関西の人気研修病院はどこか|近畿2府4県を同じ指標で並べ直す(2025年度マッチング)
目次
関西の研修病院を調べると、たいてい「マッチ者数の多い順」の一覧に行き当たります。しかしこの並びが測っているのは、主に定員の大きさです。定員が大きい病院ほどマッチ者数も大きくなるため、順位は規模の順位に近づきます。一方で「何人がそこを第一志望に選んだか」は別の数字で、両者は必ずしも一致しません。この記事では、近畿2府4県を同じ指標で並べ直し、規模と第一志望の集まり方を分けて見ていきます。
近畿全体の位置づけ
まず地域全体の輪郭です。2025年度のマッチングで、近畿2府4県には245のプログラムがあり、募集定員の合計は1,631人、実際にマッチした人数は1,557人でした。充足率は95.5%です。全国の充足率が84.6%であることを踏まえると、近畿は定員がほぼ埋まる地域だと言えます。[1]
もう一つの指標が第一志望者数です。近畿のプログラムを第一志望に選んだ人は合計1,683人で、定員1,631人に対して1.03倍にあたります。全国では0.88倍ですから、近畿は「定員より第一志望者のほうが多い」数少ない地域ということになります。定員に対して第一志望者が上回っている地域だ、ということです(個人がどこにマッチするかは順位登録の全体構造で決まるので、この比がそのまま個人の難易度になるわけではありません)。なお第一志望者数は中間公表時点の断面値で、プログラム別の確定値は公表されません。[1]
府県ごとに、はっきり差がある
近畿でひとくくりにすると見えなくなりますが、府県の間には大きな開きがあります。定員・マッチ者数・充足率・第一志望者数を同じ形で並べると次のようになります。
- 大阪府……120プログラム/定員625・マッチ614・充足98.2%/第一志望770人(定員の1.23倍)
- 兵庫県……51プログラム/定員397・マッチ386・充足97.2%/第一志望424人(定員の1.07倍)
- 滋賀県……16プログラム/定員122・マッチ110・充足90.2%/第一志望114人(定員の0.93倍)
- 京都府……34プログラム/定員248・マッチ243・充足98.0%/第一志望223人(定員の0.90倍)
- 奈良県……13プログラム/定員122・マッチ119・充足97.5%/第一志望88人(定員の0.72倍)
- 和歌山県……11プログラム/定員117・マッチ85・充足72.6%/第一志望64人(定員の0.55倍)
府県別で最も規模が大きいのは大阪府です。大阪の120プログラムをさらに分解した記事が大阪の人気研修病院ランキングの読み方にあります。大阪では第一志望者数が0だったプログラムが30件ある一方、空席が出たのは8件でした。次に規模の大きい兵庫県の51プログラムは兵庫の研修病院はどこを受けるか、京都府の34プログラムは京都の研修病院はどこを受けるかで分解しています。[1],[2]
京都府は充足率と第一志望者数の差が大きい
この表で目を引くのが京都府です。充足率は98.0%で大阪と並ぶ高さなのに、第一志望者数は定員の0.90倍です。定員は埋まっているが、第一志望者の数は定員を下回る、という組み合わせになっています。充足率だけを見て混雑の度合いを判断すると、この差は見えません。[1]
和歌山県は充足率が近畿で最も低い
和歌山県は充足率72.6%、第一志望者数は定員の0.55倍で、いずれも近畿で最も低い水準です。全国平均(84.6%)も下回っています。ただしこれは前年度の実績であり、翌年度の受け入れ余地を保証するものではありません。[1]
マッチ者数ランキングが人気ランキングにならない理由
マッチ者数は、その病院が何人採ったかを表す数字です。定員が大きい病院ほど大きくなるので、実質的には規模の順位になります。なお以下の順位はすべて病院単位です。1つの病院が複数の研修プログラムを持つことが多いため(近畿では245プログラムが165病院に属します)、プログラム単位の表をそのまま並べると同じ病院が分割されて実態とずれます。ここでは病院ごとに合算しています。
- 1位 京都大学医学部附属病院……マッチ72人/定員72人/第一志望37人
- 2位 京都府立医科大学附属病院……マッチ63人/定員63人/第一志望34人
- 3位 神戸大学医学部附属病院……マッチ63人/定員64人/第一志望22人
- 4位 大阪公立大学医学部附属病院……マッチ61人/定員63人/第一志望25人
- 5位 大阪大学医学部附属病院……マッチ57人/定員58人/第一志望14人
