コンテンツへスキップ
試験対策

第120回医師国家試験は難化したのか|出題400問を数えて検証する

iwor 編集部11分で読めます
目次

第120回医師国家試験の出題の骨格は変わっていません。総出題数は400問、うち必修が100問で、これは厚生労働省が公表した正答値表から確認できます。一方ではっきり動いたものが2つあります。複数の答えを選ばせる問題が30問(7.5%)まで減り、iworが収録する第100〜120回の21回で最も少なくなったこと。そして分野の配分で、救急・中毒が例年より6.6問増え、精神科が5.8問減っていたことです。

以下では、まず合格率が難易度の指標にならない理由を整理し、次に出題データで何が変わったのかを回次比較で示します。数値の出どころ(厚生労働省の公表値か、iworの自前集計か)は都度書き分けます。

そもそも合格率は難易度の指標にならない

第120回の合格率は全体で91.6%でした。受験者9,980人に対し合格者9,139人、新卒者は9,205人が受験して8,716人が合格し94.7%です。[1]

この数字から出題の難しさを読もうとすると失敗します。合格基準の2つの関門が、性質が違うからです。必修問題は160点以上/200点=満点の8割という比率で、第115〜120回はいずれも約8割に置かれています。厚生労働省自身、採点除外が出た回には「必修問題の得点について総点数の80%以上とする」と書き方を切り替えています(第116回は満点が197点に下がり、基準は158点以上でした)。これに対し、必修を除いた一般問題・臨床実地問題の基準は回ごとに公表される点数で、第120回は224点以上/300点でした。[1],[4]

この後者の点数は実際に動いています。たとえば第117回は220点以上/295点でした(採点除外が5問あり満点が295点に下がっています)。つまり合格率は「その回の出題が難しかったか」ではなく、基準の置き方と受験者集団の出来の組み合わせで決まります。合格率だけを難易度の証拠に使えないのはこのためです。3回分の基準を並べた比較は第120回医師国家試験のボーダーに、合格率そのものの読み方(新卒と既卒の差、母集団がすでに選抜されていること)は医師国家試験は難しい?合格率の正しい読み方にあります。[3]

変わらなかったもの:出題の骨格は400問

第120回の正答値表には、A問題75問・B問題50問・C問題75問・D問題75問・E問題50問・F問題75問の計400問が欠番なく並んでいます。必修問題にあたるB・E問題は合わせて100問です。合格基準の側からも整合します。必修を除いた一般・臨床実地は「各々1問1点」で満点300点なので300問、これに必修100問を足して400問です。第120回は採点除外の問題がなく、iworの収録数も400問で一致します。[2],[1]

この400問という骨格は近年動いていません。以下はiworの収録数で見た内訳です。一般と臨床実地の内訳は、必修を除いた300問をiworの分類で分けたもので、厚生労働省が公表する区分(必修100問の中にも一般と臨床実地がある)とは切り方が違います。

  • 第115回 収録399問(必修100・一般129・臨床実地170)
  • 第116回 収録393問(必修97・一般130・臨床実地166)
  • 第117回 収録394問(必修100・一般127・臨床実地167)
  • 第118回 収録399問(必修100・一般129・臨床実地170)
  • 第119回 収録399問(必修99・一般129・臨床実地171)
  • 第120回 収録400問(必修100・一般130・臨床実地170)

ここで注意が必要です。上の数字はiworの収録数であって、その回の実出題数ではありません。実際の出題は各回400問で、収録数が下回っている回は、厚生労働省が採点除外の扱いにした問題や、iwor側の掲載方針で載せていない問題があるためです。第117回は採点除外が5問あり満点が295点でした。したがって「総数が減った/増えた」という読み方はできません。読み取れるのは、必修・一般・臨床実地の配分が回をまたいでほぼ一定だということです。[3]

変わったもの①:複数選択問題が収録21回で最少の30問

はっきりした変化はここです。「2つ選べ」のように複数の答えを選ばせる問題の数を回次別に数えると、第116回以降は4回連続で減っています(それ以前は増減があり、単調な減少ではありません)。以下はいずれもiwor収録分の集計です。

  • 第103回 135問(27.6%)=収録21回で最多
  • 第110回 77問(15.6%)/ 第111回 85問(17.3%)※当時は収録490問台
  • 第115回 59問(14.8%)/ 第116回 61問(15.5%)
  • 第117回 50問(12.7%)→ 第118回 40問(10.0%)→ 第119回 39問(9.8%)
  • 第120回 30問(7.5%)=収録21回で最少

