症例報告の経過表の作り方|載せるのは症候・検査値・治療の3段だけ
目次
結論から書くと、症例報告の経過表は次の4つを守れば、症例発表のスライドの作り方をまとめた論文が示す作法に沿った形になります。横軸は発症日を第1病日として数え、実際の日付は書かない。縦は上から症候・検査値・治療の3段に分ける。症候は3つか4つまでに絞る。色は白・黒・灰色のほかに2系統まで。手で組むなら Excel の折れ線グラフと PowerPoint の図形、型から作るなら診療科ごとのテンプレートを使います。
経過表に載せるのは3段だけ:症候・検査値・治療
経過表は、時間を横軸に、症例で起きたことを縦に並べた1枚の図です。並べるものは3種類しかありません。患者に何が起きたか(症候)、数値がどう動いたか(検査値)、何をしたか(治療)。上に症候、下に治療を置き、検査値の推移を入れるなら症候と治療の間に置く——これが論文の示す配置です。[1]
横軸:第1病日から数える。実際の日付は書かない
論文は現病歴について「発症日を第1病日として記載し,実際の日付は記載しない」としています。経過表も同じで、2026年4月12日のような実日付は載せません。患者を特定する手がかりになりますし、聴衆にとっても「第5病日」のほうが現病歴と対応がつきます。[1]
起点をどこに置くかは症例によります。神経・救急のように発症がはっきりしている症例は発症日を、術後や集中治療のように入院からの管理が主題の症例は入院日を第1病日にすることを勧めます。どちらにしても、起点は1つの図の中で混ぜないでください。
上段:症候は3〜4個まで
論文は経過図の症候を「三つまたは四つ以内」としています。発熱の症例なら発熱と倦怠感、髄膜炎なら発熱・頭痛・項部硬直というように、診断・病態・転帰のどれかに直結する症候だけを残します。5個以上あるときは、先に「この症例で聴衆に持ち帰ってほしいことは何か」を1文にしてから削ります。[1]
中段:検査値は主題に関わるものだけ
論文は、経過図に検査値の折れ線グラフを置く場合は「なるべく簡潔にする」としています。図中の数値は、生の値より mmol/L や mg/dL のような小さい単位を使うと見栄えがよい、とも書かれています。[1]
実務上の目安としては、感染症なら WBC と CRP、心不全なら体重と BNP のように、主題の変化を追える2〜3項目に絞ります。桁が大きく違う項目(WBC と Plt など)を同じ軸に載せると片方が潰れるので、軸を分けるか対数軸にします。
下段:治療は帯と印で
抗菌薬や昇圧薬は投与期間を横の帯で、手術・挿管・抜管・透析開始のような1回の出来事は縦線か印で置きます。帯にする薬は主要な2〜3剤までにして、細かい用量変更は帯の上に小さく書くか、注釈にとどめます。
論文は「要素の間隔(症候と症候,治療と治療)は一定にする」「図形は黒よりも灰色が目に優しい」としています。帯を灰色の長方形にして等間隔に並べるだけで、図は落ち着きます。[1]
色と文字:2系統まで・灰色を基本に・16:9で
スライド全体の原則がそのまま経過表にも当てはまります。色は白・黒・灰色のほかにメインとアクセントの2系統だけにし、原色は避けます。文字は視認性の高いフォントで統一し、英数字は和文フォントではなく欧文フォントにします。和文にメイリオ、英数字に Segoe UI という組み合わせが論文の例です。スライドの比率は 16:9 が主流で、4:3 で作ると会場のスクリーンで両端が黒く抜けます。経過表をスライドに貼る予定なら、最初から 16:9 の横長で組んでおくと貼ったあとに縮めずに済みます。
Excel と PowerPoint で作るなら:手順と、時間が消える箇所
Excel と PowerPoint で組む場合の手順です。
- Excel で、第◯病日を横に、検査項目を縦に並べた表を作り、折れ線グラフにする
- PowerPoint の図形で灰色の長方形を挿入し、抗菌薬などの帯を描く。手術や挿管は縦線と印で置く
- 症候の帯を上段、治療の帯を下段に等間隔で並べる。ガイド線で揃え、完成したら消す
検査値グラフの整え方は、論文が具体的に指示しています。グラフをスライドに貼ったら「グラフタイトル・縦軸・横軸・目盛り線は全て削除する」。数値のラベルは Excel のデータラベルを削除して、PowerPoint のテキストボックスを別に挿入する。そのほうが整列しやすくなります。この2点です。[1]
どこで時間が消えるか
