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マッチング

マッチングの病院見学は何ヵ所行くべきか|JRMP公表データで決める

iwor 編集部12分で読めます
目次

病院見学は何ヵ所行けばいいか。医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)が2025年度に実施した学生参加者アンケートでは、「あなたは全部で何か所の病院の選考を受けましたか?」への回答は4ヵ所が22%で最多、3ヵ所18%、5ヵ所16%と続き、3〜5ヵ所に56%が収まります。同じ調査で、マッチした人のうち希望順位の第1位でマッチしたのは62%でした。このアンケートは受験した件数とマッチ順位をクロス集計していないので、件数と結果の因果は分かりません。分かるのは、マッチした人の多くが順位表の上のほうで決まっているということです。だとすれば、見学の設計は「上位に自信をもって書ける病院をつくる」ことから逆算するのが合理的だ——というのがこの記事の立場です(順位表に登録するプログラム数を増やすこと自体は、後述のとおり別の意味で有効です)。[1]

「3〜4件が相場」はどこから来ているか

検索するとよく出てくるのが「最近では1人が見学に行く件数は3-4件、それも1日のみというのが一般的となりました」という記述です。研修病院の情報サイトの解説記事にあるもので、この記事には数字の出典(調査名)の記載がありません。同じ記事は、研修先を選べるようになった2004年当時について「当時の先輩は1人10件程度、それも本命は複数日、病院見学に行ったそうです」とも書いています。[4]

感覚として外れてはいません。ただ、見学の件数そのものを直接調べた公表統計は見当たらないので、近い代理指標としてJRMPの学生アンケートを使います。設問3「あなたは全部で何か所の病院の選考を受けましたか?」の分布はこうです。[1]

  • 1ヵ所 8%/2ヵ所 12%/3ヵ所 18%/4ヵ所 22%/5ヵ所 16%
  • 6ヵ所 10%/7ヵ所 6%/8ヵ所以上 8%
  • 調査は2025年度マッチング参加者9,902名に対する回答1,273名(公表されている回答率10.1%)。回答は任意なので、熱心な層に偏っている可能性があります
[1]

これは見学ではなく「選考(採用試験)を受けた病院数」です。見学した数はこれより多いのが普通なので、見学の相場が3〜4件という話と矛盾はしません。むしろ重要なのは分布の形です。1〜2ヵ所しか受けていない人が2割、8ヵ所以上受けた人が8%いる。中央値付近に固まってはいますが、正解が1つに決まる問題ではないことが分かります。[1]

もうひとつ、同じ調査の設問6では、病院の採用試験を受けるために大学の講義や実習を休んだことがあるかに対し、休んだことは無いが74%でした。受験先を増やすほど実習との衝突が増えるという、当たり前のコストがここに出ています。[1]

決まりやすいのは、順位表の上位です

同じアンケートの設問2は、マッチした人が希望順位の第何位でマッチしたかを聞いています。第1位が62%、第2位18%、第3位10%、第4位以降10%でした。8割が上位2つで決まっています。[1]

この数字の読み方には注意が要ります。これはマッチした人の中での分布であって、登録数を減らしてよい根拠ではありません。JRMP は中間公表の資料で、マッチングのアルゴリズムは「耐戦略性」を有しており、自身の希望どおりの順位で登録することが最良の結果になると明記しています。さらに、登録数の多いプログラムに登録していて不安な場合は「登録順位の変更」ではなく「登録順位数を増やす」ことを検討するように、とも書かれています。つまり上位に高倍率の病院を書いても下位の病院に不利にはならず、順位表は行きたい順に、書ける限り長くするのが安全です。ここから言えるのは別のことです——見学と選考にかける労力の大半は、上位に書く2〜3院の判断精度を上げるために使ったほうが効率がいい、ということです。[3]

順位表の作り方そのものはマッチングの希望順位登録、全体の時期配分はマッチングのスケジュールにまとめています。

見学先を倍率で足切りすると判断を誤る

では上位に書く候補をどう絞るか。ここでよく使われるのが倍率ですが、倍率だけを見ると構造的に間違えます。iwor がJRMPの2025年度公表値から全1,470プログラムを集計したところ、次の差が出ました。[2],[3]

  • 大学病院のプログラム:平均倍率11.6倍。しかし志願者のうち第一志望として登録した人の割合は8%
  • 市中病院のプログラム:平均倍率4.5倍。第一志望の割合は28%
  • 中間公表の時点で第一志望者が0名だったプログラムが311ある
[2],[3]

平均倍率は、プログラムごとに「そのプログラムを希望順位に登録した学生数 ÷ 募集定員」を計算して単純平均した値です。ここで使っている志願者数は、JRMPの資料が「当該プログラムを希望順位登録した学生数とは、参加病院を希望順位登録した参加者(6年生・卒業生)の数です」と定義しているもので、同じ注記に「参加病院の採用試験を受けに来た者の数でもありません」と明記されています。1人が複数のプログラムを登録するので、この数字は延べ人数です。第一志望者数のほうは1人1プログラムなので、こちらは実人数として比較できます。ただし第一志望者数は中間公表の断面値で、最終確定値ではありません。[2],[3]

