が135mEq/L未満に低下した病態。脳細胞への水の移動で脳浮腫をきたし、重症では意識障害・けいれんを呈し、急性症候性例は高張食塩液で慎重に補正する。
- 高カリウム血症疾患
高カリウム血症は血清 K 値の上昇により致死性不整脈 (心室細動・徐脈性不整脈) を引き起こしうる電解質異常で、K 7.0 mEq/L 以上はパニック値として迅速な対応を要する。
- 低カリウム血症疾患
血清K値の低下により筋力低下・不整脈・多尿などを呈する電解質異常。利尿薬や甘草(偽性アルドステロン症)が原因となり、心電図でU波の出現やST低下を認める。
- 低カルシウム血症疾患
血清Ca低下によりテタニー・けいれんを生じる病態。新生児や低アルブミン血症で補正Caに注意。
- マグネシウム代謝異常(高Mg・低Mg)疾患
血清Mgの異常高値により心の伝導障害や筋力低下をきたす電解質異常。腎機能低下例での酸化マグネシウム(下剤)の長期服用が代表的原因で、徐脈・低血圧を呈する。
- 酸塩基平衡障害(乳酸アシドーシス・AG)概念
酸塩基平衡障害は1次性変化(原因)と2次性変化(代償)の組み合わせで評価する。AG開大型は乳酸・ケトン体などの増加でHCO3⁻が低下し、DKAや乳酸アシドーシスが代表となる。
先天代謝異常
- 代謝経路概念
代謝経路はエネルギーの産生や生体物質の合成・分解に関わる一連の化学反応がつながった反応系。絶食時には脂肪分解が亢進してアセチルCoAが増え、血中ケトン体が増加する。
- Marfan症候群疾患
FBN1(フィブリリン-1)異常による常染色体優性の結合組織病。高身長・クモ状指・大動脈基部拡張を呈する。
- 糖原病Ⅰ型疾患
グルコース-6-ホスファターゼの欠損により小児期に発症する糖原病(von Gierke病)。低身長と肝腫大を呈し、空腹時低血糖・高尿酸・高TG・高乳酸の組み合わせが特徴的。
- ライソゾーム病(Fabry・Gaucher病)疾患
α-ガラクトシダーゼA欠損によりグロボトリアオシルセラミドが全身に蓄積するX連鎖遺伝の代謝疾患。四肢末端の灼熱痛・被角血管腫・発汗低下を呈し、しばしば腎障害を合併する。
- ヘモクロマトーシス疾患
体内に過剰な鉄が蓄積し肝・膵・心などの臓器障害をきたす疾患。皮膚の色素沈着とフェリチン著明高値を呈し、瀉血が原則だが貧血合併例は鉄キレート剤を用いる。
- 銅代謝異常(Wilson病・Menkes病)疾患
銅代謝の異常により銅が肝臓や脳に蓄積し肝障害や神経症状をきたす常染色体潜性遺伝の疾患。血清銅・セルロプラスミン低値と尿中銅排泄増加を示し、銅キレート薬で治療する。
- シスチン尿症疾患
シスチンと二塩基アミノ酸の尿細管再吸収が破綻する先天異常。難溶性のシスチンが尿路で析出して尿路結石を反復し、尿中にアミノ酸尿の所見を呈する。
- 有機酸代謝異常症疾患
新生児期に高 AG 代謝性アシドーシス + 高アンモニア血症を呈する先天性代謝疾患の代表が、有機酸代謝異常症およびケトン体代謝異常症である。
- 尿素回路異常症疾患
尿素回路異常症はオルニチン回路 (= 尿素サイクル) の酵素欠損により高アンモニア血症を呈する先天性代謝疾患の総称である。
- ミトコンドリア病疾患
ミトコンドリアDNAの変異により発症する遺伝性疾患群。ミトコンドリアは全て卵子由来のため母から子へ伝わる母系遺伝の形式をとり、父からは遺伝しない。
- 乳糖不耐症疾患
乳糖分解酵素の欠乏により乳糖を消化できない病態。乳製品やミルクの摂取後に、酸性臭(酸っぱい臭い)を伴う水様性の下痢を呈するのが典型である。