関東の人気研修病院はどこか|2つの指標で並べると顔ぶれが入れ替わる(2025年度マッチング)
目次
関東の人気研修病院を調べると、たいてい「ランキング」に行き当たります。ただしそのランキングが何で並んでいるかは、記事によって違います。マッチ者数で並べたものと、中間公表の第一志望者数で並べたものがあり、この2つは同じ順位になりません。2025年度の公表データを関東1都6県で集計したところ、マッチ者数のTOP10と第一志望者数のTOP10で重なったのは10施設中2施設だけでした。この記事では、その理由と、関東の中の大きな差を整理します。[1],[2]
関東全体の輪郭
まず地域全体を見ます。2025年度のマッチングで、関東1都6県には413のプログラムがあり、募集定員の合計は3,373人、実際にマッチした人数は3,135人でした。充足率は92.9%です。全国の充足率が84.6%なので、関東は全国平均より定員が埋まる地域です。関東の定員だけで全国の32.0%を占めます。[1]
もう一つの指標が第一志望者数です。関東のプログラムを第一志望に選んだ人は合計3,454人で、定員3,373人に対して1.02倍にあたります。全国では0.88倍ですから、関東は定員と第一志望者数がほぼ釣り合っている地域だと言えます。ただし個人がどこにマッチするかは順位登録の全体構造で決まるので、この比がそのまま個人の難易度になるわけではありません。なお第一志望者数は中間公表時点の断面値で、プログラム別の確定値は公表されません。[2],[1]
関東は一枚岩ではない
「関東は激戦」とひとくくりにされがちですが、都県の間には大きな開きがあります。定員・マッチ者数・充足率・第一志望者数を同じ形で並べると次のようになります。[1],[2]
- 東京都……166プログラム/定員1,218・マッチ1,181・充足97.0%/第一志望1,395人(定員の1.15倍)
- 神奈川県……76プログラム/定員656・マッチ638・充足97.3%/第一志望742人(定員の1.13倍)
- 埼玉県……55プログラム/定員451・マッチ411・充足91.1%/第一志望483人(定員の1.07倍)
- 千葉県……61プログラム/定員487・マッチ441・充足90.6%/第一志望404人(定員の0.83倍)
- 茨城県……23プログラム/定員232・マッチ194・充足83.6%/第一志望187人(定員の0.81倍)
- 栃木県……16プログラム/定員180・マッチ164・充足91.1%/第一志望139人(定員の0.77倍)
- 群馬県……16プログラム/定員149・マッチ106・充足71.1%/第一志望104人(定員の0.70倍)
東京と神奈川は充足率97%台、第一志望者数も定員を上回ります。一方で群馬県は充足率71.1%、第一志望者数は定員の0.70倍です。同じ「関東」でも、定員が埋まりきらない県があります。茨城・栃木・千葉も第一志望者数が定員を下回っています。[1],[2]
関東で研修先を探すとき、この差は選択肢の広さに直結します。東京都内だけで見るのと、1都6県で見るのとでは、状況がかなり違います。東京都の166プログラムをさらに分解した記事が東京の研修病院ランキングの見方、神奈川県の76プログラムは神奈川の研修病院はどこを受けるか、千葉県の61プログラムは千葉の研修病院はどこを受けるか、埼玉県の55プログラムは埼玉の研修病院はどこを受けるかで分解しています。東京だけで見ると、大学病院と市中病院で第一志望者数の集まり方が大きく分かれています。
2つのランキングは、なぜ一致しないのか
ここが本題です。関東のプログラムをマッチ者数の多い順に並べたものと、第一志望者数の多い順に並べたもので、TOP10に共通して入るのは2施設だけでした。順位が入れ替わるのではなく、顔ぶれ自体がほぼ別物になります。[1],[2]
理由は単純です。マッチ者数は定員の大きさをほぼそのまま反映します。定員が50人あればマッチ者数も50人前後になるので、マッチ者数順のランキングは実質的に「定員の大きい順」に近づきます。関東のマッチ者数上位10プログラムは、定員39〜74人規模で、10件すべてが大学病院でした。[1]
- 東京科学大学病院(東京)……マッチ54人/定員54人/第一志望24人
- 筑波大学附属病院(茨城)……マッチ52人/定員74人/第一志望42人
- 獨協医科大学病院(栃木)……マッチ51人/定員51人/第一志望50人
