研修病院のデータベースはどれを見るべきか|求人・口コミ型と公表データ型の違い
目次
研修病院のデータベースは、載せている情報の性質で3つに分かれます。求人条件を軸にしたもの、口コミや評価を軸にしたもの、そしてマッチングの公表データ(倍率・定員・充足率)を軸にしたものです。目にしやすいのはほぼ前の2つで、公表データで全施設を横並びに比較できるものは多くありません。結論から言えば、候補を絞る段階では公表データ型、絞ったあとの中身を知る段階では口コミ型、という順番で使うのが噛み合います。
3つの型と、それぞれが答えられる問い
- 求人型(エリア・給与・当直回数などで検索):待遇の条件で足切りしたいときに向く。ただし条件は施設側の掲載情報に依存する
- 口コミ型(研修医・医師の評価):実際の雰囲気や指導体制を知りたいときに向く。母数が少ない施設では個人の相性が強く出る
- 公表データ型(倍率・定員・充足率):候補が多すぎて絞れないときに向く。全施設が同じ物差しで並ぶのが利点
3つは競合ではなく、使う場面が違います。問題は、公表データ型が検索で最初に見つかりにくいことです。
公表データそのものは、どこにあるのか
マッチングの結果は、医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)が毎年秋に公表しています。プログラム別の定員・マッチ者数・空席数に加えて、そのプログラムを希望順位表に登録した学生数(=倍率の分子)まで載ります。厚生労働省も報道発表でプログラム別の定員・マッチ者数・空席数を公表していますが、登録した学生数の列は JRMP の公表資料にしかありません。いずれも誰でも無料で読めます。[1],[3]
ただし形式はPDFの一覧表です。1,470プログラムが並ぶ表から「自分の県で、定員が多くて、埋まり切っていない所」を探すような絞り込み・並べ替えはできません。一次資料の確認には確実ですが、候補を絞る道具としては使いにくい、というのが実情です。
公表データで見ると、倍率の高さはそのまま人気とは限らない
iwor はこの公表データをプログラム単位で収録し、独自に集計しています。対象は2025年度(令和7年度)マッチング=2026年4月研修開始分です。以下の数値は公表データそのものではなく iwor が集計した値で、倍率は「そのプログラムを希望順位表に登録した学生数 ÷ 定員」をプログラムごとに出した単純平均です(施設の規模で重みづけしていません)。収録は1,470プログラム、定員の合計は10,527人、マッチした人数は8,910人、空きは1,617人です。この母集団を大学病院と市中病院に分けると、倍率と実際の競争の強さのずれがはっきり出ます。[1],[4]
- 大学病院(402プログラム):平均倍率11.6倍だが、延べ登録のうち第1希望は8%(中間公表時点)
- 市中病院(1,068プログラム):平均倍率4.5倍で、第1希望は28%(同)
- 中間公表時点で、第1希望の登録が0名だったプログラムが311ある
第1希望の数字は中間公表(登録締切前)の断面で、最終の第1希望者数はプログラム別には公表されません(分子だけが中間の値・分母の登録数は確定値のため、この割合は低めに出ます。確定値どうしで揃えると約9%・約29%です)。また学生は平均5つ前後のプログラムを希望順位表に登録するため、「登録数」は延べ数です。第1希望0名という数字も中間の断面であって、研修の質を意味しません。この差の理由をデータだけから断定することはできません。併願先として希望順位表に載せられやすい、たすき掛けや専門医研修との接続を見込んで登録される、といった複数の要因が考えられます。確かなのは、大学病院では登録数に対して第1希望の割合が低い、という事実のほうです。倍率だけを見て「人気だから難しい」と判断すると、実際の競争の強さを読み違えます。倍率と本気度のずれについては人気病院ランキングの読み方でさらに詳しく扱っています。[1],[2]
iwor なら、候補を同じ物差しで並べられます。
iwor は医師のためのワークスペースです。全国の研修病院を検索し、倍率・定員・充足率で並べ替えたり、都道府県や大学・市中の別で絞り込んだりできます。
無料ではじめる選考内容も、公表データとして比べられる