近畿のマッチ者数上位10病院は、いずれも大学病院でした。定員が大きいほど上位に来る指標なので、これは自然な結果です。一方で第一志望者数を見ると、同じ上位の中でも16人・21人・12人と幅があります。大学病院の第一志望者数は、その大学の学生の進路選択や地域の事情といった構造的な要因に左右されるため、市中病院の数字とそのまま比べられるものではありません。両者は別の力学で動いている、と考えるほうが実態に近いはずです。[1]
第一志望者数で並べ替えると、顔ぶれが変わります。
- 1位 大阪市立総合医療センター……第一志望45人/定員18人(比2.50)
- 2位 和歌山県立医科大学附属病院……第一志望43人/定員74人(比0.58)
- 3位 京都大学医学部附属病院……第一志望37人/定員72人(比0.51)
- 3位 大阪医科薬科大学病院……第一志望37人/定員54人(比0.69)
- 3位 神戸市立医療センター中央市民病院……第一志望37人/定員15人(比2.47)
顔ぶれは重なりますが、並び方も、数字の意味も変わります。和歌山県立医科大学附属病院と京都大学医学部附属病院は第一志望の実数では上位ですが、定員がそれぞれ74人・72人と大きいため、定員に対する比は0.58倍・0.51倍です。逆に大阪市立総合医療センターは定員18人に対して第一志望45人で、比にすると2.50倍になります。実数と比は別の話だということです。ただしこれは「第一志望のまま入れる割合」ではありません。実際に誰がどこにマッチするかは、全員の順位登録と各プログラムの順位づけの組み合わせで決まるからです。なお、ここで挙げた第一志望者数はいずれも中間公表時点の断面値で、その後の順位変更は反映されていません。ランキングの読み方そのものは研修病院の人気ランキングをどう読むかで詳しく整理しています。[2],[1]
定員に対する比で並べると、上位は定員の小さい市中病院に集まります。近畿で比が高いのは、京都桂病院(第一志望18人/定員5人=3.60倍)、大阪赤十字病院(36人/11人=3.27倍)、ベルランド総合病院(22人/7人=3.14倍)、市立豊中病院(32人/11人=2.91倍)、国立病院機構大阪医療センター(34人/12人=2.83倍)といったところです。定員5人から18人の範囲に分布していて、特定の定員帯に固まっているわけではありません。「人気」という言葉で普通に想像されるのは、この比が高い状態でしょう。ただし定員が小さいほど比は振れやすくなる点には注意してください。[2],[1]
「関西の倍率」という数字は作れない
ここは注意してほしい点です。地域や府県の単位で「倍率」を出している記事を見かけますが、その計算はほとんどの場合成立しません。公表されている志願者数は「そのプログラムを希望順位に登録した学生の数」であり、1人の学生が複数のプログラムを登録します。したがって府県ごとに志願者数を足し上げると、同じ学生を何度も数えることになります。近畿の志願者数を合計して定員で割れば見かけ上は大きな倍率が出ますが、その数字は何も意味しません。[1]
一方、第一志望は1人につき1つです。だから第一志望者数は足し上げても二重に数えられません。地域や府県を横に並べて比べられる指標は、実質これだけです。本記事で倍率を出さず、第一志望者数と定員の比を使っているのはこの理由によります。プログラム単位であれば志願者数を定員で割った倍率にも意味がありますが、その場合も「第一志望で選ばれているか」とは別の話として読む必要があります。[1]
この数字を自分の選択にどう使うか
順番としては、まず条件で候補を絞り、その後に数字を見るのが実務的です。一般に、第一志望者数が定員を大きく超えている病院だけで順位表を埋めるのは薄い戦略とされます。前年に充足率が低かった病院についても、それは前年度の実績であって翌年度の受け入れ余地を保証しません。府県をまたいで検討している場合に、大阪と和歌山では前提が違うという点は押さえておく価値がありますが、最終的な順位づけは自分の条件と優先順位で決めてください。
なお、ここで扱っているのは定員と人数だけです。研修の中身、当直の体制、給与や住宅の条件は、この数字からは何も分かりません。数字は候補を絞る道具であって、選ぶ理由そのものにはなりません。病院の探し方の全体像は研修病院の選び方、見学から面接までの流れはマッチングのスケジュールにまとめています。
「比2.50倍」は、全国のどのあたりなのか
ここまでは近畿の中だけで並べてきましたが、志望先を決めるときに効いてくるのは「この数字は全国で見てどのくらいなのか」です。大阪市立総合医療センターの2.50倍が高いのか、京都大学医学部附属病院の0.51倍が低いのかは、残り1,200件以上のプログラムの分布を知らないと判断できません。候補が増えるほど、全国の分布と突き合わせる手間は増えていきます。