第120回はiworが収録する第100〜120回の21回で、問題数(30問)でも比率(7.5%)でも最少でした。指定された数の選択肢をすべて当てる必要がある形式なので、単一選択より取りこぼしやすいと受験生に受け取られてきた形式です。これが減ったこと自体は受験者にとって追い風です。

この数字は、講評が言う「複雑化」の中身を分解する材料になります。CES医師国試予備校の第120回総評は「難易度は『極端に難化』というよりも、『迷わせ方が増えた』方向です」とし、総括で「選択肢の複雑化により受験生が最後の2~3択で迷う問題が増加」と述べています。方向性の指摘は出題データと矛盾しません。ここで押さえておきたいのは、「複雑化」が複数選択問題の増加を意味しないという点です。選ばせる数は増えるどころか収録21回で最少になっており、迷いは1つを選ぶ問題の中で起きていたことになります。[5]

ただし「選択肢が選びにくくなった」ことそれ自体は、この記事のデータでは確かめられません。iworの収録データには受験者の正答率が含まれないため、選択肢の識別力を測る手段がないからです。ここは講評と数字から立てた仮説として読んでください。

変わったもの②:救急が6.6問増え、神経と精神科が減った

分野の配分は動いています。iworの分野分類(23分野)で第120回の出題数を第115〜119回の平均と比べたとき、差が±4問以上あった分野は次の7つです。分類はiwor収録データの区分で、厚生労働省の出題基準の区分とは一致しません。また以下はいずれも収録数ベースの比較で、第115〜119回の収録数は実出題より1〜7問少ない(採点除外と非掲載のぶん)ため、差の大きさには収録漏れの影響が乗りえます。

  • 救急・中毒 23問(平均16.4問・+6.6)=最大の増加
  • 消化管 24問(平均18.8問・+5.2)
  • リウマチ・膠原病 15問(平均10.2問・+4.8)
  • 整形外科(運動器) 13問(平均8.8問・+4.2)
  • 麻酔・総合診療 15問(平均19.0問・−4.0)
  • 精神科 8問(平均13.8問・−5.8)
  • 神経 21問(平均27.4問・−6.4)=最大の減少

最大の増加が救急・中毒だったことは、講評の指摘と噛み合います。前掲のCESの総評は「救急は細部より初期対応の型が重要です」として、ABCDE・ショックの鑑別・致死的疾患の除外を挙げていました。出題数そのものが約1.4倍に増えていたので、救急の準備量が結果に反映されやすい回だったと考えられます。逆に神経は例年より6.4問、精神科は5.8問少なくなりました。[5]

なお画像を含む問題は91問(22.8%)でした。第110〜120回の11回平均は約25.6%、最も高い第117回は28.9%なので、画像の比率で難化したわけでもありません。

iwor なら、増えた分野だけを狙って解けます。

iwor は医師のためのワークスペースで、国試演習は毎日無料で使えます。第120回までの過去問を分野・出題区分「必修」・禁忌肢などで絞って演習セットにできます。

無料ではじめる

第121回に向けて、この結果をどう使うか

第120回のデータから引き出せる実務的な示唆は3つです。

1. 複数選択の対策より、単一選択の絞り込みに時間を使う

複数選択が7.5%まで減っており、第116回以降4回続けて減っているので、「2つ選べ」に特化した練習の優先度は下げやすい状況です。ただし次回も減り続ける保証はありません。より確実に効くのは、選択肢を2つまで絞ってから最後の1つを落とす練習です。解いたあとに「なぜ残した方を選んだか」を一文で言えるかどうかを確認すると、この筋力が付きます。

2. 分野の増減は追いかけず、頻出の土台を厚くする

iworの分野分類で見ると救急が増え神経・精神科が減ったのが第120回でしたが、これが第121回でも続く保証はありません。1回分の増減に合わせて計画を組み替えるのは、むしろリスクです。分野配分の揺れに強いのは、最大分野を落とさない構えです。公衆衛生・医学総論は第115〜120回で69〜82問と幅はありますが、6回すべてで最大分野であり続け、2位の分野の1.97〜2.66倍を占めています。

