HAS-BLED スコアの計算|9項目の定義と、3点以上が高リスク
目次
HAS-BLED スコアは、心房細動の患者の出血リスクを見る点数です。9項目を1点ずつ足し、最大は9点です。日本循環器学会/日本不整脈心電学会の2020年改訂版ガイドラインは、出血性合併症のリスク評価にこのスコアを使うことを推奨クラス I にしています。3点以上が高リスクです。[1]
9項目と点数
ガイドラインの表では、腎機能障害と肝機能障害、薬剤とアルコールがそれぞれ1行にまとまっていますが、どれも各1点です。なので、次の9項目がそれぞれ1点になります。[1]
- H 高血圧:収縮期血圧が160 mmHg を超える
- A 腎機能障害:慢性透析、腎移植、血清クレアチニン 2.26 mg/dL(200 μmol/L)以上
- A 肝機能障害:肝硬変などの慢性肝障害、またはビリルビンが正常上限の2倍超で AST/ALT/ALP が正常上限の3倍超
- S 脳卒中
- B 出血:出血歴、または出血素因や貧血などの出血傾向
- L 不安定な INR:INR が不安定か高値、または INR 至適範囲内時間(TTR)が60%未満
- E 高齢者:65歳を超える
- D 薬剤:抗血小板薬や消炎鎮痛薬の併用
- D アルコール:アルコール依存症
3点以上が高リスク
ガイドラインに載っている、点数ごとの補正年間大出血発症率は次のとおりです。[1]
- 0点:1.13%
- 1点:1.02%
- 2点:1.88%
- 3点:3.74%
- 4点:8.70%
- 5点以上:12.50%
高血圧・脳卒中・高齢は、CHADS₂ スコアとも共通する因子です。そのため、出血のリスクが高い人は血栓塞栓症のリスクも高い、とガイドラインは書いています。
高血圧と年齢は、CHADS₂ と基準が違う
HAS-BLED の高血圧は、収縮期血圧が160 mmHg を超える、血圧の管理がうまくいっていない場合です。CHADS₂ の高血圧は、治療中の人も含みます。治療で血圧が下がっている人は、CHADS₂ では1点、HAS-BLED では0点です。[1]
年齢は、HAS-BLED が65歳を超えると1点、CHADS₂ は75歳以上で1点です。70歳なら、HAS-BLED では1点、CHADS₂ では0点になります。塞栓症のリスクを見るスコアの違いは、CHA₂DS₂-VASc スコアの使いどころにまとめています。
「不安定な INR」はワルファリンが前提
HAS-BLED の「不安定な INR」は、ワルファリンで治療している場合を想定した項目です。そこで、INR を省いた ATRIA 出血スコアや ORBIT スコア、バイオマーカーを加えた ABC 出血リスクスコアも作られました。ただ、ガイドラインは、どれも C 統計量が0.6〜0.7で、予測能は大きく向上していないとしています。[1]
スコアと一緒に見る出血関連因子
ガイドラインは、HAS-BLED スコアとは別に「注目される重大な出血関連因子」を考慮することも、推奨クラス I にしています。次の5つです。[1]
- 75歳以上の高齢
- 50 kg 以下の低体重
- 腎機能障害(CCr 50 mL/分以下)
- 抗血小板薬の併用
- 管理不良な高血圧
どの抗凝固療法でも、当てはまる患者では重大な出血に注意が必要だとしています。HAS-BLED の高齢は65歳超ですが、こちらは75歳以上です。
出血を減らすために、ガイドラインが挙げていること
特に抗凝固療法中は、上の出血関連因子でリスクを評価し、頭蓋内出血に関わる因子のうち介入できるものを管理することが重要だとしています。頭蓋内出血を避けるために挙げているのは、次の4つです。[1]
- 頭蓋内出血の少ない DOAC を選ぶ
- 血圧と血糖を十分にコントロールする
- 禁煙し、アルコールを飲みすぎない
- 抗血小板薬の併用をできるだけ避ける
抗凝固療法を実際に行うときは、血栓塞栓症と出血の両方のリスクを評価し、リスクとベネフィットを比べて治療を選ぶことが肝要だとしています。
iwor の計算ツールで出せること
iwor の臨床計算ツールにある HAS-BLED は、9項目を1つずつチェックして合計を出します。表で1行にまとまっている腎機能と肝機能、薬剤とアルコールも、別々のチェックにしてあります。出すのは点数までで、抗凝固療法をするかどうかは出しません。
HAS-BLED の9項目を、1つずつチェックして計算できます。
CHADS₂ と CHA₂DS₂-VASc、eGFR などの計算もそろっていて、どれも発行元と表題つきの出典が付きます。iwor は医師のためのワークスペースです。
無料ではじめるよくある質問
HAS-BLED は何点から高リスクですか?
日本のガイドラインは、3点以上を高リスクとしています。3点の補正年間大出血発症率は3.74%です。
腎機能障害と肝機能障害が両方あると2点ですか?
2点です。表では1行ですが各1点なので、両方あれば2点になります。薬剤とアルコールも同じです。
HAS-BLED の年齢は何歳からですか?
65歳を超えると1点です。CHADS₂ は75歳以上で1点なので、基準が違います。
まとめ
HAS-BLED は9項目を1点ずつ足すスコアで、日本のガイドラインは3点以上を高リスクとしています。高血圧は収縮期血圧160 mmHg 超、高齢者は65歳超で、CHADS₂ とは基準が違います。
出典
- 1.一次資料日本循環器学会/日本不整脈心電学会「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン(表29 心房細動リスク評価のための推奨とエビデンスレベル/表34 HAS-BLED スコア/3.1.2 出血のリスク評価)」 j-circ.or.jp(2026-09-17 取得)
- 2.一次資料European Society of Cardiology(European Heart Journal)「Guidelines for the management of atrial fibrillation: The Task Force for the Management of Atrial Fibrillation of the European Society of Cardiology (ESC). Eur Heart J. 2010;31(19):2369-2429.(Table 10 の脚注=HAS-BLED の各項目の定義)」 doi.org(2026-09-17 取得)
- 3.一次資料Chest「Pisters R, et al. A novel user-friendly score (HAS-BLED) to assess 1-year risk of major bleeding in patients with atrial fibrillation: the Euro Heart Survey. Chest. 2010;138(5):1093-1100.」 doi.org(2026-09-17 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制