初期研修は大学病院と市中病院どっち|進む科が決まっているかで決める。順位表には両方入れる
目次
結論から書きます。進む診療科がもう決まっているなら大学病院、決まっていないなら市中病院です。「症例の幅」や「指導体制」の一般論ではなく、募集そのものの作られ方が違うからです。大学病院402プログラムのうち38.8%は診療科名や研究を冠したコースですが、市中病院1,068プログラムでは8.1%しかありません。逆に市中病院は85.0%が科名のない総合型です。そしてどちらを第1志望にするにせよ、順位表には両方を入れます。第4希望以下でマッチした1,095人の65.0%が大学病院で、大学病院は下位に置いても実際に入れているからです。[1],[3]
どちらを第1志望にするか、こう決める
- 進む科が決まっている(小児科・産婦人科・外科など)……大学病院の当該科の重点コースを第1志望の候補に入れる。市中病院にはその入口がほとんどありません
- 進む科が決まっていない・広く見たい……市中病院の総合型を第1志望にする。市中病院の85.0%がこの形で、標準はこちらです
- どちらの場合も……もう一方も登録先に入れておく。とくに大学病院は下位に置いても入れています
公表データから言えるのはここまでです。研修の中身(当直の回数、上級医との距離、必修科の回り方)は公表されていないので、そこは見学で確かめることになります。何を聞くかは病院見学で何を見るかにまとめています。以下、この3つの根拠を順に示します。
① 大学病院には「科の入口」があり、市中病院はほぼ総合型
2025年度のマッチングに出ていた1,470プログラムを、公表資料のプログラム名称で分類しました。診療科名(小児科・産婦人科・外科など)や研究を冠したコースがどれだけあるかを数えたものです。[1]
- 大学病院402プログラム……診療科名・研究を冠したコース38.8%/科名のない総合型43.8%
- 市中病院1,068プログラム……診療科名・研究を冠したコース8.1%/科名のない総合型85.0%
科別に見ると差はもっとはっきりします。小児科を冠したコースは大学病院の18.4%に対し市中病院は3.3%、産婦人科・周産期系は大学病院21.1%に対し市中病院3.1%です。小児科や産婦人科に進むつもりなら、大学病院にはその科に寄せた枠が用意されていて、市中病院ではほぼ総合型から入ることになります。[1]
ここが「どっち」の実質的な分かれ目です。ただし科別コースは定員が小さく、大学病院の1プログラムあたり定員は平均10.0人に対し中央値3人。定員数十人の基本プログラムと、定員2〜3人の科別コースが同居している構成です(市中病院は中央値5人)。定員の小さい枠ほど、その年の応募の振れが結果に効きます。科別コースを第1志望にするなら、同じ病院の基本プログラムも順位表に並べておくのが現実的です。[1]
② 大学病院は、第1志望でなくても入れている
協議会が公表している順位別のマッチ結果を見ると、2025年度に第1希望でマッチした5,403人のうち大学病院は28.3%(1,531人)でしたが、第4希望以下でマッチした1,095人では大学病院が65.0%(712人)を占めます。実際に希望順位表を登録した9,651人のうち、第1位に大学病院を置いたのは2,129人で22.1%。約8割は市中病院を第1志望にしつつ、外れた人の相当数が大学病院に入っている、という形です。[3]
これは順位表の組み方に直接使えます。市中病院を第1志望にするなら、大学病院(とくに自校)も登録先に入れておくと、上位が外れたときの行き先になります。大学病院を第1志望にする場合に市中病院を下位に足す意味も同じです。全国の大学病院の充足率は78.0%で、市中病院より空きが出やすい側でもあります。順位表の作り方そのものはマッチングの希望順位登録を参照してください。[1],[3]
定員の面でも大学病院は無視できません。定員の合計は大学病院4,013人・市中病院6,514人で、全国10,527人のうち大学病院が38.1%を占めます。順位表から大学病院を丸ごと外すと、席の4割弱を最初から候補から落とすことになります。[1]
③ 「大学病院は倍率が高いから無理」は、倍率の意味が違う
大学病院を候補から外す理由としてよく挙がるのが倍率です。2025年度の平均倍率は大学病院11.6倍・市中病院4.5倍で、確かに大学病院のほうが高く出ます。ただしここでいう倍率は、そのプログラムを希望順位表のどこかに書いた人の数を定員で割った値です。第1位に書いた人も第5位に書いた人も、同じ1名として数えられます。[1]
第一志望としての登録は、大学病院が登録件数の8%、市中病院が28%です(大学病院は延べ24,246件のうち1,955件、市中病院は延べ26,169件のうち7,329件。1人が複数プログラムを登録するので、件数は人数ではありません)。倍率が高いのは下位に併願先として書かれた回数が多いためで、その枠を第1志望として取りに来ている人の数ではありません。倍率11.6倍を、大学病院を外す根拠には使えません。倍率という数字の読み方は人気病院ランキングの読み方で扱っています。[1],[2]
志望地域によって、効き方が変わる
第一志望者数を定員で割った比で見ると、都市部ではこの傾向が強く出ます。東京都は大学病院0.70倍・市中病院1.83倍、大阪府は大学病院0.49倍・市中病院1.76倍です。[1],[2]
ただし都市部では、大学病院の席が余っているわけではありません。充足率は東京の大学病院で95.4%、大阪で98.5%とほぼ埋まっています。全国平均の78.0%と比べると、都市部の大学病院は下位志望で埋まりきる一方、地方の大学病院には空きが出やすい、という違いです。つまり「大学病院を下位に置いて受け皿にする」という組み方は、地方志望のほうが確実に働き、東京・大阪ではそこも埋まりうると見ておく必要があります。都道府県ごとの内訳は東京の研修病院ランキングの見方にまとめています。[1],[2]
この数字で決まらないこと(と、代わりに何を見るか)