この差は、大学病院のプログラムが「押さえ」として登録されている割合が高いと考えると整合的です(研修の質とは無関係の話です)。倍率11.6倍を見て見学先の候補から外すと、実際には第一志望として競っている人が少ない席を自分から捨てることになりかねません。逆に市中病院の4.5倍は、そのぶん第一志望として競っている人の割合が高い。見かけの倍率が低いほうが競争は厳しい、という逆転が起こりえます。[2],[3]

倍率と人気の関係をもう一段掘った話は人気病院ランキングの読み方、倍率の低い病院の見極め方はマッチングの穴場病院で扱っています。

iwor が公表値から算出している4つの指標

上のような読み替えを毎回自分で計算するのは現実的ではないので、iwor は JRMP の公表値から4つの指標を算出しています。名前と、それが何を測る数字かは次のとおりです。いずれも公表値からの推定であって、合否や受け入れを保証するものではありません。

  • マッチ難易度:席を巡る本気の競争の激しさを偏差値化したもの。高いほど競争が激しい
  • 穴場度:空きやすさ(空席・低充足)と低倍率を主に、志望者の減少傾向を加味した0〜100のスコア。高いほど競争が緩い傾向
  • 志望集中度:志願者のうち何割がそのプログラムを第一志望にしているか。併願先として登録されやすいプログラムかを推し量る手がかりになる
  • 安定度:毎年安定して定員が埋まっているかを示す0〜100の値。定員割れが続く場合は低く出る

いずれも席の取りやすさの目安であり、研修の質や教育体制の評価ではありません。また公表値からの推定なので、個人の合否や受け入れを予測・保証するものでもありません。

無料でも、全国の研修病院を倍率・定員・充足率で並べ替えでき、都道府県や大学/市中の別で絞り込めます。上の4指標は定義まで無料で確認でき、PRO なら4指標の数字と、マッチ難易度の全国順位まで見られて、志望リストの競争度シミュレーションも回せます。

iwor なら、見学に行く前に候補を倍率と定員で絞れます。

iwor は医師のためのワークスペースです。全国の病院を倍率・定員・充足率で無料で比較でき、PRO ならマッチ難易度・穴場度・志望集中度・安定度を数字で確認できます。いずれも公表値からの推定=席の取りやすさの目安です。

無料ではじめる

見学の設計:3層に分けて考える

ここからは iwor 編集部の設計案です。件数を先に決めるのではなく、役割を決めてから件数が決まります。

  • 本命層(1〜2院):順位表の上位に書く前提。複数回・複数日行く価値があるのはここだけ。研修医の1日に密着できる形で申し込む
  • 比較層(2〜3院):本命の判断基準をつくるために行く。大学病院と市中病院、規模の違う病院を意図的に混ぜると、本命の何が良くて何が引っかかるのかが言語化できる
  • 保険層(1〜2院):順位表の下のほうを埋めるために、最低限の情報を取りに行く。1日で足りる

この配分だと合計4〜7院になります。ここから実際に選考を受けるのは一部なので、上のアンケートの分布(選考は3〜5ヵ所が56%)とは直接は比べられません。志望度にかかわらず、受け入れてもらう以上はどの層も準備して臨んでください。比較層を省くと、本命が良いのか、他を見ていないから良く見えるのかが最後まで分からないまま順位表を出すことになります。逆に保険層を省くと、アンマッチのときに二次募集で一から情報収集することになります。

時期については、m3.com 研修病院ナビの解説が「6年生の夏休み前後に試験を受ける…、となると6年生の6月終わりくらいには受験する病院が決まっていなくてはならない…、となると大学によって実習や試験の繁閑にはばらつきがあるものの5年生の終わりの春休みには本命の見学を済ませておかなくてはならない」と逆算しています(三点リーダは原文のものです)。本命は5年生のうちに一度行っておくと、6年生でもう一度行ったときに比較ができます。日程や距離の都合で見学が難しい場合は、オンライン説明会や公表資料でどこまで補えるかを病院に直接確認してください。アンマッチだったときの動き方はマッチングでアンマッチだったらにまとめました。[4]

見学で聞くことより、記録の形を先に決める

「何を聞くか」のリストはどの解説記事にもあります。指導医の雰囲気、当直体制、研修医の生活リズム、ローテーションの自由度、3年目以降の進路。抜けがちなのは、聞いた内容を病院どうしで比べられる形に残すことです。

