研修医マッチングの人気病院ランキングの読み方|倍率15倍でも第一志望が1名のプログラムがある
目次
人気病院ランキングとは、各プログラムを「第一志望に登録した人数」の多い順に並べたものです。この並べ方は定員に強く影響されるため、募集定員で割った「1席あたりの人気」で並べ直すと、定員8名以上のプログラムでは上位20のうち12が入れ替わります(条件を外すと15)。さらに同じ条件で「1席あたりの第一志望者数」の上位20と倍率の上位20を比べると、重なるのはたった3件です。倍率29倍でも第一志望に選んだ人が0名のプログラムが実在します。以下、3つの物差しを順に見ていきます(2025年度マッチングの公表データを iwor が1,470プログラム分集計)。[1]
物差し① 第一志望者数(=一般的な人気病院ランキング)
医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)の公表資料をもとに、第一志望に登録した人数が多い順に iwor が並べたものです。カッコ内は募集定員です。なお、これは中間公表時点の値による順位で、最終確定値ではありません(理由は後述します)。[1]
- 1位 順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都・定員34)65名
- 2位 さいたま市立病院(埼玉県・定員12)63名
- 3位 武蔵野赤十字病院(東京都・定員10)60名
- 3位 川崎市立川崎病院(神奈川県・定員10)60名
- 5位 獨協医科大学病院(栃木県・定員51)50名
- 6位 湘南鎌倉総合病院(神奈川県・定員19)46名
- 7位 大阪市立総合医療センター(大阪府・定員18)45名
- 8位 和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県・定員70)43名
- 9位 筑波大学附属病院(茨城県・定員74)42名
- 9位 東京都立墨東病院(東京都・定員14)42名
定員の欄を見てください。8位の和歌山県立医科大学附属病院は定員70に対して43名、9位の筑波大学附属病院は定員74に対して42名。一方で3位の武蔵野赤十字病院は定員10に対して60名です。同じ「人気上位」に並んでいますが、意味はまったく違います。
物差し② 1席あたりの人気(定員で割る)
第一志望者数を募集定員で割ると、順位は大きく入れ替わります(定員8名以上のプログラムを対象)。
- 1位 武蔵野赤十字病院(東京都・定員10)6.0人/席
- 1位 川崎市立川崎病院(神奈川県・定員10)6.0人/席
- 3位 さいたま市立病院(埼玉県・定員12)5.3人/席
- 4位 千葉労災病院(千葉県・定員10)3.6人/席
- 5位 大阪赤十字病院(大阪府・定員10)3.2人/席
- 6位 虎の門病院 内科系プログラム(東京都・定員11)3.0人/席
- 6位 東京都立墨東病院(東京都・定員14)3.0人/席
- 8位 川口市立医療センター(埼玉県・定員12)2.92人/席
- 9位 市立豊中病院(大阪府・定員11)2.91人/席
- 9位 国立病院機構大阪医療センター(大阪府・定員11)2.91人/席
和歌山県立医科大学附属病院は0.6人/席、筑波大学附属病院も0.6人/席で、この並べ方では上位に入りません。定員規模の大きい施設は構造的に1席あたりの値が低く出るので、これは人気や研修の質の評価ではありません。募集定員40名以上の20プログラムを合計すると、第一志望者は1席あたり0.47人。全国平均(総定員10,527に対し第一志望9,284名=0.88人/席)の半分ほどです。[1]
ここまでは多くの読者が自力でたどり着けます。問題はこの先です。
物差し③ 本気度――倍率が測れていないもの
研修医マッチングでよく引かれる「倍率」は、応募者数(=その病院を希望順位表のどこかに書いた人数)を定員で割った値です。ここには「滑り止めとして書いた人」も「絶対にここに行きたい人」も同じ1名として入ります。だから倍率は、席を巡る本気の競争の激しさを直接には測っていません。
全1,470プログラムで見ると倍率の中央値は3.5倍、90%点は13倍です。一方、第1希望にした人だけで数え直した中央値は0.64倍でした(マッチングの倍率は何倍が普通か)。同じ母集団を2つの数え方で見ると、これだけ景色が変わります。
大学病院の倍率は、併願の重ね書きで膨らむ
2025年度の公表データを、iwor が大学病院(402プログラム)と市中病院(1,068プログラム)に分類して集計すると、はっきりした差が出ます。なお平均倍率はプログラムごとの倍率の単純平均で、定員の大小で重みづけしていません。[1]
- 大学病院:平均倍率 11.6倍/希望順位登録は延べ24,246件。中間公表の時点で第一志望に置かれていた登録は1,955件で、およそ8%にあたる
- 市中病院:平均倍率 4.5倍/希望順位登録は延べ26,169件。同じく第一志望は7,329件で、およそ28%にあたる
