症例報告(Case Report)の書き方|避けるべき表現が4つ名指しされている
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結論から書くと、症例報告の価値は珍しさで決まりません。脳と発達に載った解説は、医師が症例報告の書き方を学ぶ機会がほとんどないために「症例の報告価値は『稀少性』であると誤解している」と書いています。[1]
以下は、同じ著者が2つの学会誌に書いた解説から整理しました。どちらも神経内科系の誌面で、後に出た脳と発達の側が臨床神経学の側を文献として引いています。要るものの答えは同じで、明確な「学ぶ点」です。[1],[2]
却下理由に「よくありすぎる」と「稀すぎる」が並んでいる
臨床神経学の解説は、症例報告が却下される理由を表にまとめています。そこには題材が既によく報告されている場合(Too common)と、題材が稀すぎる場合(Too rare)が並んでいます。後者には「読者がまず出会わない」という説明が付き、多くは読者層との不一致を示すとされています。[2]
「珍しい症例に出会ったから報告できる」という順番で考えていると、ここで止まります。先に決めるのは、その症例から何が言えるかです。
避けるべき表現が4つ名指しされている
脳と発達の解説は、初学者にありがちな「やってはいけない」ことを3点挙げ、その1つ目として避けるべき表現を4つ並べています。理由も一緒に書かれているので、そのまま原稿の点検に使えます。[1]
- 「稀で貴重と考えられたので報告する.」… 貴重かどうかは自分で決めるべきではない、と書かれています。稀さを強調せず、学ぶ点を伝えます
- 「調べた限り,世界初である.」… 多くの場合、世界初の証明は難しいためです
- 「今後,症例の蓄積が必要である.」… 蓄積ではなく、経験した1例から言えることを伝えます
- 「文献的考察を加えて報告する.」… 症例報告で文献を検索して考察するのは当然だからです
書き上げた原稿の結語がこの4つのどれかで終わっているなら、学ぶ点がまだ言葉になっていない合図です。
「学ぶ点」の例が表で挙げられている
脳と発達の解説は、学ぶ点の例を表に6項目挙げています。日常診療での落とし穴、病態機序を示す所見、定説の支持または反論、見逃されてきた可能性、神経解剖の理解への貢献、治療や管理の改善です。神経解剖が入っているとおり、この2本は神経内科系の誌面に載った解説です。[1]
同じ解説は、考えるための問いも2つ示しています。「症例からどんな教訓が学べたのか?」と「既存の知識に何を加えたのか?」です。この2つに答えが出ない症例は、稀であっても報告の形になりません。
序論・症例記述・考察で、書くものが違う
序論に入れるものは、両方の解説で一致しています。この題材で知られている点、知られていない点、そして自分の症例の特徴です。ここに「なぜこの症例を報告するのか」が現れます。[1],[2]
症例記述は簡潔にし、不要な情報を省きます。ここで省くものには、患者を特定できる情報が含まれます。氏名・患者ID・生年月日・実際の日付は書かず、年齢は「60歳代」のような年代で、時間の経過は「第3病日」のような相対表記にします。[1]
臨床神経学の解説は、記述を時系列にすること、診断に必要な所見を入れること、そして鑑別に挙げた診断は否定所見であっても書いて除外することを勧めています。[2]
考察は学ぶ点に絞ります。脳と発達の解説は「序論と考察を一般論にしてはいけない」と書いています。臨床神経学の解説も、1例から広く一般化することを避けるよう勧めています。教科書の記述を並べ直した考察は、学ぶ点を薄くします。[1],[2]
英語の雑誌に書くときの項目の順番は、英語の症例報告の書き方にあります。
同意は、書き始める前に
臨床神経学の解説は、患者の同意を得ることも症例報告の条件に挙げています。書き始める前に患者本人から同意を得て、投稿先の投稿規定に書かれた同意の要件を読んでください。[2]
発表と論文で、材料は同じ
同じ症例を学会で発表してから論文にすることは珍しくありません。抄録の書き方は症例報告の抄録の書き方にまとめています。発表スライドの構成は症例報告のスライドのテンプレートです。臨床経過を図にする手順は症例報告の経過表の作り方にあります。
iwor の発表スライドでは、編集中に形式の点検が走ります。結語が「珍しい症例を経験した」という形で終わっていると注意が出て、本文の文字が20ポイントを下回るときも数えられます。見ているのは形式で、学ぶ点があるかどうかは読み手が確かめる部分です。
よくある質問
珍しい症例でなければ報告できませんか
稀であること自体は報告の理由になりません。解説は報告価値は稀少性ではないとし、却下理由の表には稀すぎる題材も挙がっています。要るのは学ぶ点です。
学ぶ点が思いつかないときはどうしますか
解説が示す2つの問いに当ててみてください。「症例からどんな教訓が学べたのか?」と「既存の知識に何を加えたのか?」です。答えが出ないなら、まだ報告の形になりません。
鑑別診断は否定された分も書きますか
臨床神経学の解説は、鑑別に挙げた診断を否定所見であっても書いて除外するよう勧めています。診断の道筋を読者がたどれるようにするためです。
まとめ
珍しさを軸にすると、書く前の段階で行き止まります。解説は報告価値が稀少性ではないと書き、却下理由の表では稀すぎる題材も落ちています。先に決めるのは学ぶ点です。序論で知られている点と知られていない点を分け、症例記述は患者を特定できる情報を外して時系列にし、考察を学ぶ点に絞る。そして避けるべき表現の4つで結語が終わっていないかを、最後に必ず見てください。
出典
- 1.一次資料日本小児神経学会「よい症例報告の書き方(脳と発達 57巻415頁・平賀陽之)」 jstage.jst.go.jp(2026-09-10 取得)
- 2.一次資料日本神経学会「症例報告の効果的な書き方(臨床神経学 63巻305頁・平賀陽之)」 neurology-jp.org(2026-09-10 取得)
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