iwor はこの判断のために、JRMPの公表値から4つの指標を算出しています。定義は無料で確認できます。
- マッチ難易度:席を巡る「本気の競争」の激しさを偏差値化したもの。本気倍率=(志望者数×第1志望率)÷定員 をもとに算出します。定員が4人以下のプログラムは、値のブレを補正しています。4指標のなかで唯一、全国順位も出ます
- 志望集中度:志望者のうち、そこを第1志望に選んだ人の割合。大学病院は低めに出る傾向があります(併願先として登録されやすいから、というのは iwor の見方です)
- 穴場度:0〜100。空きやすさ・低倍率・志望者の減少から算出した値。高いほど競争が緩い傾向です
- 安定度:0〜100。直近の充足の安定性に、充足の水準を加味した値。毎年安定して埋まっているほど高くなります
この記事で見てきた定員・マッチ者数・第一志望者数は、いずれもこれらの指標の材料そのものです。近畿の245プログラムを倍率・定員・充足率で並べ替えたり、都道府県や区分で絞り込んだりするところまでは無料で使えて、PRO なら4指標の数字とマッチ難易度の全国順位まで見られます。いずれも席の取りやすさの目安であり、研修の質・教育体制の評価ではありません。公表値からの推定であって、合否や受け入れを保証するものでも、個人の合否を予測するものでもありません。指標の設計思想は研修病院の人気ランキングをどう読むか、空席の読み方はマッチングの穴場はどこかで扱っています。同じ集計を関東1都6県で行ったものは関東の人気研修病院はどこかにあります。
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無料ではじめるよくある質問
関西で一番人気の研修病院はどこですか?
第一志望に選んだ人数で見ると、2025年度は大阪市立総合医療センター(定員18人に対して第一志望45人)が近畿で最多でした。ただしマッチ者数で見ると京都大学医学部附属病院(72人)が最多で、これは定員72人という規模によるものです。どちらを「人気」と呼ぶかで答えが変わります。なお、いずれも病院単位で複数プログラムを合算した数字です。[1]
関西の研修病院は入りにくいですか?
近畿全体では第一志望者数が定員の1.03倍で、全国の0.88倍より高い水準です。地域としては希望者が多いほうだと言えます。ただし府県差が大きく、大阪は1.23倍、和歌山は0.55倍です。「関西だから」ではなく、府県と病院の単位で見てください。[1]
大学病院と市中病院はどちらが人気ですか?
性質が違うので、同じ物差しでは比べられません。近畿ではマッチ者数の上位10病院がいずれも大学病院で、これは定員の大きさを反映しています。一方、定員に対する第一志望者数の比が高いのは、定員の小さい市中病院に多く見られます。ただし大学病院の第一志望者数はその大学の学生の進路選択や地域の事情に左右されるため、数字の大小がそのまま病院の質や評価を意味するわけではありません。[1]
この数字はいつのものですか?
2025年度のマッチング結果です。定員・マッチ者数は確定値、第一志望者数は中間公表時点の断面値です(プログラム別の第一志望者数は最終公表されないため)。翌年度の結果が公表され次第、更新します。[1]
まとめ
近畿2府4県は245プログラム・定員1,631人で、充足率95.5%・第一志望者数は定員の1.03倍。全国(84.6%・0.88倍)と比べて希望者の多い地域です。ただし大阪1.23倍から和歌山0.55倍まで府県差が大きく、京都のように充足率は高いのに第一志望者数が定員を下回る府県もあります。そしてマッチ者数の順位は規模の順位であって人気の順位ではありません。地域単位の倍率は志願者数の二重計上になるため計算できないので、比べるなら第一志望者数と定員の比を使ってください。ランキングの読み方は研修病院の人気ランキングをどう読むかにまとめています。[1]
出典
- 1.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「令和7年度 研修プログラム別マッチ結果」 jrmp2.jp(2026-07-05 取得)
- 2.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「2025年度 医師臨床研修マッチング 中間公表」 jrmp2.jp(2026-07-05 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制