この方法で時間が消えるのは、グラフの装飾を1つずつ消す作業と、図形を等間隔に揃える作業です。もう1つは修正のときです。指導医から「この症候は外して、こちらの薬を足して」と言われるたびに、帯の位置と長さ、テキストボックスの座標を手で動かし直します。
型から作るなら:診療科ごとの8つのテンプレート
iwor の発表 app には、経過表のテンプレートが診療科ごとに8つ入っています。それぞれ、その科の症例報告でよく並べる項目が最初から置いてあり、数値を入れ替えるだけで図になります。
- 感染症・集中治療:昇圧薬の階段、抗菌薬の帯、熱型、対数軸、省略期間
- 術後経過(外科):手術マーク、ドレーン、硬膜外、創部痛、排液量
- 化学療法(血液・腫瘍):投与矢印、輸血、G-CSF、血球の対数グラフ、FN の注釈
- 心不全:利尿薬の階段、体重と BNP、呼吸困難、NYHA の行
- 意識障害(脳神経):病期のフェーズ帯、パルス療法、JCS の行、髄液細胞数、省略期間
- 川崎病(小児):熱型、免疫グロブリン、アスピリンの減量、症状の山型、冠動脈の行
- 妊娠高血圧腎症(産科):妊娠週数を横軸に、血圧と尿蛋白、管理入院と帝王切開
- 血糖・インスリン(糖尿病):治療のフェーズ帯、インスリンの階段、目標域の網掛け
どの型も、目盛り・凡例・帯の間隔は自動で組まれます。上で書いた「装飾を消す」「等間隔に揃える」の作業がなく、項目を足しても外しても、位置と間隔は自動で組み直されます。配色は3種類とモノクロを切り替えられ、縦横比は自動・4:3・16:9 から選べます。診療科ごとの型の実物と、発表資料の作り方の全体は別のページにまとめています。経過表を貼るスライドの型は症例報告のスライドのテンプレートにまとめました。同じ経過を文章で書く抄録の【臨床経過】は症例報告の抄録の書き方にあります。
手元の Excel を取り込む・PowerPoint に図形のまま書き出す
検査値は電子カルテや Excel にすでにあるので、打ち直させない設計になっています。CSV・Excel・JSON のファイルを選ぶか、Excel の表をコピーしてそのまま貼り付けると、日ごとの値が取り込まれます。取り込むのは検査項目名と値だけにします。
PRO では PowerPoint・SVG・高画質の PNG に書き出せます。PowerPoint は画像として貼るのではなく、線・帯・文字が図形のまま出ます。学会の指定に合わせて会場で書体や色を直したくなっても、PowerPoint 側で触れます。画像で貼った場合は、線や文字を後から編集できません。
よくある質問
経過表と経過図は違いますか?
同じものを指しています。この記事が引いている論文は「経過図」と呼び、iwor の道具は「経過表」と呼んでいますが、横軸に病日、縦に症候・検査値・治療を並べた図であることは変わりません。
何日分まで1枚に入りますか?
急性期の10日と外来フォローの数か月を同じ目盛りで並べると、急性期が潰れます。横軸の途中に省略期間を置き、切れ目の印を入れて省略があると分かるようにします。
学会からフォントの指定がある場合は?
スライドの本文と経過表の文字を同じ書体に揃えるのがいちばん確実です。指定の書体に合わせるなら、PowerPoint に図形のまま書き出して、貼ったあとに一括で変えます。
経過表をそのままスライドやポスターに使えますか?
使えます。iwor では、保存した経過表を、発表スライドの「臨床経過」と学会ポスターの経過の節に呼び出せます。COI のスライドはCOI 開示スライドの書き方にあります。枚数の目安は発表時間別のスライド枚数にまとめました。
まとめ
経過表で決めることは4つです。第1病日から数える、症候・検査値・治療の3段に分ける、症候は3〜4個、色は2系統。手で組むなら Excel の折れ線と PowerPoint の図形で作れますが、装飾を消す・等間隔に揃える・修正のたびに座標を直す、の3つに時間が消えます。型から作るなら、診療科ごとのテンプレートに数字を入れ替えるだけで図になり、修正は値を直すだけで済みます。どちらで作るにしても、書き出しが図形のままか画像かは、貼ったあとに直せるかどうかを分けるので、最初に確かめておいてください。
出典
- 1.一次資料日本神経学会(臨床神経学)「平賀陽之. 経験した症例をまとめる:わかりやすく効果的なスライドの作り方. 臨床神経学 2025;65(6):459-467」 jstage.jst.go.jp(2026-08-17 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制