- 東京大学医学部附属病院(東京)……マッチ51人/定員51人/第一志望23人
- 横浜市立大学附属市民総合医療センター(神奈川)……マッチ48人/定員48人/第一志望11人
一方の第一志望者数は「何人がそこを第1位に書いたか」なので、規模とは独立した需要の指標です。同じ関東を第一志望者数で並べ替えると、上位10件のうち7件が市中病院に入れ替わります。[2]
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京)……第一志望65人/定員34人(比1.91)
- さいたま市立病院(埼玉)……第一志望63人/定員12人(比5.25)
- 武蔵野赤十字病院(東京)……第一志望60人/定員10人(比6.00)
- 川崎市立川崎病院(神奈川)……第一志望60人/定員10人(比6.00)
- 獨協医科大学病院(栃木)……第一志望50人/定員51人(比0.98)
両方の上位10件に入ったのは、獨協医科大学病院と筑波大学附属病院の2件だけでした。獨協医科大学病院は定員51人に対して第一志望50人なので、規模が大きいうえに第一志望も集まっている珍しい例です。逆に横浜市立大学附属病院は定員41人・マッチ39人と規模では上位ですが、第一志望者数は3人でした。定員が大きいためマッチ者数のランキングには載りますが、そこを第1位に書いた人は多くありません。どちらが良い病院かという話ではなく、2つの数字が測っているものが違う、というだけです。[1],[2]
定員に対する比で並べると、上位は定員の小さい市中病院に集まります。関東で比が高いのは、虎の門病院(第一志望37人/定員6人=6.17倍)、武蔵野赤十字病院(60人/10人=6.00倍)、川崎市立川崎病院(60人/10人=6.00倍)、さいたま市立病院(63人/12人=5.25倍)、新百合ヶ丘総合病院(27人/6人=4.50倍)といったところです。「人気」という言葉で普通に想像されるのは、この比が高い状態でしょう。ただし定員が小さいほど比は振れやすくなる点には注意してください。また、これは「第一志望のまま入れる割合」ではありません。誰がどこにマッチするかは、全員の順位登録と各プログラムの順位づけの組み合わせで決まります。[2],[1]
つまり「人気病院ランキング」を見るときは、それが定員の順位なのか、第一志望の集まり方の順位なのかを先に確かめる必要があります。この考え方の全体像は研修医マッチングの人気病院ランキングの読み方で詳しく扱っています。[1]
埋まらないプログラムも一定数ある
関東は全国平均より充足率が高い地域ですが、内訳を見ると一様ではありません。関東413プログラムのうち、第一志望者数が0だったプログラムが65件、充足率が50%未満だったプログラムが36件ありました。[1],[2]
「関東だから激戦」でも「地方だから空いている」でもなく、同じ都県の中に集中するプログラムと埋まらないプログラムが同居しています。地域名で絞るより、プログラム単位で定員と第一志望者数を見るほうが実態に近づきます。空席の読み方はマッチングの穴場はどこかにまとめています。
「比が高い」は、全国のどのあたりなのか
ここまでは関東の中だけで並べてきましたが、実際に志望先を決めるときに効いてくるのは「この数字は全国で見てどのくらいなのか」です。さいたま市立病院の5.25倍が高いのか、獨協医科大学病院の0.98倍が低いのかは、残り1,000件以上のプログラムの分布を知らないと判断できません。候補が増えるほど、全国の分布と突き合わせる手間は増えていきます。
iwor はこの判断のために、JRMPの公表値から4つの指標を算出しています。定義は無料で確認できます。
- マッチ難易度:席を巡る「本気の競争」の激しさを偏差値化したもの。本気倍率=(志望者数×第1志望率)÷定員 をもとに算出します。定員が4人以下のプログラムは、値のブレを補正しています。4指標のなかで唯一、全国順位も出ます
- 志望集中度:志望者のうち、そこを第1志望に選んだ人の割合。大学病院は低めに出る傾向があります(併願先として登録されやすいから、というのは iwor の見方です)
- 穴場度:0〜100。空きやすさ・低倍率・志望者の減少から算出した値。高いほど競争が緩い傾向です
- 安定度:0〜100。直近の充足の安定性に、充足の水準を加味した値。毎年安定して埋まっているほど高くなります