大学病院の倍率は市中病院の2.6倍ありますが、第一志望率は3分の1以下です。自校の学生が「どこにもマッチしないと困るから」と順位表の下のほうに母校を置く、という併願行動が背景にあるとみられます。いずれにせよ、席の奪い合いの激しさとは別物です。この差を定員規模や地域差まで含めて掘り下げたものが初期研修は大学病院と市中病院どっちです。志望先を大学と市中のどちらにするかで迷っている場合はそちらを参照してください。
実例:倍率29倍でも第一志望が0名のプログラム
公表値をそのまま並べると分かりやすくなります。定員・応募・倍率は2025年度の確定値、第一志望は中間公表時点の値です(最終の第1希望者数はプログラム別には公表されません)。[1]
- 大阪大学医学部附属病院 広域連携コース:定員1名・応募29名(倍率29.0倍)・第一志望0名
- 東京科学大学病院 広域連携型プログラム:定員8名・応募121名(倍率15.1倍)・第一志望1名
- 虎の門病院 内科系プログラム:定員11名・応募48名(倍率4.4倍)・第一志望33名
- 武蔵野赤十字病院:定員10名・応募108名(倍率10.8倍)・第一志望60名
倍率だけを並べると、大阪大学の広域連携コース(29.0倍)が最も高く、虎の門病院の内科系(4.4倍)はその6分の1以下です。第一志望者数を見ると順序が入れ替わります。虎の門の内科系は定員11名に対して33名が第一志望に置いており、1席あたり3人が本気で取りに来ています。大阪大学の広域連携コースを第一志望にした人は1人もいません。
実際、定員8名以上のプログラムで倍率の上位20を取り、同じ条件でマッチ難易度(後述)の上位20を取ると、重なるのはたった3件です。倍率だけで並べると、席を巡る本気の競争の激しさとは順序が大きくずれる、ということです。
自分で「本気度」を出す3ステップ
特別な道具は要りません。JRMPの公表値と、iwor の各病院ページに載っている数字だけで計算できます。
- ① 志望集中度を出す:第一志望者数 ÷ 応募者数(どちらも登録の件数)。市中病院の全国平均は28%、大学病院は8%。平均より大きく高ければ、第一志望として登録される割合が相対的に高いプログラムです
- ② 1席あたりの本気度を出す:第一志望者数 ÷ 募集定員。1.0を超えていれば、定員と同じ数以上の人がそこを第一志望にしている
- ③ 推移を見る:応募者数と第一志望者数を5年分並べる。単年の数字は年ごとのブレが大きく、増加傾向か減少傾向かのほうが判断に効く
1〜2院ならこれで足ります。手が止まるのは、志望リストが10院を超えたときと、全国のなかでの位置が知りたくなったときです。「志望集中度45%」が高いのか低いのかは、他の1,469プログラムの分布を知らないと判断できません。
iwor は1,470プログラムを4つの指標に標準化している
iwor は、上の計算をJRMPの公表値から全プログラム分行い、分布のなかでの位置が分かる形に標準化した4つの指標を持っています。定義は隠していないので、そのまま書きます。いずれも席の取りやすさの目安であって、個人の合否を予測するものでも、病院の価値を評価するものでもありません。
- マッチ難易度:席を巡る本気の競争の激しさを偏差値化したもの。本気倍率=(志望者数×第1志望率)÷定員 をもとに算出し、定員が4人以下のプログラムは値のブレを補正する。4指標のなかで唯一、全国順位も出す
- 志望集中度:希望順位登録の件数に対する第一志望としての登録の割合(=上のステップ①)。大学病院は併願先になりやすく低めに出る
- 穴場度:0〜100。空きやすさ・低倍率・志望者の減少から算出した値。高いほど競争が緩い傾向
- 安定度:0〜100。直近の充足の安定性に、充足の水準を加味した値。毎年安定して埋まっているほど高い(継続的に定員を下回るプログラムは低く出る)
指標の設計で気をつけたのは、同じ信号を二重三重に数えないことです。たとえば穴場度の初期版は「空席率」「低充足率」「低倍率」を並べていましたが、これらはほぼ同じことを言っているので、空席と低充足を1つにまとめ直しました。安定度も、ばらつきの小ささだけを見ると「毎年きっちり定員割れする病院」が高評価になってしまうため、充足の水準そのものを組み込んでいます。
iwor の各病院ページでは、この4指標の存在と定義は誰でも無料で見られます。数値と、マッチ難易度の全国順位は有料プラン(PRO)の範囲です。1,470プログラム分を横断で並べ替え、志望リストの競争度を試算するところまで含めた機能になっています。
iwor なら、倍率ではなく本気の競争で並べ替えられます。
iwor は医師のためのワークスペースです。全国1,470プログラムの倍率・定員・充足率は無料で比較でき、PRO なら4指標の数値とマッチ難易度の全国順位まで見えます。いずれも席の取りやすさの目安です。
無料ではじめるランキングを併願設計に翻訳する
順位表を眺めるだけでは出願は決まりません。次の形に落とすところまでやってください。
- 上・中・下の3層で候補を作る。1席あたりの第一志望者が2人以上の層、1人前後の層、1人未満の層から最低1つずつ
- 大学病院と市中病院を同じ物差しで比べない。倍率も第一志望率も構造的に水準が違う
- 登録するプログラム数を増やす。順位の並べ方では有利にならないので、受験者が動かせる主な変数はここ
