愛知の研修病院はどこを受けるか|第一志望が多い5院と、50席の空きが出た場所(2025年度)
目次
答えを先に書きます。愛知で第一志望者数の実数でも定員に対する比でも上位に入るのは、一宮西病院・公立陶生病院・江南厚生病院・海南病院・地域医療機能推進機構 中京病院の5院です。第一志望者数の実数で並べても、定員に対する比で並べても、この5院が上位10に入ります。候補集めはここから始めるのが早いです。そのうえで、愛知は県全体で50席が空いた県でもあります。空席が出たプログラムを登録先に足しておくと、上位が外れたときの受け皿になります。[1],[2]
候補をどこから集めるか
先に1つ断っておきます。登録する順番は、自分が行きたい順です。順位を戦略的に動かしても有利にならない仕組みなので(マッチングの希望順位登録)、以下は候補の探し方であって、登録する順番の指示ではありません。順位を実際の志望と違う順に付け替えても、有利にはなりません。動かせるのは、採用試験を受けて「行ってもよい」と言えるプログラムを1つでも多く登録することです。
- まず見る……第一志望が集まっている5院(一宮西・公立陶生・江南厚生・海南・中京)を軸に、自分の条件で絞る。いずれも定員10〜14人で、第一志望は定員の1.5〜2.7倍
- 次に見る……実数では上位だが比では2倍に届かない病院(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院・安城更生病院・豊橋市民病院など)
- 登録の数を増やすために足す……空席が出たプログラム。愛知では23プログラム・50席が空きました。うち14席は名古屋大学医学部附属病院の7プログラム
空席の出たプログラムを順位表に加えておく意味は、こう整理できます。順位表は病院側もつくります。JRMPはマッチングにゲール・シャープレーのアルゴリズムを用いると公表しており、その性質から次のことが言えます——病院側の順位表に載っていて、かつ空席の出たプログラムを自分の希望順位表に書いていた人は、そのプログラムか、それより上位の希望のどこかにマッチしている。空席が残るということは、そこを希望し、かつ病院側の順位表に載っていた人は全員、より上の希望に入れたか、その枠に入ったかのどちらかだからです。これは公表資料に書かれた記述ではなく、アルゴリズムから導かれる帰結です。ただし、採用試験を受けることと病院の順位表に載ることは同じではありません。JRMPは「参加病院は、採用試験の結果に基づいて採用しても良いと考える受験者のみを希望順位登録しますので、アルゴリズム上、そのようなケースも発生します」と明記していて、第1希望のプログラムに空席があるのに自分はアンマッチ、ということが起こりえます。2025年度のアンマッチは741人でした。だから空席は「受けておけば必ず入れた席」ではありません。それでも、マッチングの中でその席を受け皿にできるのは、採用試験を受けてそこを順位表に書いておいた人だけです。なおマッチング後に残った席が二次募集に回ることもありますが、募集を出さない病院もあります(マッチングでアンマッチだったら)。[3],[1]
ただし空席が出るかどうかは年によって動きます。2025年度に空いたからといって2026年度も空くとは限りません。行ってもよいと言える範囲で、空席の実績がある枠を複数登録しておくと、アンマッチの可能性を下げる方向には働きます。ただしそれも病院側の順位表に載っていることが前提です。順位表の作り方そのものはマッチングの希望順位登録を参照してください。以下、順に数字で示します。
愛知県全体の数字
まず全体を見ます。2025年度のマッチングで、愛知県には80のプログラムがあり、56の病院に分かれています。募集定員の合計は548人、マッチした人数は498人で、充足率は90.9%でした。全国の充足率が84.6%なので、全国平均よりは埋まっている県です。ただし東京の97.0%と比べると6ポイント低くなります。[1]
もう一つの指標が第一志望者数です。愛知のプログラムを第1位で希望順位登録した人は合計546人で、定員548人に対して1.00倍にあたります。全国では0.88倍ですから、定員と第一志望がほぼ釣り合っている県ということになります。ただしこの比がそのまま個人の難易度になるわけではありません。誰がどこにマッチするかは、全員の順位登録と各プログラムの順位づけの組み合わせで決まります。なお第一志望者数は中間公表時点の断面値で、プログラム別の確定値は公表されません。[2],[1]
