ASA-PS分類の付け方|点数を足すのではなく6段階に当てはめる。決めるのは麻酔当日の麻酔科医
目次
ASA-PS は、患者の麻酔前の合併症を I から VI の6段階に当てはめて付けます。点数を足す計算式はありません。緊急手術なら、その段階の末尾に E を付けます。[1]
当てはめは臨床判断です。術前評価の途中で仮に決まることはありますが、最終的な割り当ては、麻酔を行う日に麻酔科医が患者を評価したあとで行います。[1]
6段階の定義
分かれ目は2つあります。全身疾患があるかどうかと、その疾患が生命をどれだけ脅かしているかです。健康なら I、軽度の全身疾患があれば II、それが重度になれば III。重度の全身疾患が常に生命を脅かしている状態が IV で、手術をしなければ生存が見込めない瀕死の状態が V です。VI だけは性質が違い、臓器提供のために臓器を摘出する、脳死と判定された患者に使います。[1]
この分類が見ているのは患者の状態だけで、手術の内容は入っていません。周術期のリスクを見積もるときは、手術の種類やフレイル、体力の落ち方といったほかの要素と合わせて使います。[1]
E は「緊急」。その緊急にも定義がある
E は Emergency の頭文字で、緊急手術のときに段階の後ろに付けます。その緊急は「治療が遅れると、生命または身体の一部に対する脅威が著しく増す状態」と定義されています。[1]
つまり E が付くかどうかは、手術室の都合や時間帯ではなく、遅らせたときに何が起きるかで決まります。
合併症のない妊娠は ASA II
妊娠は病気ではない一方で、妊婦の生理状態は非妊時から大きく変わります。だから合併症のない妊娠には ASA II を割り当てる、と脚注で断られています。[1]
現行の表は、成人の例と小児の例に加えて、産科の例を別の列で持っています。妊娠高血圧腎症や、食事でコントロールしている妊娠糖尿病といった状態も、それぞれどの段階の例に置かれているかを引けます。[1]
III 以上で、麻酔前評価と管理の濃さが変わる
ASA-PS が III 以上の患者は、I や II の患者に比べて、より広範な麻酔前評価と連携した診療を要するとされています。麻酔管理もより濃厚になるのが一般的だ、と続きます。[1]
例は施設で足してよい
定義と例は臨床医のための目安です。施設内での伝達と評価をそろえるために、麻酔科の部門が施設独自の例を作って学会の例を補ってよいことになっています。[1]
ASA-PS は iwor の計算ツールに入っていない
iwor の臨床計算ツールに ASA-PS は入っていません。点数を足す計算ではないので、入力から答えが決まる形にならないためです。入っているのは、JCS・GCS・Child-Pugh・qSOFA・HAS-BLED のように、決まった手順で値が出るスコアです。
iwor なら、JCS と GCS を出典つきで計算できます。
JCS・GCS・Child-Pugh・qSOFA など、出典つきのスコアがそろっています。iwor は医師のためのワークスペースです。
無料ではじめる肝硬変の段階はChild-Pugh 分類の計算にまとめています。意識レベルはJCS の計算のしかたへ。
よくある質問
ASA-PS は誰が決めますか
麻酔科医です。最終的な割り当ては、麻酔を行う日に麻酔科医が患者を評価したあとで行います。それより前の時点で仮に決まっていることはあります。[1]
ASA-PS に死亡率の数字は付いていますか
声明は段階ごとの死亡率を示していません。示しているのは定義と例で、周術期のリスクは手術の種類などほかの要素と合わせて見積もるものだとしています。[1]
「2E」のような書き方は何を意味しますか
段階が II で、緊急手術だという意味です。E は段階の後ろに付ける修飾で、段階そのものは変わりません。[1]
まとめ
ASA-PS分類は足し算ではなく、6段階への当てはめです。緊急なら E を付け、その緊急にも「遅れると生命や身体の一部への脅威が著しく増す」という定義があります。合併症のない妊娠は II。III 以上で麻酔前評価と管理の濃さが変わります。決めるのは麻酔当日の麻酔科医で、例は施設ごとに足してよいことになっています。
出典
- 1.一次資料American Society of Anesthesiologists「American Society of Anesthesiologists Statement on ASA Physical Status Classification System(Anesthesiology Open 1(1):e0002・2026年4月・オープンアクセス)」 doi.org(2026-09-25 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制