3つめについて補足します。臨床研修マッチングで使われるアルゴリズムについて、JRMPは「耐戦略性」を有すると明言しています。つまり志望順位を戦略的に操作しても有利にならず、行きたい順に正直に登録するのが最適です。受験者が動かせるのは「登録する数」のほうです。どこを何番目に置くかの考え方は研修病院の選び方で扱っています。[2]
この数字でわからないこと
4つの指標はいずれも「席の取りやすさ」の目安であって、研修の質や教育体制の評価ではありません。立地・定員規模・併願パターンの影響を受けます。特に大学病院は併願先として登録されやすいため第一志望率が低く出ますが、これは研修の中身とは無関係です。地域を絞って同じ指標で見たい場合は、関西の人気研修病院はどこかで近畿2府4県を、関東の人気研修病院はどこかで1都6県を、それぞれ同じ形で並べ直しています。都道府県ひとつに絞って、病院単位の合算をプログラム単位まで開いたものが東京の研修病院ランキングの見方と大阪の人気研修病院ランキングの読み方、愛知の研修病院はどこを受けるか、神奈川の研修病院はどこを受けるか、福岡の研修病院はどこを受けるか、北海道の研修病院はどこを受けるか、宮城の研修病院はどこを受けるかです。そもそも各サイトのランキングが何を数えているのかは研修病院の検索サイトは何が違うのかで整理しています。
また、マッチングは参加者の選好に基づく仕組みなので、集計値が個人の合否を予測することはありません。数字は候補を絞る道具であって、最後は見学で自分の目で確かめる工程が必要です。日程の逆算は医師臨床研修マッチングのスケジュールを、そこで得た材料の使い道は志望動機の書き方を参照してください。競争が緩い側の探し方はマッチングの穴場病院の見つけ方にまとめています。
本記事の数値は、JRMP が公表する2025年度マッチングの資料を iwor が1,470プログラム分集計したものです。[1]
よくある質問
倍率が高い病院ほどマッチしにくいですか?
そうとは限りません。倍率には滑り止めとして登録した人が含まれるためです。大学病院は平均倍率11.6倍ですが第一志望率は8%、市中病院は平均4.5倍で28%です。マッチのしにくさを見るなら、第一志望者数を定員で割った値のほうが実態に近くなります。[1]
人気病院ランキングの上位は毎年変わりますか?
思ったより入れ替わります。第一志望者数で上位10を取ると2024年度から2025年度に残ったのは4件、上位20で11件、上位30で19件でした。第一志望者数は年ごとに数十名単位で動きます。1年分を絶対視せず、数年分の推移で見てください。iwor では無料登録後に、各病院ページで2021年度以降の応募者数・第一志望・倍率の推移を見られます。
第一志望者数と応募者数は何が違いますか?
応募者数はその病院を希望順位表に記載した人の総数、第一志望者数はそのうち1位に記載した人数です。第一志望者数のほうが本気度の近似としては精度が高く、応募者数は併願を含めた総需要を表します。両方見ると、その病院が本命として選ばれているのか滑り止めとして選ばれているのかが分かります。
第一志望者数の数字はいつ時点のものですか?
JRMPは希望順位登録の途中経過を中間公表として出しますが、最終的な第1希望者数そのものは公表されません。世に出ているランキングの多くは中間公表時点の値です(各年度のランキングを公開している病院情報局も、この点を注記しています)。順位登録は締切まで変更できるため、公表後に動く人も毎年います。[3]
数字はプログラム単位ですか、病院単位ですか?
プログラム単位です。同じ病院が複数のプログラムを持つことがあり、たとえば虎の門病院は内科系(定員11)・外科系(定員6)・小児科重点(定員2)・産婦人科重点(定員2)・分院(定員2)に分かれています。応募するのはプログラムなので、比較もプログラム単位で行ってください。[1]
マッチ難易度は誰でも見られますか?
指標の存在と定義は無料で見られます。数値と、マッチ難易度の全国順位はPROプランの範囲です。ただし本記事の「本気度を出す3ステップ」は公表値だけで計算できるので、1〜2院なら自分で出せます。
まとめ
人気病院ランキングは、第一志望者数の多い順という1つの物差しで並べた表です。定員で割ると上位20のうち12が入れ替わり、本気度まで見ると倍率上位20と重なるのは3件だけになります。倍率29倍で第一志望0名のプログラムと、倍率4.4倍で第一志望33名のプログラムが同じ年に並んで存在する――これがこの試験の実像です。順位表は候補を知る入口として使い、判断は第一志望者数と推移に置いてください。
出典
- 1.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「令和7年度 研修プログラム別マッチ結果」 jrmp2.jp(2026-07-28 取得)
- 2.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「2025年度 中間公表(各プログラムを第一希望に登録した学生数)」 jrmp2.jp(2026-07-28 取得)
- 3.病院情報局(ケアレビュー)「2024年度 初期臨床研修人気病院ランキング」 hospia.jp(2026-07-28 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制