3. 必修と禁忌肢の関門は、点数ではなく条件として覚える

必修問題の基準は第115〜120回のいずれも満点の約8割で、この2つの条件は総合点とは独立した必要条件として設定されています。ただし生の点数は不変ではありません。採点除外が出れば満点が動き(第116回は158点以上/197点)、禁忌肢の上限も回によって違います。第117回の基準は「禁忌肢問題選択数は、2問以下」で、第120回の3問以下より厳しいものでした。だから点数を暗記するのではなく、受験前に一次資料で当年の基準を確認するのが正解です。具体的な守り方は必修問題と禁忌肢の対策にまとめました。次回の日程は第121回医師国家試験の日程で確認できます。[3],[4],[1]

自分がどの分野で失点しているかは、体感ではなく記録で見たほうが早いです。iworは解いた結果を理解度ヒートマップに集約するので、救急のような「増えたときに差が付く分野」の薄さが色で分かります。

よくある質問

第120回は結局、難化したのですか?

出題の量と形式で見れば、難化を示す変化はありません。必修・一般・臨床実地の配分は例年どおりで、得点しにくい複数選択問題は収録21回で最少、画像問題の比率も平均以下でした。難しさを感じた要因は、単一選択問題の選択肢の作り方と、救急など一部分野の増加にあった可能性が高いのですが、前者は正答率のデータがないため本記事では確認できていません。

第120回医師国家試験の禁忌肢はどれですか?

公表されていません。厚生労働省が示すのは合格基準としての「禁忌肢問題選択数は、3問以下」という条件だけで、どの問題のどの選択肢が禁忌肢だったかは発表されません(採点除外の対象になった問題は公表されますが、これは禁忌肢の一覧ではありません)。出回っている禁忌肢の候補はすべて推定であり、公式に確定したものはありません。[1]

第120回の既卒の合格率は?

厚生労働省の公表表には全体と新卒者だけが載っており、既卒は差し引きで求めます。受験者9,980人−新卒9,205人=775人、合格者9,139人−新卒8,716人=423人なので、既卒の合格率は約54.6%(公式発表値ではなく差し引きの算出値)です。この数字は複数回受験の人を含む集団の平均で、個人の合格見込みを表すものではありません。[1]

この記事の数字はどうやって数えたのですか?

合格率・受験者数・合格基準・満点は厚生労働省の合格発表からの引用です。複数選択問題数・画像問題数・分野別の出題数は、iworが収録する第100〜120回の全問題を集計した自前の数字で、実出題数ではなく収録数であることは本文で書き分けました。複数選択問題については、設問文の「◯つ選べ」から数える方法と正答の個数から数える方法の両方で照合し、数が一致することを確認しています。回次をまたぐ構成の比較で第115回以降を並べたのは、収録数が400問前後に揃っている範囲だからです(第111回以前は490〜524問)。

まとめ

第120回医師国家試験は、構成が変わって難しくなった回ではありません。合格基準の満点から逆算できる400問・必修100問という骨格は動かず、得点しにくい複数選択問題は30問(7.5%)まで減って収録21回で最少でした。動いたのは分野配分(救急・中毒が+6.6問、神経が−6.4問、精神科が−5.8問)です。第121回に向けては、1回分の分野の揺れを追うよりも、必修と禁忌肢という独立した必要条件を当年の一次資料で確認しておき、選択肢を最後の1つまで絞る練習に時間を配分するほうが確実です。全体の進め方は医師国家試験の勉強法とスケジュールを参照してください。

出典

  1. 1.一次資料厚生労働省第120回医師国家試験の合格発表について mhlw.go.jp2026-07-30 取得)
  2. 2.一次資料厚生労働省第120回医師国家試験 正答(正答値表・PDF) mhlw.go.jp2026-07-30 取得)
  3. 3.一次資料厚生労働省第117回医師国家試験の合格発表について mhlw.go.jp2026-07-30 取得)
  4. 4.一次資料厚生労働省第116回医師国家試験の合格発表について mhlw.go.jp2026-07-30 取得)
  5. 5.CES医師国試予備校【2026年】第120回医師国家試験 総評|難易度と出題傾向・領域別対策まとめ ishi-yobikou.com2026-07-30 取得)

本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制

関連記事

「難化した」を、自分の得点で確かめる。

第120回までの過去問を出題区分・出題特性で絞って解けます。無料ではじめられます。