見学から2か月経つと、記憶は「雰囲気が良かった」に収束しがちです(ここは編集部の経験則です)。5院回ったあとに5院とも雰囲気が良かったことになり、順位表を作る段になって決め手がなくなる。これを防ぐには、1院目に行く前に採点の軸を決めておくしかありません。軸を固定してから回れば、あとから追加した観点で前の病院を評価し直す手間がなくなります。

iwor には見学準備のチェックリスト(持ち物・身だしなみ・交通・見学後にやること)があり、これは無料で使えます。見学メモは、カテゴリ別の5段階採点と任意メモで記録する形にしていて、各カテゴリに「聞くことの例」を折りたたみで内包しています。記入と採点は無料でそのまま使えて、PRO なら見学先を10件まで保存して、複数院を重み付き総合スコアで並べた比較表にできます。

面接で「なぜこの病院か」に答えられるかどうかは、見学のときに何を記録したかでほぼ決まります。面接の準備はマッチング面接の対策、病院選びの軸そのものは研修病院の選び方で扱っています。

よくある質問

見学は何ヵ所行けば十分ですか

公表されているのは選考を受けた病院数の分布です。1ヵ所8%・2ヵ所12%・3ヵ所18%・4ヵ所22%・5ヵ所16%・6ヵ所10%・7ヵ所6%・8ヵ所以上8%で、4ヵ所が最多、3〜5ヵ所に56%が収まります。一方で1〜2ヵ所が20%、6ヵ所以上も24%いるので、ここは幅のある数字です。見学はそれより多いのが普通です。本命1〜2院・比較2〜3院・保険1〜2院という役割分担で組むと、そのうち選考まで進む数がこの範囲に落ち着きます。件数そのものより、上位に書く2院の判断精度に労力を寄せてください。[1]

選考はいつまでに終わりますか

同じアンケートで、中間公表の後に選考を受けた病院は0ヵ所と答えた人が94%でした。つまり受験は中間公表より前に終わっています。見学の予定も、そこから逆算して組んでください。[1]

同じ病院に2回行く意味はありますか

本命ならあります。1回目は施設と体制を見る回、2回目は具体的な疑問をぶつける回、と目的を分けられるからです。ただし2回行くこと自体が評価されるという公表された根拠はありません。むしろ見学回数を採用の要件にしないと明記している病院があります(マッチングにコネは効くのか)。回数を稼ぐより、2回目に持っていく質問が1回目の記録から出てくるかどうかのほうが本質的です。

倍率の高い病院は見学しても無駄ですか

倍率だけでは判断できません。大学病院のプログラムは平均倍率11.6倍ですが、志願者のうち第一志望として登録した割合は8%です。市中病院は平均4.5倍で28%(第一志望者数は中間公表時点の値です)。見かけの倍率が高くても、押さえで登録されているだけの席が含まれている可能性があります。順位表は行きたい順に書くのが常に最善なので、倍率を理由に上位から外す必要はありません。[2],[3]

実習を休んでまで見学や選考に行くべきですか

JRMPの学生アンケートでは、採用試験を受けるために大学の講義や実習を休んだことは無いと答えた人が74%でした。多数派は休まずに回しています。日程が動かせるかは大学と病院の両方で変わるので、まず所属大学の規程と、病院側が実習期間に配慮した日程を用意しているかを確認してください。[1]

見学に行かずに順位登録してもいいですか

制度上は可能です。ただし採用試験を実施する病院が多く、選考の過程で志望動機を問われます。見ていない病院について答えるのは実務的に難しい。加えて、研修医の雰囲気や当直体制といった、公表資料に出てこない情報を得る機会が見学しかありません。順位表の下のほうであっても、1日でよいので行っておくほうが安全です。日程・距離・費用の都合で行けない場合は、オンライン説明会や公表資料でどこまで補えるかを病院に直接確認してください。申し込みの手順そのものは病院見学の申し込みメールにまとめています。

まとめ

病院見学の件数は、公表データで前提を揃えたうえで設計できます(以下の3層の配分そのものは iwor 編集部の案です)。JRMPの学生アンケートでは、選考を受けた病院は4ヵ所が最多で3〜5ヵ所に56%、そして第1位でマッチした人が62%。決まっているのは順位表の上のほうです。見学先を倍率で足切りすると、大学病院の平均11.6倍・第一志望率8%、市中病院の平均4.5倍・28%という構造を見落とします。本命1〜2院・比較2〜3院・保険1〜2院で役割を分け、1院目に行く前に採点の軸を決めておく。これで、順位表を作る段になって決め手が無くなる事態を避けられます。[1],[2],[3]

出典

  1. 1.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)2025年度研修医マッチング 学生参加者アンケート jrmp2.jp2026-08-03 取得)
  2. 2.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)令和7年度 研修プログラム別マッチ結果 jrmp2.jp2026-08-03 取得)
  3. 3.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)2025年度 医師臨床研修マッチング 中間公表 jrmp2.jp2026-08-03 取得)
  4. 4.m3.com 研修病院ナビ【面接・見学対策集中講座・第3回】臨床研修マッチングとは~そもそもマッチングって何? career.m3.com2026-08-03 取得)

本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制

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