空いた50席は、県全体に散らばっていない
充足率90.9%という数字は、空席が県内に薄く広がっているような印象を与えます。実際は違います。空席が出たのは80プログラム中23プログラムで、残る57プログラムは定員どおり埋まりました。そして空席50席のうち14席は、1つの病院に集中しています。[1]
名古屋大学医学部附属病院です。この病院は7つのプログラムを持っていて、定員の合計は21人。マッチしたのは7人で、14席が空きました。内訳は次のとおりです。[1],[2]
- 基本プログラム……定員9人/マッチ6人/第一志望4人
- 研究医を目指す人のためのプログラム……定員3人/マッチ1人/第一志望1人
- ハイブリッドプログラムA……定員2人/マッチ0人/第一志望0人
- ハイブリッドプログラムB 岐阜県立多治見病院コース……定員1人/マッチ0人/第一志望0人
- ハイブリッドプログラムB 津島市民病院コース……定員1人/マッチ0人/第一志望0人
- ハイブリッドプログラムB 江南厚生病院コース……定員1人/マッチ0人/第一志望0人
- 周産期プログラム……定員4人/マッチ0人/第一志望0人
7つのうち5つは、第一志望に選んだ人もマッチした人も0でした。県全体の「50席の空き」という数字の内訳は、こういう形をしています。空席の多いプログラムを並べると、最多は4席で、名古屋大学の周産期プログラムのほか南生協病院・協立総合病院・蒲郡市民病院が並びます。ただし名古屋大学は7プログラムの合計で14席と、病院として突出しています。第一志望者数やマッチ者数が少ないことは、研修の質や教育体制の評価とは関係がありません。[1],[2]
ここで注意したいのは、これを「狙い目」と読み替えないことです。定員1人や2人の枠に何人が下位順位で登録しているかは公表されていません。応募要件や研修内容もプログラムごとに違います。空席の読み方はマッチングの穴場病院の見つけ方にまとめています。
大学病院と市中病院で、測っているものが違う
愛知全体で1.00倍という数字は、大学病院と市中病院を混ぜた平均です。分けて見ると様子が変わります。[1],[2]
愛知の定員548人のうち406人、つまり4分の3近くが市中病院の枠です。これは東京と正反対の構成で、東京は定員1,218人のうち738人(6割)が大学病院の枠でした。愛知は市中病院中心の県だということです。東京との比較は東京の研修病院ランキングの見方で扱っています。[1]
大学病院の比が低く出るのは、人気がないという意味ではありません。大学病院は併願先として順位表の下位に登録されやすく、第1位に置かれにくいためです。実際、藤田医科大学病院は第一志望者数27人で県内最多タイ、愛知医科大学病院も20人を集めています。大学病院と市中病院の違いそのものは大学病院と市中病院を数字で比較するで扱っています。[2]
ランキングは、何で並べるかで顔ぶれが変わる
病院単位で集計した場合でも、何で並べるかで結果は変わります。愛知の病院を「第一志望者数の実数」で並べた場合と、「第一志望者数÷定員」で並べた場合で、上位10病院に共通して入るのは5病院でした。以下はいずれも第一志望に選んだ人数の多寡であって、研修の質の順位ではありません。[2],[1]
実数で並べると、定員の大きい病院が上位に来ます。[2],[1]
- 藤田医科大学病院……第一志望27人/定員33人(82%)
- 一宮西病院……27人/10人(270%)
- 公立陶生病院……26人/14人(186%)
- 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院……25人/20人(125%)
- 安城更生病院……25人/18人(139%)
- 江南厚生病院……25人/12人(208%)
- 海南病院……23人/12人(192%)
- 地域医療機能推進機構 中京病院……20人/13人(154%)
- 愛知医科大学病院……20人/29人(69%)
- 豊橋市民病院……20人/17人(118%)
比で並べると、定員の小さい市中病院が上位に集まります。こちらも定員に対する第一志望者数の比であって、研修の質の順位ではありません。[2],[1]
- 一宮西病院……270%(第一志望27人/定員10人)
- 総合犬山中央病院……233%(7人/3人)
- 江南厚生病院……208%(25人/12人)
- 名古屋徳洲会総合病院……200%(12人/6人)