マッチングの公表資料に載っているのは定員・マッチ者数・空席数・希望順位登録者数の4項目だけです。必修科をどの順でどれだけ回るか、当直に月何回入り何をどこまで任されるか、上級医が何人いるか、給与と当直手当がいくらか——これらは1つも入っていません。だから次のように分けて調べることになります。[1]
- 研修の内容(必修科の回り方・選択期間)……病院の募集要項とプログラム冊子
- 当直回数・給与・宿舎……病院の処遇ページ。読み方は研修病院の給料の見方
- 上級医との距離・雰囲気……見学。聞くことは病院見学で何を見るか
- 席の取りやすさ……この記事で扱った公表データ
公表データの使いどころは、候補を絞る段階です。全国の研修病院をプログラム単位のまま、倍率・定員・充足率で並べ替えたり大学・市中の別で絞り込んだりするところまでは、無料プランのまま使えます。PRO なら選んだ複数院を横並びで比較でき、マッチ難易度・穴場度・志望集中度・安定度の数字まで見られます。いずれも席の取りやすさの目安であり、研修の質・教育体制の評価ではありません。公表値からの推定であって、合否や受け入れを保証するものでも、個人の合否を予測するものでもありません。
大学と市中を、同じ物差しで並べる。
iwor は医師のためのワークスペースです。1,470プログラムをプログラム単位のまま、倍率・定員・充足率で並べ替えたり大学・市中や都道府県で絞り込んだりできます。PRO なら選んだ複数院の横並び比較と、マッチ難易度・穴場度・志望集中度・安定度の数字まで見られます。
無料ではじめるこの記事の数字の出どころ
本記事の集計は、医師臨床研修マッチング協議会が公表している2025年度の研修プログラム別マッチ結果と中間公表をもとに、iwor が全1,470プログラムを大学病院402・市中病院1,068に分類して行ったものです。順位別のマッチ結果(第1希望・第4希望以下)と第1位の登録先の内訳は、協議会の公表資料の表をそのまま引用しています。[1],[2],[3]
2点、集計の前提を書き添えます。大学病院と市中病院の区分は公表資料に列として存在しないため、iwor が病院名から分類したものです(大学附属の分院・医療センターは大学病院に含めています)。またコースの分類は、公表資料のプログラム名称に診療科名や研究の語が含まれるかで機械的に判定したもので、名称に科名が無くても内部で選択できる場合はあります。どちらも区分の取り方によって数ポイント動きます。[1]
よくある質問
進む科がまだ決まっていません。どうすればいいですか
市中病院の総合型を第1志望にするのが標準です。市中病院1,068プログラムの85.0%がこの形で、2年かけて広く回る建て付けになっています。そのうえで、興味のある科がいくつかあるなら、その科の重点コースを持つ大学病院を順位表の中位以降に入れておくと選択肢が残ります。決めきれないことを理由に候補を絞る必要はありません。[1],[2]
大学病院は倍率が高いから避けたほうがいいですか
避ける理由にはなりません。平均倍率11.6倍という数字は、順位表のどこかに書いた人の数を定員で割った値で、第1位に書いた人だけを数えたものではないからです。実際、大学病院を第一志望として登録した件数は全登録の8%にとどまり、第4希望以下でマッチした人の65.0%が大学病院です。倍率の高さは、その枠が取りにくいことを意味していません。行きたい理由があるなら順位表の上位に置いて構いません。[1],[2],[3]
市中病院のほうが手技を多く経験できますか
マッチングの公表資料には症例数も手技の経験も載っていないので、この記事の集計では答えが出せません。代わりに確かめられるのは、病院が公開しているプログラムの必修科・選択期間の配分と、見学で研修医に直接聞く内容です。「1年目に何科を何か月回るか」「救急の当直で何を任されるか」「上級医は何人いるか」の3つを同じ質問として各病院で聞くと、比較できる形になります。聞き方は病院見学で何を見るかにまとめています。[1]
大学病院と市中病院を混ぜて順位表に書いても不利になりませんか
不利になりません。協議会は中間公表の資料で、マッチングに用いるアルゴリズムは「耐戦略性」を有しており、希望どおりの順位で登録することが最良の結果になると明記しています。混ぜること自体が結果を悪くする仕組みではないので、行きたい順に並べてください。むしろ大学病院を順位表から外すと、全国の定員の38.1%を候補から落とすことになります。[2],[1]
まとめ
進む科が決まっているなら大学病院の重点コースを、決まっていないなら市中病院の総合型を第1志望にしてください。大学病院402プログラムの38.8%が診療科名を冠したコースであるのに対し、市中病院1,068プログラムでは8.1%しかなく、市中病院の85.0%は科名のない総合型だからです。そしてどちらを選んでも、登録先にもう一方も入れておきます。第4希望以下でマッチした人の65.0%が大学病院で、大学病院は下位に置いても実際に入れているからです。倍率11.6倍という数字は、大学病院を外す理由になりません。[1],[3]
出典
- 1.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「令和7年度 研修プログラム別マッチ結果」 jrmp2.jp(2026-08-04 取得)
- 2.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「2025年度 医師臨床研修マッチング 中間公表」 jrmp2.jp(2026-08-04 取得)
- 3.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「令和7年度 研修医マッチングの結果(表3 希望順位ごとのマッチ者数/表5 臨床研修病院・大学病院別の順位とマッチ結果)」 jrmp2.jp(2026-08-04 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制