この記事で見てきた定員・マッチ者数・第一志望者数は、いずれもこれらの指標の材料そのものです。関東の413プログラムを倍率・定員・充足率で並べ替えたり、都道府県や区分で絞り込んだりするところまでは無料で使えて、PRO なら4指標の数字とマッチ難易度の全国順位まで見られます。いずれも席の取りやすさの目安であり、研修の質・教育体制の評価ではありません。公表値からの推定であって、合否や受け入れを保証するものでも、個人の合否を予測するものでもありません。指標の設計思想は研修病院の人気ランキングをどう読むか、空席の読み方はマッチングの穴場はどこかで扱っています。
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無料ではじめるこの記事の数字の出どころ
本記事の集計は、医師臨床研修マッチング協議会が公表している2025年度の研修プログラム別マッチ結果(募集定員・マッチ者数の確定値)と、中間公表(第一志望者数)に基づいて iwor が独自に行ったものです。関東1都6県は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県として集計しました。[1],[2]
本記事でいう第一志望者数とは、中間公表の前日14時時点で各プログラムを第1位で希望順位登録している参加者数です。2025年度の中間公表では、参加登録者9,902人のうち9,284人が登録を済ませた時点の集計でした。[2]
1点だけ、集計上の注意があります。希望順位登録学生数は、都県で合算していません。1人の学生が複数のプログラムに順位登録するため、合算すると同じ人を何度も数えることになり、地域の「倍率」として意味を持たなくなるからです。第一志望者数は1人につき1プログラムなので、合算して都県間で比較できます。
また第一志望者数は中間公表時点の断面値です。中間公表の後も順位登録は変更できるため、最終結果とは一致しません。中間公表の位置づけはマッチング中間公表の見方で解説しています。[2]
よくある質問
関東は他の地域より受かりにくいですか
関東全体の充足率は92.9%で全国の84.6%より高く、第一志望者数は定員の1.02倍(全国0.88倍)です。地域として定員が埋まりやすいのは確かですが、都県差が大きく、群馬県のように充足率71.1%の県もあります。地域単位で難易度を判断するより、志望するプログラム単位で見てください。[1],[2]
第一志望者数が多い病院は避けたほうがいいですか
順位の付け方を変える理由にはなりません。マッチングのアルゴリズムでは、あるプログラムを第1位に書いたことで他のプログラムでの結果が悪くなることはないので、志望順は正直につけて構いません。ただし別の話として、第一志望者が多いプログラムはその枠の競争が激しく、そこでマッチしない確率は上がります。だから順位を変えるのではなく、下位に十分な数のプログラムを並べておくことが、アンマッチを避ける手当てになります。順位の付け方は希望順位登録のやり方を参照してください。
関西のデータもありますか
同じ指標で集計した記事があります。関西の人気研修病院はどこかで、近畿2府4県を同じ形で並べています。関西は充足率95.5%・第一志望者数が定員の1.03倍で、関東とは違う分布になっています。[1],[2]
まとめ
関東1都6県には413プログラム・定員3,373人があり、充足率は92.9%、第一志望者数は定員の1.02倍でした。ただし東京97.0%から群馬71.1%まで都県差は大きく、関東をひとくくりにすると実態を見誤ります。そして「人気病院ランキング」は、マッチ者数で並べれば定員の大きい順に近づき、第一志望者数で並べれば規模と独立した需要の順になります。両方のTOP10に入ったのは2施設だけでした。ランキングを見るときは、それが何を測った数字なのかを先に確かめてください。[1],[2]
出典
- 1.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「令和7年度 研修プログラム別マッチ結果」 jrmp2.jp(2026-08-02 取得)
- 2.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「2025年度 医師臨床研修マッチング 中間公表」 jrmp2.jp(2026-08-02 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制