- 海南病院……192%(23人/12人)
- 公立陶生病院……186%(26人/14人)
- 名鉄病院……183%(11人/6人)
- 小牧市民病院……155%(17人/11人)
- 地域医療機能推進機構 中京病院……154%(20人/13人)
- 稲沢市民病院……150%(6人/4人)
両方に入っているのは、一宮西病院・公立陶生病院・江南厚生病院・海南病院・地域医療機能推進機構 中京病院の5病院です。藤田医科大学病院は実数では県内最多タイですが、定員33人に対する比では0.82倍になります。定員が小さいほど比は振れやすくなる点には注意してください。いずれも中間公表時点の断面値による並びで、病院の質を示すものではありません。ランキングの読み方の全体像は研修医マッチングの人気病院ランキングの読み方にまとめています。[2],[1]
なお、愛知には複数のプログラムを持つ病院が9つあります。名古屋大学医学部附属病院の7つのほか、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院・同名古屋第二病院・名古屋市立大学病院・藤田医科大学病院が各4つ、愛知医科大学病院・豊橋市民病院が各3つ、安城更生病院・豊田厚生病院が各2つです。病院単位で1行にまとめた表は、この内訳を1つの数字に丸めています。[1]
この数字は、全国のどのあたりなのか
ここまでは愛知の中だけで並べてきました。実際に志望先を決めるときに効いてくるのは「この数字は全国で見てどのくらいなのか」です。一宮西病院の270%が高いのか、名古屋大学の周産期プログラムの空席4席をどう読むのかは、残り1,300件以上のプログラムの分布を知らないと判断できません。候補が増えるほど、全国の分布と突き合わせる手間は増えていきます。
iwor はこの判断のために、JRMPの公表値から4つの指標を算出しています。定義は無料で確認できます。
- マッチ難易度:席を巡る「本気の競争」の激しさを偏差値化したもの。本気倍率=(志望者数×第1志望率)÷定員 をもとに算出します。定員が4人以下のプログラムは、値のブレを補正しています。4指標のなかで唯一、全国順位も出ます
- 志望集中度:志望者のうち、そこを第1志望に選んだ人の割合。大学病院は低めに出る傾向があります(併願先として登録されやすいから、というのは iwor の見方です)
- 穴場度:0〜100。空きやすさ・低倍率・志望者の減少から算出した値。高いほど競争が緩い傾向です
- 安定度:0〜100。直近の充足の安定性に、充足の水準を加味した値。毎年安定して埋まっているほど高くなります
この記事で見てきた定員・マッチ者数・第一志望者数・空席は、いずれもこれらの指標の材料そのものです。愛知の80プログラムをプログラム単位のまま倍率・定員・充足率で並べ替えたり、都道府県や区分で絞り込んだりするところまでは、無料プランのまま使えます。PRO なら4指標の数字とマッチ難易度の全国順位まで見られます。いずれも席の取りやすさの目安であり、研修の質・教育体制の評価ではありません。公表値からの推定であって、合否や受け入れを保証するものでも、個人の合否を予測するものでもありません。主要な研修病院は愛知県の研修病院で一覧にしています(定員と志願者が一定以上の34プログラム)。80プログラム全件はアプリの病院データベースで絞り込めます。
愛知の80プログラムを、合算せずに1つずつ見る。
iwor は医師のためのワークスペースです。プログラム単位のまま、倍率・定員・充足率で並べ替えたり都道府県・区分で絞り込んだりできます。PRO なら選んだ複数院の横並び比較と、マッチ難易度・穴場度・志望集中度・安定度の数字と、マッチ難易度の全国順位まで見られます。
無料ではじめるこの記事の数字の出どころ
本記事の集計は、医師臨床研修マッチング協議会が公表している2025年度の研修プログラム別マッチ結果(募集定員・マッチ者数・空席数・希望順位登録学生数の確定値)と、中間公表(第一志望者数)に基づいて iwor が独自に行ったものです。集計の単位は公表資料と同じくプログラム単位で、病院単位の数字は同じ病院名のプログラムを足し合わせて算出しました。なお大学病院と市中病院の区分は公表資料に列として存在しないため、iwor が病院名から分類したものです(大学附属の分院・医療センターは大学病院に含めています)。所在地も公表資料には含まれないため、市区町村は各病院の公開情報によります。[1],[2]