倍率と並んで効くのが選考内容です。iwor は研修病院341施設の待遇・選考情報を収録しています。これらも求人型サイトと同じく各病院がガイドブックへ申告した値ですが、選考内容の申告がある330施設を数えると、面接は330施設すべて、筆記試験は143施設、小論文・作文などの記述式は122施設です。筆記があるかどうかで準備の量が変わるため、候補を絞る段階で確認しておくと準備量を見積もりやすくなります。[4]
候補の絞り方そのものの手順は研修病院の選び方に、倍率が低い施設をどう評価するかはマッチングの「穴場病院」の見つけ方にまとめています。
データベースを使うときの注意
公表データは前年度の結果であり、次年度の結果を予測するものではありません。定員は年度で変わり、人気も指導体制の変化で動きます。iwor が算出している指標(マッチ難易度・穴場度など)も公表値からの推定=目安であって、個人の合否を予測するものでも、受け入れを保証するものでもありません。倍率・定員・充足率は無料で見られ、PRO ならマッチ難易度・穴場度などの数値まで確認できます。数値はあくまで候補を絞る道具で、最終的な判断は見学と面談で確かめてください。[1]
よくある質問
研修病院のデータはどこが出しているのですか?
マッチングの結果は医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)が公表しています(定員・マッチ者数・空席数・希望順位登録した学生数)。厚生労働省の報道発表にもプログラム別の定員・マッチ者数・空席数が載りますが、登録した学生数は JRMP の資料のみです。待遇や選考内容は、各病院が臨床研修病院ガイドブック(編集:医療研修推進財団)に申告した情報が一次資料です。各データベースはこれらの公表値や施設からの申告情報をもとに構成されています。[1],[3],[4]
口コミは信用してよいですか?
参考にはなりますが、投稿数が少ない施設では書き手個人の相性が強く反映されます。公表データで候補を絞ってから、口コミは「見学で何を確かめるか」の質問リストを作る材料として使うのが実用的です。
充足率が低い病院は避けたほうがよいですか?
一概には言えません。立地・知名度・定員の大きさ・情報発信量など、研修の質とは関係のない理由で埋まらないプログラムがあります。理由を分解せずに「埋まっていないから悪い」と判断するのは早計です。
複数のデータベースを併用すべきですか?
併用が前提だと考えてください。公表データで絞り、求人型で待遇条件を確認し、口コミ型で雰囲気を補う。1つのサービスで全部を賄おうとすると、どこかの軸が抜けます。なお待遇の欄は、月給だけを並べても比較になりません。読み方は研修病院の給料の見方に、申告値を高い順に並べた実名リストは研修医の給料が高い病院はどこかにまとめました。
まとめ
研修病院のデータベースは求人型・口コミ型・公表データ型に分かれ、目にしやすいのは前の2つです。候補が多すぎて絞れないという段階の問題を解くのは公表データ型で、全施設が同じ物差しで並ぶことに価値があります。2025年度の1,470プログラムを並べると、大学病院は平均倍率11.6倍でも第1希望(中間公表時点)は8%、市中病院は4.5倍で28%と、倍率と本気の競争が大きくずれていることが分かります。第1希望率の低さは併願先として登録されやすい構造によるもので、研修の質とは無関係です。数値は前年度の実績であり個人の合否を予測するものではありませんが、見学に行く先を決めるところまでは十分に使えます。[1],[2],[4]
出典
- 1.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「令和7年度 研修プログラム別マッチ結果」 jrmp2.jp(2026-07-29 取得)
- 2.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「中間公表 各プログラムを第一位で希望順位登録している参加者数(2025年度)」 jrmp2.jp(2026-07-29 取得)
- 3.一次資料厚生労働省「令和7年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします(報道発表・プログラム別結果を含む)」 mhlw.go.jp(2026-07-29 取得)
- 4.一次資料公益財団法人 医療研修推進財団(監修:臨床研修協議会)「臨床研修病院ガイドブック 2027年度版(各病院の申告値を iwor が集計)」 guide.pmet.jp(2026-07-29 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制