本記事でいう第一志望者数とは、中間公表の前日14時時点で各プログラムを第1位で希望順位登録している参加者数です。中間公表の後も順位登録は変更できるため、最終結果とは一致しません。中間公表の位置づけはマッチングの中間公表とはで解説しています。[2]
よくある質問
愛知の研修病院は結局どこから見ればいいですか
第一志望が集まっている5院から見てください。一宮西病院・公立陶生病院・江南厚生病院・海南病院・地域医療機能推進機構 中京病院で、いずれも実数と定員比の両方で県内上位です。ここは「同学年が実際にどこを一番に選んだか」であって、研修の質の順位ではありません。ただし候補をゼロから探すよりは早い出発点になります。そのうえで自分の条件(救急の体制、大学か市中か、通勤範囲、診療科の重点)で絞ってください。条件の決め方は研修病院の選び方にまとめています。
愛知は50席も空いたのだから、入りやすいということですか
県として席が余ったことと、志望するプログラムに入れることは別です。空いた50席のうち14席は名古屋大学医学部附属病院の7プログラムに集中する一方、一宮西病院は定員10人に第一志望27人、江南厚生病院は定員12人に25人で定員が埋まりました。使い方としては、行ってもよいと言える範囲で、空席が出た枠も登録しておくことです。採用試験を受けたうえでそこを書き、病院側の順位表にも載っていれば、その年の結果としてはそのプログラムか上位の希望に入っていた計算になります。ただし来年も空くとは限りません。県全体の充足率は、自分が受けるプログラムの競争を表す数字ではありませんが、登録先に足す枠を選ぶ材料にはなります。[1],[2]
名古屋市内と市外で違いはありますか
公表データは市区町村別に集計されていないため、この記事では県単位で扱っています。ただし比で上位に来た病院には、一宮西病院(一宮市)・江南厚生病院(江南市)・小牧市民病院(小牧市)・稲沢市民病院(稲沢市)のように名古屋市外のものが並びます。「名古屋 研修病院」で検索して市内だけを見ていると、定員に対して志望が集まっているプログラムを取りこぼす可能性があります。[2],[1]
第一志望者が多いプログラムは避けたほうがいいですか
順位の付け方を変える理由にはなりません。マッチングで使われるアルゴリズムは「耐戦略性」を持つと公表されており、自分の希望どおりの順位で登録することが最良の結果になるとされています。ただし第一志望者が多いプログラムほどその枠の競争は激しくなります。順位表を長くしておくとアンマッチの可能性は下がりますが、なくなるわけではありません。JRMPも、登録数の多いプログラムを希望していて不安な場合は「登録順位の変更」ではなく「登録順位数を増やす」ことを勧めています。順位の付け方はマッチングの希望順位登録を参照してください。[2]
まとめ
候補は、実数でも定員比でも県内上位に入る5院(一宮西・公立陶生・江南厚生・海南・中京)から始めてください。行ってもよいと言える範囲で、空席が出た枠を複数登録しておきます。愛知は80プログラム・56病院で、定員548人に対しマッチ498人・充足率90.9%、23プログラムに計50席の空きが出た県です。そのうち14席は名古屋大学医学部附属病院の7プログラムでした。空席の出る枠は、採用試験を受けて順位表に書き、病院側の順位表にも載っていれば受け皿になります。ただし採用試験を受けても病院が順位表に載せるとは限りません。県全体の充足率90.9%を、自分が受けるプログラムの競争と取り違えないことです。隣県の静岡は静岡の研修病院はどこを受けるかで分解しています。[1],[2]
出典
- 1.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「令和7年度 研修プログラム別マッチ結果」 jrmp2.jp(2026-08-04 取得)
- 2.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「2025年度 医師臨床研修マッチング 中間公表」 jrmp2.jp(2026-08-04 取得)
- 3.一次資料医師臨床研修マッチング協議会(JRMP)「2026年度版 研修医マッチングの手引き【6年生用・既卒者用】」 jrmp.jp(2026-08-04 取得)
本記事はiwor 編集部が作成し、医師が監修しています。掲載内容は一般的な学習目的の情報であり、 診断・治療の最終判断は必ず一次資料・指導医にご確認ください。 編集方針と監修体制